松本 慶一 大丸札幌店グローサリー売場店長
グローサリー売場で人と地域をつなぐ調味料マニア松本の仕事術
調味料や菓子、缶詰などの加工食品をはじめ、乳製品や飲み物まで、幅広い商品が揃う大丸札幌店地下1階「ほっぺタウン」のグローサリー売場。この売場で2018年から店長を務めているのが、松本慶一さんです。商品選びから仕入れ、陳列、催事の企画・運営まで幅広く手がけ、確かな知識と提案力で、多くのお客さま、そして大丸札幌店スタッフからも厚い信頼を得ている、まさに“食のソムリエ“のような存在。約3,600品目もの商品を自ら試食し、それぞれの味わいや魅力を熟知する「調味料マニア松本」として、年に8回開催する松本店長セレクトの食品フェアを楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。8月26日(水)から9月8日(火)まで開催される「調味料マニア 松本店長が推す「野菜」がより美味しく食べらさる調味料10選」では、松本店長がこれまで出会ってきたドレッシングが勢ぞろいします。催しを前に話を伺うと、見えてきたのは、グローサリー売場の店長という枠を超えた松本さんの姿でした。
取材者:大丸札幌店 関春香
松本 慶一 まつもと けいいち2>
大丸札幌店グローサリー売場店長・株式会社アイ・エム・シー勤務
紋別市出身、33歳。大原医療福祉専門学校で保育士の資格取得に向けて勉強する傍らで、株式会社アイ・エム・シーにアルバイトとして入社し、大丸札幌店グローサリー売場に勤務。社員登用後は、大阪、東京、北海道、静岡、神戸などの主要百貨店にて副店長、店長代理、店長を歴任。赤字店舗を黒字転換させる。2018年1月に大丸神戸店グローサリー店長、同年9月から大丸札幌店グローサリー店長就任。「月間MVP」「年間MVP」を連続受賞するほか、JFRグループ全店の中から表彰される「大丸札幌店フロンティア賞」受賞。
1本で味わいが激変
それが調味料の魅力
「調味料マニア松本」。大丸札幌店地下1階「ほっぺタウン」のグローサリー売場で、2018年から店長を務める松本慶一さんの、もうひとつの肩書きです。
チーズなどの加工食品から醤油をはじめとする調味料まで、約3,600品目が並ぶグローサリー売場。その商品選定や仕入れ、陳列までを担当し、売場の一角では、週替わりのイベントを企画・運営。調味料マニアとしてさまざまな調味料の魅力を発信しています。
「調味料の魅力は、たった1本プラスするだけで、料理の味わいを大きく変えられること。主役ではないけれど、食材のおいしさを引き出してくれる存在です。僕たちが生産者やつくり手の物語までお伝えすることができれば、味の変化だけではなく、食卓での会話も広がるはずです」
催事スペースに並ぶ商品は、まるでオブジェのように美しくディスプレーされ、思わず手を伸ばすのをためらってしまうほど。店頭の様子からは、松本店長をはじめスタッフ一人ひとりが商品を大切に扱っていることが伝わってきます。
「商品の見せ方は、挑戦と改善を繰り返しながら今も勉強中です。グローサリー売場に面した通路は、お客さまが足早に通り過ぎる場所なんです。観光で来られた方など、買い物かごを持たずに歩かれるお客さまも多いため、まずは商品に目を留めていただくことが大切。売場に入ってレジを通るまでの動線を考えながら、商品レイアウトを工夫しています」
例えば、多くのお客さまが左手でかごを持ち、右手で商品を手に取ることを踏まえてプライスカードの位置を調整。また、「Z」の字を描くように動かすとされる人の視線の流れを意識して、左上にはインパクトのある商品を、右下には特におすすめしたい商品を配置します。
売場の配置や商品陳列には、細部に至るまで“そこに置かれている”理由があるのです。
大丸札幌店で師匠と出会い
保育士志望から食品販売の道へ
保育士資格取得を目指して、大原医療福祉専門学校へ通っていたという学生時代。
奨学金とアルバイトで学費と生活費を賄うために、夜間コースを選択し、昼間は株式会社アイ・エム・シーのアルバイトとして、大丸札幌店のグローサリー売場で3年間働いていたそうです。
そんな松本さんに大きな影響を与えたのが、今も「師匠」と慕う問屋の社長との出会い。
「師匠は、自ら見つけた生産者の商品を、自身が店頭に立って販売する方でした。商品を1つ手に取ると必ず売ってしまうんです。僕たちが店頭に立って1日に数個しか売れない商品の試食販売でも、数百個単位で売ってしまう姿を見て、『お客さまと何を話しているのか』『どうやって距離を縮めているのか』と、見て学び、質問攻めにしました」
松本さんは師匠から、接客時の話し方や声の出し方、商品をご案内するタイミング、お客さまとの距離感まで、一人ひとりに合わせて判断する接客術を学び、その学びは今へと続いています。
食品を販売する仕事のおもしろさに目覚めた松本さんは、保育士ではなく食品販売の道へ進むことを決意。
アルバイト時代の実績が評価され、社長推薦で社員に登用。その後は大阪や東京の商業施設、百貨店で経験を積み、松坂屋静岡店や大丸神戸店のグローサリー売場店長を経て、2018年、大丸札幌店グローサリー売場店長に就任しました。
学生時代にアルバイトとして働いた売場で進路を見つけ、今ではその売場を率いる店長に。松本さんの歩みは、大丸札幌店のスタッフにとっても、とてもうれしいエピソードです。
売場を飛び出して活動の幅を広げ
やらされる仕事は、やりたい仕事へ
「一度商品を買ってくださったお客さまが、また売場に来てくださる。『すごくおいしかったから友だちにもプレゼントしたい』と、2本、3本と手に取ってくださる。1度の購入を機に商品そのもののファンになっていただけたと感じられる瞬間は、うれしいという言葉では言い尽くせない喜びがあります」
そんな出来事がある度に、松本さんはメーカーや生産者へ電話をかけ、喜びを伝えるのが習慣。
「商品を通して、本当に多くの人とつながっていると実感しています。それが仕事のやりがいであり、僕自身の生きがいになっています」
しかし、現在のような働き方にたどり着くまでには葛藤もあったそうです。
「以前は、会社から言われたことをこなすだけで、仕事のおもしろさを見出せずにいました。若さゆえに反発し、不満を口にしたことも。でも、それまで関わってくれた上司が『僕らがサポートするから、もっと自由にやってみなよ』と背中を押してくれたんです」
応援してくれた上司からアドバイスをもらったことで、能動的に新しい挑戦を始めた松本さん。
店頭で得たお客さまの声をメーカーへフィードバックし、“売れる”商品開発につなげる「商品開発・流通マーケター」としての活動。さらに、自ら地方へ足を運び、道の駅やスーパーを巡りながら、地域でしか流通していない魅力ある商品や食材を発掘し、売場へ届ける「ローカルブランドプロデューサー」としての役割。
仕事の内容は、「百貨店売場で商品を売る」から、「百貨店売場を生かして、地域の人と一緒に商品を育てる」スタイルへと変化していきます。
メーカーや生産者のもとへ足を運び、商品や原料への理解を深めるだけでなく、現場が抱える課題にも耳を傾ける。そして、お客さまの声や要望を届ける橋渡し役となり、地域の食材や特産品の魅力を新たな価値へとつなげていく。
生産量が少ないものの味は絶品という牛乳を本数限定で仕入れたり、閉店によって生産が途絶えた音威子府そばの復活に携わったりしながら、売場で培った知識と人脈を、商品開発やブランディングにも生かし始めます。
「周囲が自分を信頼して任せてくれる環境のなかで、『主体的に動く自由があるからこそ仕事はおもしろい』と実感する一方で、そこには関わっている方々の熱い思いや、常に結果への責任が伴うことを深く学びました」
コロナ禍が明けた頃から始まった新たなチャレンジを通じて、自由の楽しさだけでなく、その裏にある重みをしっかりと受け止め、自らの成長の糧にするというプロとしての姿勢を身につけていく“松本さん流の仕事スタイル”が形づくられていきました。
「調味料マニア」としての活動が始まったのも、ちょうどこの頃。
「大丸札幌店の企画で、砂糖・塩・酢・醤油・味噌の『さしすせそ』をテーマに、調味料の使い方を紹介する催しを企画しました。僕自身が前に出て、『調味料マニア』という肩書きで、少しキャラクターっぽく打ち出してみたんです。遊び心もあって始めた企画でしたが、お客さまにとても喜んでいただき、売上げも大きく伸びました。2回、3回と続けても反響が大きく、今では年8回の定番企画になっています」
自身の認知度を上げて
よい循環を生み出したい
8月26日(水)から9月8日(火)まで、グローサリー売場で開催される「調味料マニア 松本店長が推す「野菜」がより美味しく食べらさる調味料10選」には、これまで松本店長が出会い、温めてきた“絶品”かつ“ユニーク”なドレッシングが店頭に並びます。
「北海道はポテトサラダがよく売れる土地柄である反面、葉物野菜にかけるドレッシングの消費量は多くありません。でも、普段食べているサラダや料理も、『ドレッシング1本でこんなに変わるの!?』と驚いていただけるはずです。そんな感動を味わっていただきたくて、選りすぐりの10本をご用意しました」
調味料の話になると、商品の魅力だけでなく、その背景にあるメーカーや生産者への思いまで、次々と言葉があふれる松本さん。そんな松本さんが今目指しているのは、自身の認知度を高めること。それは決して有名になりたいのではなく、自身を商売ツールにするためです。
「もっと多くの方に僕のことを知っていただき、『松本が紹介する商品なら試してみたい』と思っていただける存在になりたいんです。消費者であるお客さまのファンが増えれば、生産者の方が僕に相談をしてくれた際に、リスクを低減できるかもしれないし、発展するチャンスが広がるかもしれない。僕の顔を知ってもらうことで、ビジネス面でも、北海道の経済面でも、よい循環を生み出せるかもしれないから」
「調味料マニア 松本店長が推す「野菜」がより美味しく食べらさる調味料10選」には、いつもの料理が激変する品が揃います。松本店長に出会ったら、ぜひ、おすすめの食べ方をお尋ねください!
※本記事の情報は、2026年7月のものです。












































