福澤 遼 デザイナー・イラストレーター
人に寄り添うデザインを。心はずむ季節を届ける大丸札幌店 秋の装飾
吹き抜け装飾や天吊り装飾、売場入口のVP(ビジュアル・プレゼンテーション)など、大丸札幌店の館内を彩る季節の装飾。VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)を担当する私たち装飾チームは、さまざまなプロフェッショナルのお力を借りながら、ワクワクした気分でお買い物を楽しんでいただけるような装飾を考えています。今回ご紹介する福澤遼さんは、現在は東京を拠点に、デザイナー・イラストレーターとして広告制作に携わるほか、作家活動として作品の創作にも取り組んでいます。たくさんの生き物たちが登場するイラストは、大手食品メーカーの社内報や出版社の雑誌、人気アーティストのファンクラブグッズなどでも採用されているので、目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。作品のなかに物語があり、登場する生き物たちの声が聞こえてきそうな作品。非現実的できれいな蛍光色を生かした色合わせも印象的です。大丸札幌店では、今回、初めて2026年秋の装飾デザインをお願いすることになりました。店内の下見を兼ねた打ち合わせ日に、福澤さんのイラストが生まれた背景を伺いました。
取材者:大丸札幌店 千葉美奈子
福澤 遼 ふくさわ りょう2>
デザイナー・イラストレーター
札幌生まれ、湧別町育ち、38歳。北海道芸術デザイン専門学校産業デザイン学科グラフィックデザイン専攻卒業後、アド・バリュー株式会社(札幌)、株式会社オズ(札幌・東京)、NOSIGNER株式会社(横浜)にて、グラフィックデザインやWebデザインの広告制作に従事。2023年にフリーランスとして独立し、イラスト作品も発表。東京を中心にイラストレーションの個展活動にも取り組む。公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会 正会員、2020宣伝会議アートディレクター養成講座 第20期植原亮輔クラスにて優秀作(銅賞)受賞、Metro Ad Creative Award 2021審査員特別賞(八木義博氏)。屋号は「福」。
大丸札幌店の秋を
福澤さんの世界で彩る
「イラストの中にいるキャラクターは、本音と建前、現実と虚像のように、相反する世界をつなぐ存在のようなもの。難しくてわかりづらいことを、親しみやすく伝えられる役割があると思います」
そう話すのは、東京を拠点に活動する北海道出身のデザイナー・イラストレーターの福澤遼さん。作品に登場するのは、今にもおしゃべりを始めそうなかわいらしい生き物たち。なかでも目を引くのは独特の色使いです。
「例えば、海外の映画に出てくるような極彩色のケーキみたいに、ちょっとケミカルで体に悪そうな感じの色合わせが好きなんです」
大丸札幌店では、2026年秋の館内装飾のデザインを、福澤さんに初めてお願いすることになりました。冬の訪れが早く、あっという間に過ぎていく北海道の秋。だからこそ、その短い季節を思いきり楽しんでいただきたい。かわいらしいキャラクターとキャッチーな色で彩られる“福澤さんワールド”を通して、お客さまにワクワクする秋の訪れをお届けしたいと考えています。
「北海道の秋は、本当に駆け足。だからこそ、『大丸札幌店は、秋へと装いが変わっていく時間そのものを楽しめる場所なんだ』という気持ちを表現したいと考えました。秋らしいモチーフや柄を盛り込みつつ、心に残る出会いや季節が移り変わっていく楽しさを、それぞれ異なる視点から描いてみました」
2回のリモート打ち合わせを経て、店内の下見を兼ねて初めて対面でお会いした日。福澤さんが持ってきてくださったデザイン案を見て、装飾担当の千葉も大喜び!提案していただいた4つの案には、秋を軸にした異なるテーマと物語があり、その世界の中にキャラクターたちが潜んでいます。どの案が選ばれても、館内がワクワクする秋の気配に包まれることは間違いなさそうです。
デザインの道の始まりは
修学旅行先の沖縄から
「図画工作が得意で、内向的な子どもでした。絵を描くと、祖父や祖母が褒めてくれたんです。札幌で生まれ、オホーツク海に面したサロマ湖に近い湧別町で育ちましたが、当時は観られるテレビチャンネルが少なくて、母がケーブルテレビを契約してくれました。私は国内外のアニメを放送する『カートゥーン ネットワーク』をずっと観ていて、『トムとジェリー』や『パワーパフ ガールズ』などが大好きでした」
アニメやコミックが好きだった福澤さんは、A4のコピー用紙にボールペンでキャラクターを描くように。紙いっぱいに大きな絵を描くのではなく、小さなキャラクターをたくさん描くのが好きだったのだとか。その作風は、たくさんのキャラクターが登場する現在の作品にも通じているようです。
「昔も今も、好きな作家さんは鳥山明先生です。『Dr.スランプ』や『SAND LAND』、『ドラゴンクエスト』の登場モンスター、そのほかの短編漫画のキャラクターもかわいくて、よく模写していました」
漫画家になりたいという思いはあったものの、自分の進路に迷っていた高校時代。そんな福澤さんに転機が訪れたのは、修学旅行先の沖縄でした。
「国際通りを歩いていたら、オリジナルTシャツを売っているお店があったんです。クマノミがぷくっと膨らんで見えるようにプリントされていたり、青い生地に白い雲が描かれていて、そこに『美ら海』という文字がおしゃれに入っていたりして。『うわ、面白い! 見せ方ひとつで、ハッと驚くようなおもしろい表現があるんだ!』と衝撃を受けました。
Tシャツを買って北海道に戻った福澤さんは、そのお店にメールをします。
「『どうやって、この仕事に就いているのですか?』とメールを送ると、お店の方がていねいに答えてくださったんです。「デザインを学んだり、美術大学を出たりしている人が多いので、そうした道を目指してみてもいいかもしれません」と教えてくださいました」
さっそく担任の先生に相談すると、ちょうど翌週にデザインを学べる札幌の専門学校のオープンキャンパスが開かれるタイミング。沖縄で受けた衝撃が、専門学校でデザインを学び、広告制作の道へと進む原点となりました。
過去にがんばった経験が
今の自分を励ましてくれる
「若い頃は、デザインは華やかで格好よく、おしゃれに仕上げるものという感覚がありました。でも次第に、お客さまの課題や思いを聞き、それをくみ取って“翻訳”するように世の中につなげていくのがデザインなのだと思うように。デザインに対する価値観が変わったのは、会社勤めをしたおかげだと思っています」
20代から30代前半にかけて、3つの広告制作会社で経験を積み、寝る間も惜しんで働いた時期もあったそうです。
「休日がなくなったり、徹夜をしたり。そんな仕事環境を肯定はできないけれど、ハードワークのなかで、精神的な強さやデザインの仕事を最後までやりきる力が培われたのも事実。仕事を通して“心の筋トレ”をしていたおかげで、今は『あのとき大丈夫だったんだから、今回もやれる!』と思えるようになりました」
札幌から東京へ移ったのは、会社員だった27歳頃の異動がきっかけ。グラフィックデザインからWebデザインへと仕事の領域が広がったのも、ちょうどこの頃だったそうです。
「ある日、『今日からWebデザイナーね』と言われて。Webデザインの仕組みを知らなかったので、エンジニアさんに怒られながら覚えていきました。グラフィックデザインとの大きな違いは、“動き”が加わることです。ボタンにマウスポインターを合わせると色が変わり、ボタンを押せることがわかったり、TOPページから各コンテンツへと、迷わないページ設計にしたり。Webサイトは、見栄えだけではなく使いやすさまで考えてデザインする必要があるんです」
求められるのは、Webサイトを利用する人にとっての使いやすさだけではありません。情報を更新するなど、そのWebサイトを運用する人にとっての使いやすさも必要です。さらに、Webサイトを形にするには、デザイナーだけでなく、デザインを実際にWeb上で動くものとして構築するエンジニアの力が欠かせません。
「色がフワ~ッと変わるのか、それともフワフワと変わるのか。感覚的なイメージを、どのようにしてエンジニアさんと共有するか。異なる専門性を持つ人と一緒にひとつのものをつくり上げるためのコミュニケーションは、今でもすごく難しいです」
福澤さんは職域を広げながら経験を積み、独立したのは34歳のときでした。
お客さまである社長の言葉が
イラストレーターにしてくれた
目指しているのは、依頼されたものをただ形にするのではなく、「なぜそう考えたのか」「何を伝えたいのか」という背景までを聞き、その意図を読み解いて“翻訳”するようなデザインです。
お客さまと直接やりとりできるフリーランスだからこそ、一人ひとりの思いに寄り添えるデザイナーでありたい。コロナ禍で、人と人とが直接会うことの価値を強く実感したからこそ、「自分がどんな人間なのかも含めて知ってもらいたい」と、顔を合わせて話すことを大切にするようになりました。
仕事とは別に、自分自身の表現にも向き合い始めます。
「作り続けることが力になると思い、“グラフィックトライアル”のような感覚で、Instagramに週1回、作品をアップしようと決めました。どうせやるなら、人に見られるストレスをかけたほうがいいなと思って。架空のポスターをつくったり、文字をデザインしたりしているうちに、だんだんイラストの比率が高くなっていったんです」
力試しの場になっていたSNSが、イラストの仕事が舞い込む入口になりました。大手食品メーカーや雑誌、人気アーティストのファンクラブグッズなどの依頼も、Instagramに投稿した作品を見た担当者から連絡が届いたことがきっかけだったそうです。
「ある会社からイラストの仕事をご依頼いただいたとき、描き上げるまでに修正を重ねた結果、僕らしい“ビビッドでカラフルな色合い”から遠のいてしまったことがありました。そのとき社長が、『福澤さんのスタイルで描いてもらったほうがいいんじゃない?』と言ってくださって。その言葉を聞いたときに初めて、『自分の作家性を認めてもらえたのかな』『イラストレーターになれたのかもしれない』と思えたんです」
依頼に応えるデザイナーとしてだけではなく、作家性を求められるイラストレーターとして歩き出せた実感。その喜びを振り返りながら、福澤さんは「お客さまの言葉によって、イラストレーターにしていただいた感覚があります」と振り返ります。
一歩を踏み出した今、描いているのは……。
「企業が抱える課題や伝えたい思いを、自分らしい表現によって、より多くの人に届ける仕事に取り組んでいきたいです。また、作家活動としては、現実と非現実のつなぎ目にいるキャラクターたちを、いつか立体フィギュアのようなグッズにして現実の世界へ連れ出していけたら」
「いつか現実と非現実のつなぎ目にいるキャラクターたちを、立体フィギュアのようなグッズにして、現実の世界へ連れ出してみたい。そして、企業が抱える課題や伝えたい思いを、自分らしい表現によって、より多くの人に届けていけたら」
実は今年掲げていた目標が、「商業施設でイラストを描くこと」だったそう。その目標は本州の施設で叶い、さらに地元・北海道では大丸札幌店の2026年秋の装飾という形で実現します。
秋の訪れを知らせる館内装飾は、2026年9月16日(水)〜10月27日(火)まで。“福澤さんワールド”のなかで買い物をお楽しみください。
※本記事の情報は、2026年8月のものです。
Events

2026 AUTUMN「CHECK CHECK CHECK」
装飾期間:2026年9月16日(水)〜10月27日(火)
冬の訪れが早く、あっという間に過ぎていく北海道の秋。“福澤さんワールド”を通して、お客さまにワクワクする秋の訪れをお届けします。












































