百花の人
百花の人043 福澤遼さん
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福澤ふくさわ りょう デザイナー・イラストレーター

人に寄り添うデザインを。心はずむ季節を届ける大丸札幌店 秋の装飾

百花POINT

吹き抜け装飾や天吊り装飾、売場入口のVP(ビジュアル・プレゼンテーション)など、大丸札幌店の館内を彩る季節の装飾。VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)を担当する私たち装飾チームは、さまざまなプロフェッショナルのお力を借りながら、ワクワクした気分でお買い物を楽しんでいただけるような装飾を考えています。今回ご紹介する福澤遼さんは、現在は東京を拠点に、デザイナー・イラストレーターとして広告制作に携わるほか、作家活動として作品の創作にも取り組んでいます。たくさんの生き物たちが登場するイラストは、大手食品メーカーの社内報や出版社の雑誌、人気アーティストのファンクラブグッズなどでも採用されているので、目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。作品のなかに物語があり、登場する生き物たちの声が聞こえてきそうな作品。非現実的できれいな蛍光色を生かした色合わせも印象的です。大丸札幌店では、今回、初めて2026年秋の装飾デザインをお願いすることになりました。店内の下見を兼ねた打ち合わせ日に、福澤さんのイラストが生まれた背景を伺いました。

取材者:大丸札幌店 千葉美奈子

PROFILE

福澤 遼 ふくさわ りょう

デザイナー・イラストレーター

札幌生まれ、湧別町育ち、38歳。北海道芸術デザイン専門学校産業デザイン学科グラフィックデザイン専攻卒業後、アド・バリュー株式会社(札幌)、株式会社オズ(札幌・東京)、NOSIGNER株式会社(横浜)にて、グラフィックデザインやWebデザインの広告制作に従事。2023年にフリーランスとして独立し、イラスト作品も発表。東京を中心にイラストレーションの個展活動にも取り組む。公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会 正会員、2020宣伝会議アートディレクター養成講座 第20期植原亮輔クラスにて優秀作(銅賞)受賞、Metro Ad Creative Award 2021審査員特別賞(八木義博氏)。屋号は「福」。

大丸札幌店の秋を
福澤さんの世界で彩る

「イラストの中にいるキャラクターは、本音と建前、現実と虚像のように、相反する世界をつなぐ存在のようなもの。難しくてわかりづらいことを、親しみやすく伝えられる役割があると思います」

そう話すのは、東京を拠点に活動する北海道出身のデザイナー・イラストレーターの福澤遼さん。作品に登場するのは、今にもおしゃべりを始めそうなかわいらしい生き物たち。なかでも目を引くのは独特の色使いです。

「例えば、海外の映画に出てくるような極彩色のケーキみたいに、ちょっとケミカルで体に悪そうな感じの色合わせが好きなんです」

大丸札幌店では、2026年秋の館内装飾のデザインを、福澤さんに初めてお願いすることになりました。冬の訪れが早く、あっという間に過ぎていく北海道の秋。だからこそ、その短い季節を思いきり楽しんでいただきたい。かわいらしいキャラクターとキャッチーな色で彩られる“福澤さんワールド”を通して、お客さまにワクワクする秋の訪れをお届けしたいと考えています。

「北海道の秋は、本当に駆け足。だからこそ、『大丸札幌店は、秋へと装いが変わっていく時間そのものを楽しめる場所なんだ』という気持ちを表現したいと考えました。秋らしいモチーフや柄を盛り込みつつ、心に残る出会いや季節が移り変わっていく楽しさを、それぞれ異なる視点から描いてみました」

2回のリモート打ち合わせを経て、店内の下見を兼ねて初めて対面でお会いした日。福澤さんが持ってきてくださったデザイン案を見て、装飾担当の千葉も大喜び!提案していただいた4つの案には、秋を軸にした異なるテーマと物語があり、その世界の中にキャラクターたちが潜んでいます。どの案が選ばれても、館内がワクワクする秋の気配に包まれることは間違いなさそうです。

福澤さんに装飾をお願いする場所を下見する装飾担当の千葉。秋の装飾をお願いすることになったのは、東京・谷中にある大丸松坂屋百貨店の創造型マーケティング組織「未来定番研究所」がきっかけ。オウンドメディア「FUTURE IS NOW」の記事でイラストをお願いしていた際に、福澤さんが北海道出身だと知った担当者が、大丸札幌店の千葉に紹介してくれました。
“今”から未来の定番を探るメディア FUTURE IS NOW

デザインの道の始まりは
修学旅行先の沖縄から

「図画工作が得意で、内向的な子どもでした。絵を描くと、祖父や祖母が褒めてくれたんです。札幌で生まれ、オホーツク海に面したサロマ湖に近い湧別町で育ちましたが、当時は観られるテレビチャンネルが少なくて、母がケーブルテレビを契約してくれました。私は国内外のアニメを放送する『カートゥーン ネットワーク』をずっと観ていて、『トムとジェリー』や『パワーパフ ガールズ』などが大好きでした」

アニメやコミックが好きだった福澤さんは、A4のコピー用紙にボールペンでキャラクターを描くように。紙いっぱいに大きな絵を描くのではなく、小さなキャラクターをたくさん描くのが好きだったのだとか。その作風は、たくさんのキャラクターが登場する現在の作品にも通じているようです。

「昔も今も、好きな作家さんは鳥山明先生です。『Dr.スランプ』や『SAND LAND』、『ドラゴンクエスト』の登場モンスター、そのほかの短編漫画のキャラクターもかわいくて、よく模写していました」

漫画家になりたいという思いはあったものの、自分の進路に迷っていた高校時代。そんな福澤さんに転機が訪れたのは、修学旅行先の沖縄でした。

「国際通りを歩いていたら、オリジナルTシャツを売っているお店があったんです。クマノミがぷくっと膨らんで見えるようにプリントされていたり、青い生地に白い雲が描かれていて、そこに『美ら海』という文字がおしゃれに入っていたりして。『うわ、面白い! 見せ方ひとつで、ハッと驚くようなおもしろい表現があるんだ!』と衝撃を受けました。

Tシャツを買って北海道に戻った福澤さんは、そのお店にメールをします。

「『どうやって、この仕事に就いているのですか?』とメールを送ると、お店の方がていねいに答えてくださったんです。「デザインを学んだり、美術大学を出たりしている人が多いので、そうした道を目指してみてもいいかもしれません」と教えてくださいました」

さっそく担任の先生に相談すると、ちょうど翌週にデザインを学べる札幌の専門学校のオープンキャンパスが開かれるタイミング。沖縄で受けた衝撃が、専門学校でデザインを学び、広告制作の道へと進む原点となりました。

過去にがんばった経験が
今の自分を励ましてくれる

「若い頃は、デザインは華やかで格好よく、おしゃれに仕上げるものという感覚がありました。でも次第に、お客さまの課題や思いを聞き、それをくみ取って“翻訳”するように世の中につなげていくのがデザインなのだと思うように。デザインに対する価値観が変わったのは、会社勤めをしたおかげだと思っています」

20代から30代前半にかけて、3つの広告制作会社で経験を積み、寝る間も惜しんで働いた時期もあったそうです。

「休日がなくなったり、徹夜をしたり。そんな仕事環境を肯定はできないけれど、ハードワークのなかで、精神的な強さやデザインの仕事を最後までやりきる力が培われたのも事実。仕事を通して“心の筋トレ”をしていたおかげで、今は『あのとき大丈夫だったんだから、今回もやれる!』と思えるようになりました」

「宣伝会議が主催する『アートディレクター養成講座』に通ったこともありました。講師は第一線で活躍されている方ばかり。課題に取り組んだり、話を聞いたりするなかで感じたのは、皆さん、“残るデザイン”をされているということでした。僕は、そのとき、その場所で役割を果たす刹那的なデザインを手がけることが多かったので、自分も残るデザインに取り組みたいと思うようになりました」

札幌から東京へ移ったのは、会社員だった27歳頃の異動がきっかけ。グラフィックデザインからWebデザインへと仕事の領域が広がったのも、ちょうどこの頃だったそうです。

「ある日、『今日からWebデザイナーね』と言われて。Webデザインの仕組みを知らなかったので、エンジニアさんに怒られながら覚えていきました。グラフィックデザインとの大きな違いは、“動き”が加わることです。ボタンにマウスポインターを合わせると色が変わり、ボタンを押せることがわかったり、TOPページから各コンテンツへと、迷わないページ設計にしたり。Webサイトは、見栄えだけではなく使いやすさまで考えてデザインする必要があるんです」

求められるのは、Webサイトを利用する人にとっての使いやすさだけではありません。情報を更新するなど、そのWebサイトを運用する人にとっての使いやすさも必要です。さらに、Webサイトを形にするには、デザイナーだけでなく、デザインを実際にWeb上で動くものとして構築するエンジニアの力が欠かせません。

「色がフワ~ッと変わるのか、それともフワフワと変わるのか。感覚的なイメージを、どのようにしてエンジニアさんと共有するか。異なる専門性を持つ人と一緒にひとつのものをつくり上げるためのコミュニケーションは、今でもすごく難しいです」

福澤さんは職域を広げながら経験を積み、独立したのは34歳のときでした。

福澤さんは蛍光色が大好き。スマホケースも名刺入れも、時計もすべて蛍光イエロー!蛍光色のG-SHOCKは、退職時に会社の仲間がくれたプレゼントです。

お客さまである社長の言葉が
イラストレーターにしてくれた

目指しているのは、依頼されたものをただ形にするのではなく、「なぜそう考えたのか」「何を伝えたいのか」という背景までを聞き、その意図を読み解いて“翻訳”するようなデザインです。

お客さまと直接やりとりできるフリーランスだからこそ、一人ひとりの思いに寄り添えるデザイナーでありたい。コロナ禍で、人と人とが直接会うことの価値を強く実感したからこそ、「自分がどんな人間なのかも含めて知ってもらいたい」と、顔を合わせて話すことを大切にするようになりました。

仕事とは別に、自分自身の表現にも向き合い始めます。

「作り続けることが力になると思い、“グラフィックトライアル”のような感覚で、Instagramに週1回、作品をアップしようと決めました。どうせやるなら、人に見られるストレスをかけたほうがいいなと思って。架空のポスターをつくったり、文字をデザインしたりしているうちに、だんだんイラストの比率が高くなっていったんです」

特徴的なのは二重に見える目。「『本音と建前、嘘と真実が混ざった2つの目』と格好よく言っていますが、妻が僕の写真を撮ったときに、眼鏡のレンズと本物の目が重なって写ったことがあったんです」。そんな偶然が、福澤さんらしいキャラクターの目の始まりです。思えば作品づくりは、グラフィックデザイン、Webデザインを経て、漫画家志望だった高校生時代に回帰した気持ちだそう。

力試しの場になっていたSNSが、イラストの仕事が舞い込む入口になりました。大手食品メーカーや雑誌、人気アーティストのファンクラブグッズなどの依頼も、Instagramに投稿した作品を見た担当者から連絡が届いたことがきっかけだったそうです。

「ある会社からイラストの仕事をご依頼いただいたとき、描き上げるまでに修正を重ねた結果、僕らしい“ビビッドでカラフルな色合い”から遠のいてしまったことがありました。そのとき社長が、『福澤さんのスタイルで描いてもらったほうがいいんじゃない?』と言ってくださって。その言葉を聞いたときに初めて、『自分の作家性を認めてもらえたのかな』『イラストレーターになれたのかもしれない』と思えたんです」

依頼に応えるデザイナーとしてだけではなく、作家性を求められるイラストレーターとして歩き出せた実感。その喜びを振り返りながら、福澤さんは「お客さまの言葉によって、イラストレーターにしていただいた感覚があります」と振り返ります。

イラスト制作に欠かせない道具は、手のひらが画面に触れても描画に干渉しない手袋、iPad用にカスタマイズしたミニコントローラー。イラストのアイデアは、大好きなサウナや立ち飲み屋さんでリラックスしているときに思いつくことも多いといいます。

一歩を踏み出した今、描いているのは……。

「企業が抱える課題や伝えたい思いを、自分らしい表現によって、より多くの人に届ける仕事に取り組んでいきたいです。また、作家活動としては、現実と非現実のつなぎ目にいるキャラクターたちを、いつか立体フィギュアのようなグッズにして現実の世界へ連れ出していけたら」

「いつか現実と非現実のつなぎ目にいるキャラクターたちを、立体フィギュアのようなグッズにして、現実の世界へ連れ出してみたい。そして、企業が抱える課題や伝えたい思いを、自分らしい表現によって、より多くの人に届けていけたら」

実は今年掲げていた目標が、「商業施設でイラストを描くこと」だったそう。その目標は本州の施設で叶い、さらに地元・北海道では大丸札幌店の2026年秋の装飾という形で実現します。

秋の訪れを知らせる館内装飾は、2026年9月16日(水)〜10月27日(火)まで。“福澤さんワールド”のなかで買い物をお楽しみください。

※本記事の情報は、2026年8月のものです。

Events

2026 AUTUMN「CHECK CHECK CHECK」

2026 AUTUMN「CHECK CHECK CHECK」

装飾期間:2026年9月16日(水)〜10月27日(火)

冬の訪れが早く、あっという間に過ぎていく北海道の秋。“福澤さんワールド”を通して、お客さまにワクワクする秋の訪れをお届けします。

企画取材:千葉美奈子 / 制作:3KG / ライター:布施さおり / 写真:岡田昌紘
  1. 001
    菅野 裕隆 株式会社 菅野養蜂場
  2. 002
    藤井 信二 メムロピーナッツ株式会社
  3. 003
    岡崎 実央 アーティスト
  4. 004
    林家 きよ彦 落語家
  5. 005
    宮岸 蒼 札幌ファッションデザイン専門学校DOREME 学生
  6. 006
    澤田 怜那 北海道芸術デザイン専門学校 学生
  7. 007
    佐久間 穂菜美 おたる水族館 飼育員
  8. 008
    山田 真史 JAPAN AX PROJECT株式会社
  9. 009
    妹尾 大樹・萌子 ORITSURU
  10. 010
    小笠原 敏文 株式会社 五勝手屋本舗
  11. 011
    北山 カルルス イラストレーター
  12. 012
    高橋 秀寿 高橋工芸
  13. 013
    日名地 博花 Cado
  14. 014
    伊藤 沙菜 株式会社 Easy Peasy
  15. 015
    石川 朋佳 トヅキ合同会社
  16. 016
    佐藤 壮馬 美術家
  17. 017
    竹内 隆介 トピカ
  18. 018
    林田 直樹 Brift H SAPPORO
  19. 019
    中村 夏音 Kanonnohimo
  20. 020
    宮本 翼 PIZZERIA DEL CAPITANO
  21. 021
    安藝 元伸 安芸農園
  22. 022
    橘 結 アーティスト
  23. 023
    小林 啓太 株式会社パルコ
  24. 024
    伊勢 昇平 株式会社ブルーチーズドリーマー
  25. 025
    鈴木 聡 鈴木聡ヴァイオリン工房
  26. 026
    沼田 大資 株式会社フォーシーズンズ
  27. 027
    BOTAN 花屋
  28. 028
    竹花 利貴 日本清酒株式会社 杜氏
  29. 029
    今村 育子 札幌駅前通まちづくり株式会社
  30. 030
    荒川 雄生・桜 ボクツメ
  31. 031
    河野 理恵 Liaison
  32. 032
    中川 斐世利 株式会社京屋
  33. 033
    星野 恵 一般社団法人 相互支援団体かえりん
  34. 034
    山岡 千秋 こぶ志窯
  35. 035
    荒田 朝陽 アーティスト
  36. 036
    吉川 貫一 アーティスト
  37. 037
    長谷 有理子 長谷製菓株式会社
  38. 038
    マーク・ギャニオン GAGNON株式会社
  39. 039
    吉田 慎司 株式会社まちづくり山上
  40. 040
    鳥羽 直樹 GELATERIA torinosu
  41. 041
    石田 正哉 余市宇宙記念館
  42. 042
    松本 慶一 大丸札幌店グローサリー売場店長
  43. 043
    福澤 遼 デザイナー・イラストレーター