松田 詢吾 togo
一粒にこめた、感動と余韻。世界で磨いたショコラの技を北海道・千歳から
美しいボンボンショコラを口に含むと、なめらかな口溶けとともに広がる豊かなガナッシュの香り。余韻を残しながらも、後味はスッと軽やかに消えていきます。見た目の美しさはもちろん、どれにしようかと選ぶ時間から、食べ終えた後の余韻まで楽しめるのが、togo(トーゴ)の松田詢吾さんが作るボンボンショコラの魅力です。日本やパリのパティスリーで修業し、ベルギーのショコラトリーで経験を積んだ後、2026年5月22日、千歳市信濃にtogoをオープンしたばかり。チョコレートの本場・ベルギーでの修業中には、「ワールドチョコレートマスターズ2022」のベルギー代表に選出された経歴の持ち主です。2026年9月23日(水・祝)〜28日(月)、大丸札幌店 7階催事場で開催される、スペシャルティコーヒーとスイーツの“ペアリング”を楽しむイベント「Coffee Pairing Festival 2026」には、うれしいことにtogoが初出店してくださることに!世界で腕を磨いてきた松田さんが、北海道・千歳で描くお菓子とは?お店を訪ね、味わいに込められた技術と思いを伺いました。
取材者:大丸札幌店 板倉真秀
松田 詢吾 まつだ とうご2>
togo オーナー兼シェフショコラティエ
京都出身、36歳。辻製菓専門学校卒業後、「ル パティシエ タカギ」(東京)、「シュクレカカオ」(パリ)、「ジャン=ポール・エヴァンジャパン」(東京)、「ラ・パティスリー・ベルジュ」(千葉)、「パティスリー ショコラトリー Yasushi Sasaki」(ベルギー)にて修業。ベルギーの修業期間中には「ワールドチョコレートマスターズ2022」のベルギー代表に選出され、芸術部門で第2位、総合8位。帰国後は「ショコラティエ マサール」(札幌)に勤務した後、2026年5月22日に、千歳市信濃に「togo(トーゴ)」をオープン。2026年3月、世界120年以上の歴史を持つベルギーのチョコレートメーカー「カレボー」チョコレートアンバサダー就任。
日本、フランス、ベルギーの技術を
ボンボンショコラに盛り込んで
「ボンボンショコラのおもしろさは、あんなに小さな一粒のなかで、味の変化をつけられることです。チョコレートだけでも、フルーツを合わせても、組み合わせ次第で表現できる味わいは無限大。水分量を抑えるチョコレートに対して、水分を残した状態で理想の味を表現できるのが、焼き菓子やケーキなどの洋菓子のおもしろさだと思います」
そう話しながら、箱に並ぶボンボンショコラを見せてくれたのは、今年5月、千歳市信濃の国道36号沿いにオープンしたスイートショップ「togo(トーゴ)」のオーナー兼シェフショコラティエ・松田詢吾さんです。店に並ぶのは、ボンボンショコラをはじめ、チョコレートに合わせて楽しみたいお菓子や、チョコレートを使ったお菓子の数々。
「四角い形をしているのは、フランス式のチョコレート。平らな型にチョコレートのガナッシュを流して固め、カットしてから上にチョコレートをかけます。丸くてツヤツヤしているのは、ベルギー式のチョコレート。型にカカオバターで色をつけたら、チョコレートを流して殻を作り、そこにフィリングを流し入れてチョコレートで蓋をします。フランス式とベルギー式では、作り方の順序が逆なんです」
例えば、パッションフルーツの華やかな香りと、生キャラメルの口溶けの重なりが楽しい「生キャラメルパッション」は、殻を作ってからフィリングを流し込むベルギー式。一方、コロンビア産カカオのパンチのある香りや、マダガスカル産カカオの酸味を感じられる四角いボンボンショコラは、フランス式です。
北海道産のハスカップやメロンを使った「パート・ド・フリュイ」は、フルーツのゼリー菓子。口に含むと、鮮やかな酸味と香りが弾けます。食べ比べてみると、それぞれの果実の香りを生かすように、弾力や口当たりまで変えていることに気づきます。
箱に並ぶボンボンショコラは、すべて異なる味わい。香りや味の組み合わせはもちろん、口溶けの滑らかさや溶けていくスピード、香りの重なりまで、一粒一粒が異なる表現で構成されています。「どの順番で食べようか」と悩む時間もまた、楽しみのひとつ。
松田さんは、日本やパリのパティスリーで働き、ベルギーのショコラトリーでも経験を積んだショコラティエ。チョコレートの本場・ベルギーでの修業中には、「ワールドチョコレートマスターズ」のベルギー代表に選出された経歴も持ちます。小さなボンボンショコラが並ぶ一箱には、松田さんが各地で培ってきた経験と技術が凝縮されているのです。
早く社会に出たい思いから
ケーキ店でアルバイトした高校時代
お菓子づくりに興味を持ち始めたのは、子どもの頃。誕生日やクリスマスにお母さまが手作りしてくれるケーキを味わいながら、スポンジの膨らみ方やレシピに興味を持ったのがきっかけでした。高校2年生の頃には、お菓子づくりの道へ進むことを決めていたそうです。
とはいえ、意外にも、高校時代はふて腐れていたそうで……。
「教科書を使わない学校だったんです。先生の話を自分流にまとめたり、絵にしたり。自分で考えることを大切にしている学校でしたが、高校生の自分は『なんで、こんなふうに学んでいるんだろう』とふて腐れていて。でも、今はその時の経験が生きていると感じます。アートに触れる機会が多い環境、試験のための勉強ではない学び方、正解がない世界で自分なりの答えを見つけることは、お菓子の世界にも通じているから」
早く社会に出たい思いがあった松田さんは、高校1年生の頃からファミリーレストランでの接客や、ケーキ店でのアルバイトに挑戦します。
「小さなケーキ店だったので、販売も製造も両方手伝わせてもらうことができました。高校生のアルバイトで、パティシエが力仕事であることを知れたのも、現実を知るよい経験でした」
高校卒業後に進んだのは、大阪の辻製菓専門学校(現・辻調理師専門学校)。1年間のコースで製菓を学びます。
「2年間学ぶのが主流でしたが、僕は早く就職したかった。ですから、1年間で学べるだけ学ぼうと思って、授業は一番前に座って聞きました。当時から35歳くらいで店を出したいと考えていたので、働き始めたら3〜4年ごとに店を変えて経験を積むイメージを持っていました」
そのイメージをなぞるように、松田さんは東京や千葉の有名店をはじめ、本場フランスやベルギーで修業を続けます。
コンテストに出るのは
自分の技術を客観視するため
専門学校卒業後、「ル パティシエ タカギ」(東京)で修業した松田さんが目指したのは、フランス・パリのパティスリー。ワーキングホリデービザで渡仏し、パリの「シュクレカカオ」でジェームズ=ベルティエ氏に師事します。
「店の横にある部屋で暮らしながら働きました。フランスで暮らして感じたのは、菓子やチョコレートが食事の一環として存在していることです。コース料理の一部分というか、食事の流れのなかでいただく締めの存在というか。普段の食卓でも、食事が終わったら甘いものを食べるのが当たり前という環境でした」
帰国後も再びヨーロッパへ渡ることを目標に、「ジャン=ポール・エヴァン ジャパン」(東京)や「ラ・パティスリー ベルジュ」(千葉)などで腕を磨きます。そして、縁をたどってベルギーへ。
「ベルギーの『パティスリー ショコラトリー Yasushi Sasaki』では、チョコレートのアートにも挑戦させてもらいました。それ以前からコンテストには出ていましたが、この時、ベルギー代表として『ワールドチョコレートマスターズ』に参加させていただきました」
「ワールドチョコレートマスターズ2022」では、芸術部門で見事、世界第2位に輝きます。
「コンテストに出るのは、自分の立ち位置やレベルを確認するためです。自己表現の引き出しを増やすよい機会が、コンテストなのだと思っています。人種に関係なく、技術や味、商品の見せ方などを公平に審査して、ベルギーの代表にしてもらえたことが、とてもうれしかったですね」
チョコレートで作る大型作品の重さに耐えうる構造やチョコレートの硬さ、ツヤの出し方、芸術性のある見せ方。日々取り組んでいる技術の集大成が、コンテストの作品づくりでもあります。
日本、フランス、ベルギーの店で働いてきた松田さんが感じたのは、国や店によって作り方や工程が異なること。ヨーロッパは特に、仕上がりさえ良ければ、プロセスにはこだわらないという考え方。ヨーロッパ的な考え方だという松田さんは、チョコレートづくりで一般的なテンパリングも、表現したい口溶けによっては、あえて行わないのだとか。
家族や友人と味わう
描くのは日常にあるショコラ
帰国した松田さんは、準備期間を経て2026年5月にtogoをオープン。北海道に店を構えたのは、奥さまの故郷である滝川にも近く、チョコレートの本場・ベルギーに気候が似ていたからです。そして、講習などで都内や海外へ行き、催事のために本州へ商品を送ることがある松田さんにとって、新千歳空港が近いことも大きな魅力でした。
「チョコレートには温度はもちろん、湿度管理が欠かせません。ですから、北海道の気候が合うと思いました。そして、僕らが洋菓子で使う材料は北海道産が多い。実際に暮らし始めてみると、サクランボ、ブドウ、モモといった質のよいフルーツもたくさんあるので、これから取り入れてみたいと思っています。札幌などと比べて、人口に対して洋菓子の個店の数が少なく、勢いのある千歳市は、まさにブルーオーシャンだと感じています」
お邪魔したのは平日の昼間だったにもかかわらず、訪れるお客さまが絶えません。店を目指してやって来た方、仕事の帰り道に立ち寄った様子のお客さまの姿から、togoが地元の人たちの日常に溶け込み始めていることが伝わってきます。
「イメージしているのは、日常のなかで楽しんでもらうお店です。ヨーロッパの家庭で味わうスイーツのように、チョコレートを身近に感じてもらえたら。『一瞬で食べ終わっちゃったけれど、また食べたいよね』と思っていただけたらうれしいですね
togoが大丸札幌店初出店となる「Coffee Pairing Festival 2026」には、コロンビア産とマダガスカル産、それぞれのカカオの個性を楽しめるボンボンショコラや、北海道産ハスカップと赤肉メロンのパート・ド・フリュイなど、コーヒーとともに味わいたいスイーツが揃います。
普段は千歳市でしか味わえないtogoのスイーツを、札幌で手に入れられるチャンス。ぜひ、この機会をお見逃しなく!
※本記事の情報は、2026年7月のものです。
sweet shop togo
住所:〒066-0038 北海道千歳市信濃1-6-10
TEL:0123-21-9032
営業時間:11:00〜18:00
定休日:火・水曜日














































