荒田 朝陽 アーティスト
ブーケを束ねるようにキャンバスに描くのは贈る人の心や幸せな気持ち
大丸札幌店の店内に、いつも可憐な花の絵で季節を届けてくださる荒田朝陽さん。2016年より故郷・札幌を拠点に創作活動をスタートし、花を描くアーティストとして、また、自身が描く花柄を用いたアクセサリーやハンカチなどの雑貨を手がけるクリエーターとして、全国へ活動の場を広げています。2020年のコロナ禍には、キキヨコチョでライブペイントを実施したことも。体全体を使って大きな花の絵を描きながらも、声をかけてくださるお客さま一人ひとりと楽しそうに言葉を交わす姿が印象的で、描くこと、そして人と向き合うことが本当に好きな方なのだと感じたことを覚えています。その後も物販やワークショップなどで何度もご一緒してきた荒田さんが、キキヨコチョ8周年を記念した「KiKiYOCOCHO KAWAII DAYS」4月22日(水)〜5月5日(火・祝)で作品の展示販売を行ってくださることになりました。この催事を前に、可憐な花の作品が生まれるアトリエを訪ねました。
取材者:大丸札幌店 澤田創太
荒田 朝陽 あらた あさひ2>
アーティスト
札幌出身、41歳。2016年に自身のオリジナルブランドを立ち上げて創作活動をスタート。2018年からは、アーティストとして創作のフィールドを広げながら現在に至る。2020年9月大丸札幌店キキヨコチョにてライブペイントを開催したほか、2021年8月independent Tokyo出展、2022年9月UNKNOWN ASIA審査員賞受賞、ほか個展やライブペイント、POP-UPなどを開催。
原点は、祖母が営んでいた花屋
“花”は小さな時から身近な存在
「音楽をかけて、踊りながら描くこともあります」
そう言いながら、アクリル絵の具をのせた筆を、迷いなく軽やかに走らせながら作品を描いているのは、札幌を拠点に創作活動に取り組む荒田朝陽さん。
花をモチーフにした作品制作やライブペイントに取り組む傍らで、自身がペイントした素材からつくるアクセサリーや雑貨も制作・販売するなど、活動の場が広がり続けている注目のアーティストです。
キャンバスに次々と花を描いていく様子は、まるでブーケをつくっているかのよう。絵から花の香りが立ちのぼってくるような荒田さんの作品は、幸福感に満ち溢れているように感じられます。
「私の祖母は、自宅の下で花屋を営んでいました。両親が共働きだったので、学校が終わると祖母の家に寄っていたんです。だから、花は子どもの頃から当たり前のように身近にあった存在。思えば、誰かのために花を買いに来るお客さまの姿を見て、花は誰かを喜ばせるものだと感じていた気がします」
アレンジメントにかすみ草を添えるのが好きだった祖母の姿を思い出し、気づけばブーケをモチーフにした作品にも「かすみ草を混ぜたくなる現象が起きています」と笑う荒田さん。幼少期の記憶は、無意識の中で作品に織り込まれているのかもしれません。
「絵を描き始めたときに花をモチーフとして選んだのは、見ている人が幸せな気持ちになれるものを描きたかったから。花の絵を見ると、みんな一瞬で笑顔になってくれるんです」
そんな荒田さんの作品をじっくり見ていると、ほんの小さな違和感に気づきます。それは、自然界には存在しないカクカクとした四角い形や直線、同じ花が繰り返し描かれるパターンが潜んでいるから。
「花をきれいに描くなら、生花にはかないませんし、むしろ写真のほうがいい。私が花を描く意味って何だろうと考えた続けた時期があったんです」
実は荒田さんは元会社員。創作活動を始めたのは、30歳になったばかりのことでした。
未来の占いから逆算し
飛び込んだ創作の世界
子どもの頃から、編み物をはじめとしたものづくりが好きだった荒田さん。つくったものを販売することに憧れながらも、なかなか一歩を踏み出せずにいたといいます。会社員として組織の中で働く日々を送りながらも、表現者として生きたい思いは募るばかり。そんな心の奥に積もっていた葛藤を解き放つきっかけとなったのは、意外にも“占い”だったそうです。
「占ってもらった1年後の自分の姿が、まさに望んでいた未来で。1年後ってことは、今から始めないと間に合わない!?と思ったことがきっかけでした」
占いに背中を押され、未来から逆算するようにして、自らペイントした素材を用いたアクセサリーの制作販売をスタート。そんな中、日本最大級のハンドメイドイベントで初めて出合ったのがライブペイント。
「それまで私が描いていたのは小さな絵でした。ライブペイントの場で大きなキャンバスいっぱいに描く人の姿が、とても羨ましく感じられて。最高!私もやってみたい!!と思ったんです」
2017年に会社を退職し、なんと、翌2018年に同じイベント会場でライブペイントを実現してしまいます。
「作品を販売しながら、2日間で花畑を描いたのですが、想像以上に楽しい経験になりました」
荒田さんは、この頃から本気でアーティストとしての道を模索し始めます。新進アーティストが作品を展示販売する、ブース型イベントに初めて出展したのは2021年のこと。
「厳しい指摘も受けて、ボロボロになった記憶があります。その頃から、なぜお客さまは私の絵を買って、飾ってくださるのか。そして、私が描く意味は何かを、ずっと考え続けていました。それまでは花をていねいに描き込むスタイルで制作してきましたが、その時、花を“きれいに描くこと”をやめたんです」
太陽の下で風に揺れる花の姿。どれほど美しくても、やがては枯れていく存在。太陽がなければ草花が光合成できないように、“朝陽”という名を持つ自分だからこそ、花を輝かせる表現があるのではないか。あらゆる角度から思考を深め、自身の表現を問い直します。
「効率を優先した産業革命によって、19世紀後半から20世紀初頭にかけて人の手仕事が衰退した時代がありました。いま、生成AIによって人の仕事が置き換えられつつある状況と、どこか重なるものを感じたんです」
大量生産に対抗する運動として知られるアーツ・アンド・クラフツ運動を率い、手仕事の価値を見つめ直したウィリアム・モリス。そのパターンデザインからインスピレーションを得て生まれたのが、花をパターン化し、反復させる作品です。
自然界に咲く花と、AIが進化し続けるデジタルの世界。そのふたつの世界線を行き来しながら、そして過去と現代を重ね合わせながら、あえて手描きでパターンを描く荒田さんならではの表現にたどり着きます。描く意味を言語化しようと突き詰めていくほどに、絵は抽象的に変化していったそうです。
「当時は明確なパターン柄を描いていましたが、いまはブーケが重なり続けて、どこまでもつながっていくようなパターンをイメージして描くようになりました。ブーケは人に贈るもの。誰かの思いを届けたり、気持ちを循環させたり、人の思いをつなげていくもの。そんな思いを込めて、作品づくりに取り組んでいます」
大丸札幌店のライブペイントは
創作活動の場を広げる転機に
これまで、大丸札幌店の店頭で、何度もご一緒させていただいた荒田さん。2020年には、店頭でライブペイントを実施したこともありました。
印象的だったのは、タイムリミットがある中で大きなキャンバスに向き合いながらも、買い物に訪れたお客さまと言葉を交わし、笑顔で話していらした姿です。
「大丸札幌店でのライブペイントは、自分の中で大きな節目となる出来事でした。アートイベントではなく、百貨店の店頭で“絵を描く時間”そのものを、皆さまにご覧いただく場です。普段出会うことのない方々に見ていただいたことで、もっとがんばりたい、もっといろんな場所で描きたい、もっと多くの人に見てほしい、そんな思いが高まりました」
店内に花畑が出現したライブペイントを振り返る荒田さんの言葉は、百貨店のあり方を模索し続ける大丸札幌店スタッフにとって、大きな励みでもあります。
「いま目標にしているのは、海外のアートフェアに参加すること。そしてこれからは、作品に花以外の生き物も取り入れようと思っています。飼っていたインコの死をきっかけに、これまで以上に“生”を描きたいと思うようになったから」
生きる時代や自身の経験とともに、少しずつ変化を重ねていく荒田さんの絵の世界。キキヨコチョ8周年を記念して4月22日(水)~5月4日(火)に開催される「KiKiYOCOCHO KAWAII DAYS」では、ブーケのように束ねられた花の作品が店頭に並びます。北海道の自然よりもひと足早く訪れる花の季節を、ぜひ店頭でお楽しみください。
※本記事の情報は、2026年3月のものです。





































