百花の人
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林田はやしだ 直樹なおき Brift H SAPPORO

靴磨きの技で、一歩踏み出す足元に輝きと自信を。

百花POINT

2025年9月27日(土)、28日(日)に大丸札幌店7階催事場で開催される、 世界最大級の靴磨きの大会『SHOESHINE GRAND PRIX 2025 1st Round 札幌大会』。2018年から始まった『靴磨き選手権大会』は今年で6回目を迎え、名称も新たに規模を拡大して開催されることになりました。総勢88名の出場者がSOLO部門とLOVER部門に分かれ、福岡三越(福岡)と大丸札幌店(北海道)で1st Roundで勝ち残った合計12名が、10月に東京スカイツリー® 1階『SKYTREE SPACE』(東京)で開催されるFinal Roundに進出する権利を得ます。このイベントを大会アンバサダーとして支えているのが、札幌の靴磨き専門店『Brift H SAPPORO(ブリフト アッシュ サッポロ)』のオーナーである林田直樹さん。世界大会で優勝経験がある林田さんの技を見せていただきに、狸小路8丁目にある店を訪ねました。

取材者:大丸札幌店 板倉真秀

PROFILE

林田 直樹 はやしだ なおき

Brift H SAPPOROオーナー、シューシャイナー

長崎県出身、45歳。2015年から、旭川市を拠点にして趣味の靴磨きを仕事としてスタート。2018年に『Brift H』(東京・南青山)の姉妹店『THE LOUNGE by Brift H』(札幌)の運営を引き継ぐ。2021年に『Brift H SAPPORO』に店名を変え、現在の場所へ移転オープン。2023年『World Championships of Shoe Shining 2023』優勝。9月27日(土)、28日(日)に大丸札幌店で開催される『SHOESHINE GRAND PRIX 2025 1st Round 札幌大会』では、大会アンバサダーを務める。

輝きと深みを生み出す
驚くべき靴磨きの技

「しっかりと汚れを落として、たっぷりと保湿をして、きれいに磨き上げる。この3つの工程が大切です」と話すのは、『Brift H SAPPORO(ブリフト アッシュ サッポロ)』のオーナーであり、靴磨き職人の林田直樹さん。

東京・青山にある靴磨き専門店『Brift H』札幌店のオーナーとして、林田さんはお客さまの目の前で靴磨きをする「カウンター磨き」のほか、革靴や鞄、財布などの革製品をお客さまから預かって、革製品のメンテナンスを行っています。

「靴を磨く時は、まず状態をチェックします。革の擦れや靴底の減り具合を見て、必要ならば修理もします。新しい靴を下ろす前のメンテナンスをプレメンテナンスやプレケアなどと呼ぶのですが、履く前に外側も内側の革もしっかりと保湿することで靴が長持ちするうえ、足にも馴染みやすくなる。革から抜けてしまった水分と油分を加えてあげるイメージでメンテナンスをしています」

保湿用の栄養クリームなど、靴磨きのアイテムは、『Brift H』のオリジナル。店頭では靴磨きアイテムの販売も行っています。オレンジ色のネル生地は、札幌店のオリジナル。

「磨いてみましょうか」と林田さんが取り出したのは新品の靴。カウンターの前で黒い靴を磨き出すと、場の空気が一変。流れるような美しい手さばきに、私たち取材スタッフの視線はくぎ付けに!靴の汚れを落としてから、おもむろに指で塗りだしたのは保湿用の栄養クリーム。何度も繰り返し塗り込むうちに、靴の色に深みが加わり美しいグラデーションが生まれてきました。革の毛穴を埋めるようにワックスの下地で平らな面をつくったら、最後は磨きの工程へ。ネル生地に水を含ませながらワックスをならすように磨くと、想像以上の輝きが生まれ、手元を見守る取材スタッフから自然と歓声が上がりました。

約15分かけて磨かれた靴には、鏡面のように艶やかな靴先からかかとにかけて、立体的なグラデーションが生まれています。新品の靴にニュアンスのある深みが加わり、鏡面のような靴先は周囲の景色が映り込むほどツヤツヤです。仕上がりの美しさもさることながら、気づけば靴磨きというパフォーマンスにすっかり引き込まれるあっという間の時間でした。

スーツを着て背筋を伸ばし、美しい手さばきで“魅せる”靴磨き。林田さんのスタイルは、東京の『Brift H』代表である長谷川裕也さんが確立したものだといいます。

左が磨く前、右が磨いた後です。同じ靴なのに、その違いは一目瞭然!

趣味が仕事となり
世界大会で優勝へ

「長谷川さんは、日本の靴磨き界のトップを走る人。靴磨きの業界では知らない人がいないほどの存在です。路上の靴磨きからスタートした方で、技術の高さはもちろんですが、話も上手くてユニークで、そしてかっこいい。長谷川さんの靴磨きスタイルに憧れましたし、今では靴磨きの世界を一緒に盛り上げていくパートナーだと思いたい存在です」

林田さんの出身は長崎県。路上ミュージシャンとして活動していた25歳の頃に、音楽仲間に誘われて旭川市へやってきたのが北海道との縁でした。古着屋で惚れ込んだ『Redwing』のブーツを購入した際にメンテナンスすることを勧められ、オイルを一緒に購入したことが靴磨きとの出合い。靴磨き業界の一線を走る『Brift H』の長谷川さんの本を読んだり、2015年にできた『Brift H』札幌店のワークショップに通ったりして靴磨きを学んだそうです。

お客さまと向き合って磨く「カウンター磨き」は、まるでバーカウンターのよう。靴磨きの技を目の前で見守りつつ、おしゃべりも楽しめます。林田さんの靴磨きを間近で見るのが初めてだった板倉は、つま先の鏡面磨きの美しさに衝撃を受けていました。

「旭川の商業施設で働き働きながら趣味で靴磨きを始めるうちに、家族や知り合いの靴を磨き、古着屋の靴も磨くようになりました。古い靴を磨くと売れ行きがよくなり、一足売れたら1,000円もらうといった具合に報酬をいただくようになったんです」

お客さまへアピールするために『靴磨き選手権大会』にエントリーし、長谷川さんの推薦で空いた枠への参加が叶ったのが2018年のこと。

「結果は奮いませんでしたが、これはチャンスだと思いました。大会をきっかけに札幌で靴を磨く機会も得て。ある時、長谷川さんから、札幌にあった系列店の店長が辞めるから『やってみないかい?』と誘われて。声をかけてくださったことが光栄でしたし、例え結果がダメでもやるべきだと思ったんです」

新しい挑戦に向けて奥さまも背中を押してくれたおかげで、2018年に『Brift H』(東京)の姉妹店『THE LOUNGE by Brift H』(札幌)の店長を引き継ぎ、家族で札幌へと移住。靴磨き職人としての人生をスタートします。独立するタイミングで『Brift H SAPPORO』に店名を変え、現在の場所へ移転オープンしたのが2021年のこと。さらに2023年には、『World Championships of Shoe Shining 2023』の世界大会で優勝という快挙を成し遂げます。

世界大会で優勝した際のメダルは店内に飾られています。

日本らしい靴磨き文化を
今よりもっと広げていきたい

大事な商談や打ち合わせの前に気合いを入れるために。友人の結婚式に参列するために。気持ちのギアを切り替え、ハレの日の身なりを整えるための靴磨き。話を聞くほどに、林田さんが靴磨きを通して提供しているのは、美しい靴だけではなく、きれいな靴を履くと湧いてくる自信や、人前でも堂々と振る舞える勇気、ハレの日を祝う気持ちのように、見えない心なのだと感じます。

「日本にも、北海道にも、靴磨きの文化や価値を広げていきたいと思っています。靴磨き業界を牽引する長谷川さんの力を借りながら、そして『SHOESHINE GRAND PRIX 2025 1st Round 札幌大会』などのイベントを通して一緒に盛り上げていきたい。そして、一つのことを突き詰める日本らしい靴磨きの文化を海外にも発信していきたいですね」

「革靴は消耗品という方もいるのですが、僕は違うと思っていて。デザインが好きでずっと直しながら履く方も、なんなら靴の価格よりも修理代の方が高くなるまではき続ける方の靴は、体の一部になるくらいまで馴染んでいる。大事な靴を、手入れしながら長く使う価値観を伝えていきたいです」と林田さん。

靴磨きにはさまざまな可能性があると意気込む林田さんは、「子どもの教育」にも着目しているそうです。

「子どもたちの教育の分野に靴磨きを落とし込んでみたいと考えていて。僕は物を大事にして、壊れたら修理をしながら長く使っていく価値観を素晴らしいことだと思っています。靴磨きを通して、子どもたちに物を大事にする心を伝えていけたら」

何でも手に入る時代。大量生産の物ほど修理ができず、傷んだら捨てるしか選択肢がないアイテムも多い世の中です。だからこそ愛着を持って大切にする心を伝えていきたいと、子育て中のお父さんでもある林田さんは未来を描きます。

2025年9月27日(土)、28日(日)大丸札幌店で開催される『SHOESHINE GRAND PRIX 2025 1st Round 札幌大会』には、全国から靴磨きの強者が集結。靴磨きに馴染みのない方も興味のある方も、限られた時間の中で革靴の表情が変わっていくさまを間近で見られるチャンスをお見逃しなく!

ひとつのことをとことん突き詰めるのは日本らしさ。日本ならではの靴磨きを、いつか世界に発信できるよう、林田さんは英語のレッスンを受け始めたそうです。「店頭だけではなく、人が行き交う場所で靴磨きをする、まったく業態の違う店にもチャレンジしてみたいですね」と、アイデアは尽きません。

※本記事の情報は、2025年7月のものです。

Brift H SAPPORO(ブリフト アッシュ サッポロ)
住所:〒060-0063 北海道札幌市中央区南3条西8丁目11-2 島屋ビル 2-C
TEL:011-596-7969
営業時間:12:00~19:00
定休日:水曜日
HP:https://brifth-sapporo.com/(※別サイトに遷移します)

Events

SHOESHINE GRAND PRIX 2025

SHOESHINE GRAND PRIX 2025 1st Round 札幌大会

開催期間:2025年9月27日(土)13:00~17:00頃、28日(日)11:00~18:00頃
場所:大丸札幌店 7階催事場

世界最大級の靴磨きイベント。本大会で林田さんは大会アンバサダーを務めます。有料観覧席チケットはイベントサイトから。無料での観覧(立ち見)も可能です。

※本イベントは終了しました。

企画取材:板倉真秀 / 制作:3KG / ライター:布施さおり / 写真:髙田美奈子
  1. 001
    菅野 裕隆 株式会社 菅野養蜂場
  2. 002
    藤井 信二 メムロピーナッツ株式会社
  3. 003
    岡崎 実央 アーティスト
  4. 004
    林家 きよ彦 落語家
  5. 005
    宮岸 蒼 札幌ファッションデザイン専門学校DOREME 学生
  6. 006
    澤田 怜那 北海道芸術デザイン専門学校 学生
  7. 007
    佐久間 穂菜美 おたる水族館 飼育員
  8. 008
    山田 真史 JAPAN AX PROJECT株式会社
  9. 009
    妹尾 大樹・萌子 ORITSURU
  10. 010
    小笠原 敏文 株式会社 五勝手屋本舗
  11. 011
    北山 カルルス イラストレーター
  12. 012
    高橋 秀寿 高橋工芸
  13. 013
    日名地 博花 Cado
  14. 014
    伊藤 沙菜 株式会社 Easy Peasy
  15. 015
    石川 朋佳 トヅキ合同会社
  16. 016
    佐藤 壮馬 美術家
  17. 017
    竹内 隆介 トピカ
  18. 018
    林田 直樹 Brift H SAPPORO
  19. 019
    中村 夏音 Kanonnohimo
  20. 020
    宮本 翼 PIZZERIA DEL CAPITANO
  21. 021
    安藝 元伸 安芸農園
  22. 022
    橘 結 アーティスト
  23. 023
    小林 啓太 株式会社パルコ
  24. 024
    伊勢 昇平 株式会社ブルーチーズドリーマー
  25. 025
    鈴木 聡 鈴木聡ヴァイオリン工房
  26. 026
    沼田 大資 株式会社フォーシーズンズ
  27. 027
    BOTAN 花屋
  28. 028
    竹花 利貴 日本清酒株式会社 杜氏
  29. 029
    今村 育子 札幌駅前通まちづくり株式会社
  30. 030
    荒川 雄生・桜 ボクツメ
  31. 031
    河野 理恵 Liaison
  32. 032
    中川 斐世利 株式会社京屋
  33. 033
    星野 恵 一般社団法人 相互支援団体かえりん
  34. 034
    山岡 千秋 こぶ志窯
  35. 035
    荒田 朝陽 アーティスト
  36. 036
    吉川 貫一 アーティスト
  37. 037
    長谷 有理子 長谷製菓株式会社
  38. 038
    マーク・ギャニオン GAGNON株式会社
  39. 039
    吉田 慎司 株式会社まちづくり山上
  40. 040
    鳥羽 直樹 GELATERIA torinosu