沼田 大資 株式会社フォーシーズンズ
真冬の都市も、極寒の雪山も。すべてをフィールドに変える北海道発のアパレルブランド
雪国に暮らす私たちにとって、冬のアウターは、防寒の意味でも寒さを吹き飛ばして気分を上げるためにも欠かせないアイテムです。今回ご紹介するのは、北海道発のアパレル会社、株式会社フォーシーズンズでディレクターを務める沼田大資さん。同社が開発した「43DEGREES(フォーティースリー ディグリーズ)」のウエアは、アウトドアウエアの頑丈さに紳士服の仕立てによる動きやすさを融合。そこに雪国の視点を加えることで、山でも街でも使いこなせる機能性とデザイン性を両立させています。クールで普遍的なデザインを目指し、企画から開発、販売までを一貫して自社で行い、なにより対面販売を大切にしているという沼田さん。自ら店頭に立ち、お客さまに服の魅力を伝える言葉には、自分たちの手でつくり上げたプロダクトへの愛情と自信がにじんでいます。その「43DEGREES」が、2025年12月3日(水)~16日(火)の期間、6階紳士服売り場にてPOP-UPを開催!イベントの開催に先立ち、商品に込めた思いを沼田さんにお聞きするために、札幌市内にあるショップ「Four Seasons Design Lab.(フォーシーズンズデザインラボ)」を訪ねました。
取材者:大丸札幌店 藤尾智美
沼田 大資 ぬまた だいすけ2>
株式会社フォーシーズンズ 取締役・ディレクター
苫小牧市出身、47歳。宮島学園北海道ファッション専門学校ビジネスコース卒業後、毛皮専門店やジーンズショップ、イタリアンレストラン、紳士服店に勤務し、2014年に株式会社フォーシーズンズに入社。同社が手がけるアパレルブランド、アウトドアウエアの「43DEGREES(フォーティースリーディグリーズ)」やスーツスタイルの「IMVER(インベル)」など、すべてのブランドの企画開発から販売までを手がける。
洗練されたクールなデザインで
北海道のイメージを再定義
株式会社フォーシーズンズ取締役の沼田大資さんにお会いするために訪ねたのは、1950年(昭和25)から続く古いビルの1階。武骨で無機質なショップの空間には、「北方圏でつくられる一番山に近いウェア」をテーマにした、北海道発のアパレルブランド「43DEGREES(フォーティースリーディグリーズ)」のアウターが並んでいました。モノトーンから鮮やかな色まで、単色でありながらもオリジナリティのある色あいが目を引きます。
「43DEGREESの服は、アウトドア業界の技術を盛り込んだ素材に、紳士服の仕立ての着心地を合体させています」と教えてくれたのは沼田さん。紳士服のスーツは、一見すると窮屈そうな印象がありますが、実は可動域が広くて動きやすくデザインされた服なのだといいます。
「スパイ映画のヒーローを思い浮かべてみてください。スーツを着て、腕を振り上げ、足を蹴り上げたりしていますよね。仕立てがよいスーツは、例え生地が伸びない素材でもデザインで可動域を広げています。もっとも動きやすい人の皮膚に近づけるように設計されているんです」
説明を聞いた取材スタッフが、実際にアウターを着てみると……。まず驚かされたのは、生地のもっちりとした柔らかさと、伸びるようにフィットする着用感。縫い目が出ない縫製のため、肌への引っかかりもなくなめらかです。
さらに、アウターに隠れた機能やデザインに関する沼田さんの解説には驚くばかり。
汗を逃がすベンチレーション、タブレットまで入る大容量のインナーポケット、外から直接インナーポケットにアクセスできる開口部。フードは硬さの異なる生地を組み合わせて立体的なシルエットを保つ設計。縫い目を出さないハンドゲーター、大きめのシルエットでも体にジャストフィットさせる調整コード、トイレで着脱しやすいボトムスのデザイン、怪我をしていても片手で着脱しやすいベルトの工夫。クールなアウターの裏側に、こんなにも多くの機能が潜んでいるとは!沼田さんの解説の様子は、まるで次々と技を繰り出すマジシャンのようでした。
「目指しているのは、北海道のイメージを再定義した、クールで洗練されたライフスタイルを表現する普遍的なデザインです。クローゼットを開いた子どもや孫に、『こんなにおしゃれな服を着ていたの!?』と驚いてほしい。次の世代、そのまた次の世代が見ても古びていないデザインの服を作りたいと思っています」
ジャンルを超えた経験が
既成概念を飛び越える
「子どもの頃は、アニメやお菓子のおまけシールに登場するキャラクターを真似て、段ボールや画用紙で立体コスチュームを作るような子でした。でも、ファッションには無頓着。気に入って着ていた紫色のジャージ姿で街に出かけると、同級生にからかわれてしまって。ショックを受けて、人前に出るのを避けるようになりました。そんな自分を変えたいという思いから、自分自身を表現し、自信を持つための手段としてファッションを学ぼうと思い、札幌の専門学校へ進学したんです。とはいえ、絵を描くのは得意ではなかったので、デザインではなく商品企画や販売までの全体を学べるビジネスコースを選びました」
スーツで1位になったこともあるという沼田さん。作ったのは、ていねいに細かく仕立てたトラディショナルな紳士服だったそうです。
卒業後は、毛皮専門店やジーンズショップ、紳士服店、さらにはイタリアンレストランでの勤務まで、幅広い職種を経験。どの転職にも共通していたのは、「いつか服を企画する側になりたい」「接客のプロとして成長したい」という思いでした。
ジャンルの異なる仕事を経験し、そこで出会った“凄腕の販売員”の姿から大きな学びを得たという沼田さん。接客の正解も不正解も表裏一体であること。常識外れに見える対応であっても、お客さまとの関係性次第では正解になり得ること。「自分が正解だと思っても、見方を変えれば不正解かもしれない」と俯瞰して見る視点は、いまも仕事の軸となっているそうです。
個と個が繋がる対面販売が
ビジネスの正解だと信じて
「今はSNSやネットショッピングが主体の時代ですが、接客や口コミといったオフラインの力は、実はネットが攻め込む隙もないほど強いのではないか。お客さまの心を掴み、長くお付き合いしていく個と個の関係性こそ、ビジネスとしての正解ではないかと感じています」。だからこそ、沼田さんは対面販売を大事にしています。
時代の空気に流されずに、自分が信じる対面販売の価値を磨き続ける。そして、自分たちが自信を持って紹介できる服だけを作る。沼田さんの言葉からは、クールなデザインに込められた熱い思いが感じられました。
43DEGREESが掲げる普遍的なデザインは、サイズ展開にも反映されています。同じデザインでも細身とゆったりめの2つのシルエットを用意し、サイズはXSから4Lまで幅広く展開。アイコンにもなっているレインボーテープは、メンズ・レディースの区別や、年代に縛られずに選べる証です。オーバーサイズを選んでも、コードやマジックテープの調整によってジャストフィットさせられる設計なので、年齢を重ねて体型が変わってもきれいなシルエットを保てる点も魅力。
「いつか、北海道中の方に『43DEGREES』を着ていただきたいと思っています。道外の方が北海道を旅したときに、『この43DEGREESって一体何!?』と驚くような世界観がつくれたら」
描いているのは、北海道という雪国から服を通してクールで洗練されたライフスタイルを発信すること。そのために、沼田さんはお客さま一人ひとりに、服へ込めた思いを伝えます。
大丸札幌店のPOP-UPは紳士服フロアで開催されますが、性別を問わずご試着いただけます。北海道発のファッションに興味のある方、着心地を体感してみたい方は、ぜひ気軽にお立ち寄りください。店頭で沼田さんにお会いできたなら、服づくりの物語もお楽しみいただけるはずです!
※本記事の情報は、2025年11月のものです。
Four Seasons Design Lab.(フォーシーズンズデザインラボ)
住所:〒060-0033 北海道札幌市中央区北3条東5丁目5 岩佐ビル1階
TEL:011-212-1724
営業時間:11:00~19:00(定休 月・火曜)
HP:https://4ss.jp/




























