鳥羽 直樹 GELATERIA torinosu
ひとくち目から余韻まで。味の設計が生み出すジェラートのおいしさ
鳥羽直樹さんは、イタリア発祥の氷菓・ジェラートを手がける専門職人「ジェラティエーレ」。国内外から厳選した旬の果物や野菜、上質な素材を使って作り上げる香り豊かなジェラートは、札幌市南区の『GELATERIA torinosu(ジェラテェリア トリノス)』のほか、キッチンカー『torinosu gelato(トリノス ジェラート)』で販売しています。おいしさの秘密は、口に入れた瞬間に広がる香りや、濃厚でなめらかでありながらも軽やかな口溶け、そして余韻として残る香りまでを計算し尽くした設計のようなレシピにあります。ジェラートは、溶けていくわずかな時間の中で、素材本来の魅力を豊かに伝えるスイーツ。そんな鳥羽さんのジェラートは、イタリアで開催された世界最大級のコンクール「SIGEP(シジェップ)2024」の課題部門で世界4位受賞に続き、今年の「SIGEP 2026」ソルベ部門で世界6位を獲得。本場イタリアでも高く評価された味わいが、2026年7月1日(水)~6日(月)に大丸札幌店 7階催事場で開催される『夏のアイス&スイーツフェア』に登場します。貴重な機会を、ぜひお見逃しなく!
取材者:大丸札幌店 藤尾智美
鳥羽 直樹 とば なおき2>
GELATERIA torinosu 代表取締役・ジェラティエーレ
札幌市出身、41歳。2006年に光塩学園調理製菓専門学校を卒業後、中華料理店やコーヒー専門店で経験を積み、『musica hall café』の初代イタリアンシェフを務める。家業である「ライフサービス鳥羽」を継承し、2020年にジェラート事業をスタート。2021年にはキッチンカー『torinosu gelato』を開始し、2023年には札幌市南区にジェラートとコーヒーを提供する『GELATERIA torinosu』をオープン。日本ジェラート協会認定ジェラートマエストロ。
はかなく溶ける限られた時間で
素材の魅力を表現する氷菓
口に入れた瞬間、ふわっと広がるミルクの香りと、チョコレートのパリッとした食感。体温で軽やかに溶けたチョコレートがミルクと混ざり合い、まるでミルクチョコレートのような味わいへと変化する、チョコチップジェラートの「ストラッチャテッラ」。ねっとり芳醇なマンゴーの甘さを、パイナップルの爽やかな酸味とベルガモットの香りが引き立てる「トロピカーレ」。濃厚なチョコレートにベルガモットの華やかな香りを重ね、コアントローの余韻が広がる「パルテンザ」。シチリア産ピスタチオの力強くて香ばしい風味が驚きを生む「ピスタチオ」。
GELATERIA torinosu(ジェラテリア トリノス)のジェラティエーレ、鳥羽直樹さんが作るジェラートは、ひとくち目の驚きから口溶け、そして余韻までを楽しめる、“香り”を味わうスイーツです。
取材当日に作っていた「ストラッチャテッラ」は、イタリアジェラート協会主催の国際コンテスト「SIGEP 2024」で世界第4位を受賞した逸品。『ストラッチャテッラ(チョコチップ)』という課題にとことん向き合い、おいしいミルクジェラートとチョコレートの理想的な関係を追求する中で生まれたレシピだといいます。
「数種類のチョコレートに加え、ギーやカカオバターなどを配合し、人の口の中の体温である約37℃で溶けるよう調整しています。パリッとしたチョコレートの食感を残しながら、先にミルクジェラートが溶け始め、その後を追いかけるようにチョコレートが溶けていく。最後には口の中で一体となり、もう一つのジェラートが完成するような味わいを目指しました」
風味を生み出す素材、ベースとなるミルク、そして甘みを添える砂糖と、ジェラートはシンプルな材料で作られます。しかし鳥羽さんが語るのは、「おいしい!」の裏に隠されている、分子レベルで設計する口溶けや、食べた瞬間から余韻として鼻へ抜ける香りまでを計算し尽くす味わいの構造について。
氷菓が体温で溶けていく限られた時間の中で、素材の魅力をどう表現するか。そのために、例えばグラニュー糖やブドウ糖、水飴、果糖、イヌリン、マルトデキストリンなど、多様な糖類を使い分けるといいます。
料理の道から建築の資格取得まで
異色のキャリアで自分の店を実現
料理の世界へ一歩踏み出した専門学校では、若さゆえの勢いと甘さから学校の実習先に「札幌で一番厳しいところ」を希望。「保証はできないぞ」と、先生に送り出された厨房で経験したのは、厳しい料理人の世界でした。
「『なにかやることありますか?じゃなくて、教えていただけることはありませんか?だろう!』と怒られて。今では話せないことばかりの体験でしたが、厳しい物言いをする先輩たちが料理する姿はかっこよく見えて、『自分もあのフィールドに立ちたい』と思うようになりました」
卒業後は中華料理店やコーヒー専門店で経験を積み、職場での出会いをきっかけに、ライブカフェバー「musica hall café」の初代イタリアンシェフを務めることに。さまざまなジャンルの食に触れながら自分の道を模索していた鳥羽さんにとってのひとつの転機は、結婚を機に“自分で”自宅を建てることでした。
「僕は昔から、人間にできることなら自分にもできるだろうと考えてしまうタイプ。自分で建てたらお金もかからないだろうと考えて、いったん料理の仕事を辞めました」
建築士の資格は取得まで時間がかかるためリフォームを選択。必要な資格を次々と取得して自宅のリフォームを進めながら、電気工事や水道工事の手伝い、大工仕事、エアコン設置まで、さまざまな仕事を請け負って収入を得たそうです。さらにタンクローリーの運転免許や危険物取扱者の資格を取得して、家業である灯油販売の仕事も継承。
「料理とはまったく違うジャンルで働いた知識が、接客をする今の仕事に生きています。この店も、イメージ通りに自分で作ることができましたしね」
一見すると異色にも思えるキャリアのすべてが、現在の「GELATERIA torinosu」につながっています。
ジェラートは科学の世界
おいしさの裏側にある理由
「ジェラートの道に進んだ大きなきっかけがあったわけではありません。でも、『ジェラートマシンのフェラーリ』とも称される、イタリア・Carpigiani(カルピジャーニ)社製の中古ジェラートマシンと牛乳の殺菌機が手に入ったんです」
状態の良いマシンを手に入れて試作を重ねるうちに、料理の知識だけでは思うようにいかないジェラートづくりの奥深さに魅了されていったという鳥羽さん。しかし、試作を重ねても明確なゴールは見えません。「おいしさはお客さまに判断してもらおう」との思いから、キッチンカーでジェラートをだすようになったのが2021年のこと。
そんな鳥羽さんに衝撃をもたらしたのは、所属していた日本ジェラート協会が主催した、日本を代表するジェラートマエストロ、石川県能登町出身のジェラート職人・柴野大造さんの講習会でした。
「自分は『ジェラートを甘く見ていた』と思いましたね。食べておいしければよいと思っていましたが、おいしさにはきちんと科学的な根拠があり、すべてに構造的な理由があると学びました」
『なんですぐに溶け始めるのだろう?』『チョコが固い』『どうしてイチゴがシャクシャクするのか?』。ジェラートを作りながら感じていた数々の疑問に、構造的な問題があったと納得したそうです。
鳥羽さんはレシピを根本から見直します。糖度13度のイチゴには、ブドウ糖や果糖、ショ糖がそれぞれどの程度含まれているのかといった、成分の分析からスタートし、レシピを徹底的に再構築。さらに、ジェラートの味わいを決定づける質のよい素材を探し求めて生産者との対話を重ねながら、「素材のどんな魅力を、どのように表現するのか」を考えるジェラートづくりへと進化させます。
素材を探し、理解し、設計する。その積み重ねの先に、「素材以上に素材らしい」とお客さまから声が上がる鳥羽さんが目指すジェラートが完成しました。
スタートラインに立つために
目指すのは世界一の称号
探究の成果は、本場イタリアでも認められています。
2024年には、イタリアジェラート協会主催の国際コンテスト「SIGEP 2024」の課題部門で世界第4位を受賞。さらに2026年には、「SIGEP 2026」ソルベ部門で世界第6位に輝きました。
そんな鳥羽さんが今、見据えているのは「世界一」。
「うちの店で提供しているジェラートやエスプレッソ、焼き菓子を通して伝えていきたいのは、イタリアの文化です。本場のイタリアンジェラートのおいしさを、日本の皆さんに知っていただきたい。そのためには、世界一という実績を得て、そのスタートラインに立ちたいと思っています」
2026年7月1日(水)〜6日(月)に大丸札幌店 7階催事場で開催される『夏のアイス&スイーツフェア』には、イタリアのコンテストで受賞したレシピのジェラートも登場予定。
おすすめは、爽やかな果実系とミルクやチョコレート、ナッツ系を組み合わせて楽しめるダブルやトリプルでの味わい方。異なる香りや味わいを組み合わせることで、ジェラートの味わいがより豊かに感じられるはずです。
口に含んだ瞬間に広がる華やかな香り。軽やかに溶けながら移り変わる味わい。そしてふくよかな余韻を楽しむ初夏の氷菓を、ぜひ会場でご体験ください。
※本記事の情報は、2026年5月のものです。
GELATERIA torinosu
住所:〒005-0842 北海道札幌市南区石山2条2丁目7-33
TEL:011-600-1704
営業時間:11:00〜18:00
定休日:木曜日










































