百花の人
百花の人040 鳥羽直樹さん
040

鳥羽とば 直樹なおき GELATERIA torinosu

ひとくち目から余韻まで。味の設計が生み出すジェラートのおいしさ

百花POINT

鳥羽直樹さんは、イタリア発祥の氷菓・ジェラートを手がける専門職人「ジェラティエーレ」。国内外から厳選した旬の果物や野菜、上質な素材を使って作り上げる香り豊かなジェラートは、札幌市南区の『GELATERIA torinosu(ジェラテェリア トリノス)』のほか、キッチンカー『torinosu gelato(トリノス ジェラート)』で販売しています。おいしさの秘密は、口に入れた瞬間に広がる香りや、濃厚でなめらかでありながらも軽やかな口溶け、そして余韻として残る香りまでを計算し尽くした設計のようなレシピにあります。ジェラートは、溶けていくわずかな時間の中で、素材本来の魅力を豊かに伝えるスイーツ。そんな鳥羽さんのジェラートは、イタリアで開催された世界最大級のコンクール「SIGEP(シジェップ)2024」の課題部門で世界4位受賞に続き、今年の「SIGEP 2026」ソルベ部門で世界6位を獲得。本場イタリアでも高く評価された味わいが、2026年7月1日(水)~6日(月)に大丸札幌店 7階催事場で開催される『夏のアイス&スイーツフェア』に登場します。貴重な機会を、ぜひお見逃しなく! 

取材者:大丸札幌店 藤尾智美

PROFILE

鳥羽 直樹 とば なおき

GELATERIA torinosu 代表取締役・ジェラティエーレ

札幌市出身、41歳。2006年に光塩学園調理製菓専門学校を卒業後、中華料理店やコーヒー専門店で経験を積み、『musica hall café』の初代イタリアンシェフを務める。家業である「ライフサービス鳥羽」を継承し、2020年にジェラート事業をスタート。2021年にはキッチンカー『torinosu gelato』を開始し、2023年には札幌市南区にジェラートとコーヒーを提供する『GELATERIA torinosu』をオープン。日本ジェラート協会認定ジェラートマエストロ。

はかなく溶ける限られた時間で
素材の魅力を表現する氷菓

口に入れた瞬間、ふわっと広がるミルクの香りと、チョコレートのパリッとした食感。体温で軽やかに溶けたチョコレートがミルクと混ざり合い、まるでミルクチョコレートのような味わいへと変化する、チョコチップジェラートの「ストラッチャテッラ」。ねっとり芳醇なマンゴーの甘さを、パイナップルの爽やかな酸味とベルガモットの香りが引き立てる「トロピカーレ」。濃厚なチョコレートにベルガモットの華やかな香りを重ね、コアントローの余韻が広がる「パルテンザ」。シチリア産ピスタチオの力強くて香ばしい風味が驚きを生む「ピスタチオ」。

GELATERIA torinosu(ジェラテリア トリノス)のジェラティエーレ、鳥羽直樹さんが作るジェラートは、ひとくち目の驚きから口溶け、そして余韻までを楽しめる、“香り”を味わうスイーツです。

取材当日に作っていた「ストラッチャテッラ」は、イタリアジェラート協会主催の国際コンテスト「SIGEP 2024」で世界第4位を受賞した逸品。『ストラッチャテッラ(チョコチップ)』という課題にとことん向き合い、おいしいミルクジェラートとチョコレートの理想的な関係を追求する中で生まれたレシピだといいます。

「ストラッチャテッラ」をつくる鳥羽さん。イタリア語で「切り裂く」を意味する言葉stracciare(ストラッチャーレ)の語源どおり、ミルクジェラートに溶かしたチョコレートを流し込み、冷えて固まったチョコレートを切り裂くように砕きながら混ぜ込む作業を繰り返して作るチョコチップジェラートです。作り手しか味わえないという空気をたっぷり含んだ出来たてを試食させていただくと、口の中で膨らむように錯覚するほどふわっふわでした。

「数種類のチョコレートに加え、ギーやカカオバターなどを配合し、人の口の中の体温である約37℃で溶けるよう調整しています。パリッとしたチョコレートの食感を残しながら、先にミルクジェラートが溶け始め、その後を追いかけるようにチョコレートが溶けていく。最後には口の中で一体となり、もう一つのジェラートが完成するような味わいを目指しました」

風味を生み出す素材、ベースとなるミルク、そして甘みを添える砂糖と、ジェラートはシンプルな材料で作られます。しかし鳥羽さんが語るのは、「おいしい!」の裏に隠されている、分子レベルで設計する口溶けや、食べた瞬間から余韻として鼻へ抜ける香りまでを計算し尽くす味わいの構造について。

氷菓が体温で溶けていく限られた時間の中で、素材の魅力をどう表現するか。そのために、例えばグラニュー糖やブドウ糖、水飴、果糖、イヌリン、マルトデキストリンなど、多様な糖類を使い分けるといいます。

右がSIGEP 2026のソルベ部門にて世界6位を受賞したレシピで作る「トロピカーレ」(黄色)。左がSIGEP 2024の課題部門にて世界4位を受賞した「ストラッチャテッラ」と「苺」のダブル。プラス50円で鳥さんクッキーをトッピングできます。

料理の道から建築の資格取得まで
異色のキャリアで自分の店を実現

料理の世界へ一歩踏み出した専門学校では、若さゆえの勢いと甘さから学校の実習先に「札幌で一番厳しいところ」を希望。「保証はできないぞ」と、先生に送り出された厨房で経験したのは、厳しい料理人の世界でした。

「『なにかやることありますか?じゃなくて、教えていただけることはありませんか?だろう!』と怒られて。今では話せないことばかりの体験でしたが、厳しい物言いをする先輩たちが料理する姿はかっこよく見えて、『自分もあのフィールドに立ちたい』と思うようになりました」

卒業後は中華料理店やコーヒー専門店で経験を積み、職場での出会いをきっかけに、ライブカフェバー「musica hall café」の初代イタリアンシェフを務めることに。さまざまなジャンルの食に触れながら自分の道を模索していた鳥羽さんにとってのひとつの転機は、結婚を機に“自分で”自宅を建てることでした。

「僕は昔から、人間にできることなら自分にもできるだろうと考えてしまうタイプ。自分で建てたらお金もかからないだろうと考えて、いったん料理の仕事を辞めました」

建築士の資格は取得まで時間がかかるためリフォームを選択。必要な資格を次々と取得して自宅のリフォームを進めながら、電気工事や水道工事の手伝い、大工仕事、エアコン設置まで、さまざまな仕事を請け負って収入を得たそうです。さらにタンクローリーの運転免許や危険物取扱者の資格を取得して、家業である灯油販売の仕事も継承。

「料理とはまったく違うジャンルで働いた知識が、接客をする今の仕事に生きています。この店も、イメージ通りに自分で作ることができましたしね」

一見すると異色にも思えるキャリアのすべてが、現在の「GELATERIA torinosu」につながっています。

ジェラートは科学の世界
おいしさの裏側にある理由

「ジェラートの道に進んだ大きなきっかけがあったわけではありません。でも、『ジェラートマシンのフェラーリ』とも称される、イタリア・Carpigiani(カルピジャーニ)社製の中古ジェラートマシンと牛乳の殺菌機が手に入ったんです」

状態の良いマシンを手に入れて試作を重ねるうちに、料理の知識だけでは思うようにいかないジェラートづくりの奥深さに魅了されていったという鳥羽さん。しかし、試作を重ねても明確なゴールは見えません。「おいしさはお客さまに判断してもらおう」との思いから、キッチンカーでジェラートをだすようになったのが2021年のこと。

そんな鳥羽さんに衝撃をもたらしたのは、所属していた日本ジェラート協会が主催した、日本を代表するジェラートマエストロ、石川県能登町出身のジェラート職人・柴野大造さんの講習会でした。

「自分は『ジェラートを甘く見ていた』と思いましたね。食べておいしければよいと思っていましたが、おいしさにはきちんと科学的な根拠があり、すべてに構造的な理由があると学びました」

店頭に並ぶジェラートは、ジェラートを入れたポットに蓋をして保管するポゼッティ方式を使用。品質を保持するために、空気や光を遮断しています。イタリアのジェラート愛好家の中では、工業製ジェラートや職人製ジェラートという大きく2つの概念があり、作り方や保管方法にも違いがあるのだとか。

『なんですぐに溶け始めるのだろう?』『チョコが固い』『どうしてイチゴがシャクシャクするのか?』。ジェラートを作りながら感じていた数々の疑問に、構造的な問題があったと納得したそうです。

鳥羽さんはレシピを根本から見直します。糖度13度のイチゴには、ブドウ糖や果糖、ショ糖がそれぞれどの程度含まれているのかといった、成分の分析からスタートし、レシピを徹底的に再構築。さらに、ジェラートの味わいを決定づける質のよい素材を探し求めて生産者との対話を重ねながら、「素材のどんな魅力を、どのように表現するのか」を考えるジェラートづくりへと進化させます。

素材を探し、理解し、設計する。その積み重ねの先に、「素材以上に素材らしい」とお客さまから声が上がる鳥羽さんが目指すジェラートが完成しました。

お気に入りのジェラートの“推しポイント”を、お客さま目線で教えてくれるのが、鳥羽さんと共に製造を担当する工場長の三垣亜巳さん。作り手自身が誰よりもそのジェラートのファンであるからこそ、「目指すのは、あなたの想像の一歩さき」というコンセプト通りの、驚きに満ちた味わいが生み出せるのかもしれません。

スタートラインに立つために
目指すのは世界一の称号

探究の成果は、本場イタリアでも認められています。

2024年には、イタリアジェラート協会主催の国際コンテスト「SIGEP 2024」の課題部門で世界第4位を受賞。さらに2026年には、「SIGEP 2026」ソルベ部門で世界第6位に輝きました。

そんな鳥羽さんが今、見据えているのは「世界一」。

「うちの店で提供しているジェラートやエスプレッソ、焼き菓子を通して伝えていきたいのは、イタリアの文化です。本場のイタリアンジェラートのおいしさを、日本の皆さんに知っていただきたい。そのためには、世界一という実績を得て、そのスタートラインに立ちたいと思っています」

「先日は兵庫県のジェラート店の方と一緒に、淡路島のレモン農家さんを訪ねました。レモンひとつとっても、香りを表現したいのか、力強い味を表現したいのかで選ぶレモンは変わります。おいしい素材は僕たちの財産。だからこそ、同業の仲間同士でおいしい素材を教え合う信頼関係を築けていることが本当にありがたいです」

2026年7月1日(水)〜6日(月)に大丸札幌店 7階催事場で開催される『夏のアイス&スイーツフェア』には、イタリアのコンテストで受賞したレシピのジェラートも登場予定。

おすすめは、爽やかな果実系とミルクやチョコレート、ナッツ系を組み合わせて楽しめるダブルやトリプルでの味わい方。異なる香りや味わいを組み合わせることで、ジェラートの味わいがより豊かに感じられるはずです。

口に含んだ瞬間に広がる華やかな香り。軽やかに溶けながら移り変わる味わい。そしてふくよかな余韻を楽しむ初夏の氷菓を、ぜひ会場でご体験ください。

※本記事の情報は、2026年5月のものです。

​GELATERIA torinosu
住所:〒005-0842 北海道札幌市南区石山2条2丁目7-33
TEL:011-600-1704
営業時間:11:00〜18:00
定休日:木曜日

Events

夏のアイス&スイーツフェア

夏のアイス&スイーツフェア

開催日時:2026年7月1日(水)~6日(月)
場所:大丸札幌店 7階催事場

暑い夏ほど、その冷たさに恋をする。最初はアイスか、次はスイーツか。いやいやまずはアツアツからか。次々と食べたいをくり返す、夏ならではのおいしさの無限ループをお楽しみください。

more
企画取材:藤尾智美 / 制作:3KG / ライター:布施さおり / 写真:岡田昌紘
  1. 001
    菅野 裕隆 株式会社 菅野養蜂場
  2. 002
    藤井 信二 メムロピーナッツ株式会社
  3. 003
    岡崎 実央 アーティスト
  4. 004
    林家 きよ彦 落語家
  5. 005
    宮岸 蒼 札幌ファッションデザイン専門学校DOREME 学生
  6. 006
    澤田 怜那 北海道芸術デザイン専門学校 学生
  7. 007
    佐久間 穂菜美 おたる水族館 飼育員
  8. 008
    山田 真史 JAPAN AX PROJECT株式会社
  9. 009
    妹尾 大樹・萌子 ORITSURU
  10. 010
    小笠原 敏文 株式会社 五勝手屋本舗
  11. 011
    北山 カルルス イラストレーター
  12. 012
    高橋 秀寿 高橋工芸
  13. 013
    日名地 博花 Cado
  14. 014
    伊藤 沙菜 株式会社 Easy Peasy
  15. 015
    石川 朋佳 トヅキ合同会社
  16. 016
    佐藤 壮馬 美術家
  17. 017
    竹内 隆介 トピカ
  18. 018
    林田 直樹 Brift H SAPPORO
  19. 019
    中村 夏音 Kanonnohimo
  20. 020
    宮本 翼 PIZZERIA DEL CAPITANO
  21. 021
    安藝 元伸 安芸農園
  22. 022
    橘 結 アーティスト
  23. 023
    小林 啓太 株式会社パルコ
  24. 024
    伊勢 昇平 株式会社ブルーチーズドリーマー
  25. 025
    鈴木 聡 鈴木聡ヴァイオリン工房
  26. 026
    沼田 大資 株式会社フォーシーズンズ
  27. 027
    BOTAN 花屋
  28. 028
    竹花 利貴 日本清酒株式会社 杜氏
  29. 029
    今村 育子 札幌駅前通まちづくり株式会社
  30. 030
    荒川 雄生・桜 ボクツメ
  31. 031
    河野 理恵 Liaison
  32. 032
    中川 斐世利 株式会社京屋
  33. 033
    星野 恵 一般社団法人 相互支援団体かえりん
  34. 034
    山岡 千秋 こぶ志窯
  35. 035
    荒田 朝陽 アーティスト
  36. 036
    吉川 貫一 アーティスト
  37. 037
    長谷 有理子 長谷製菓株式会社
  38. 038
    マーク・ギャニオン GAGNON株式会社
  39. 039
    吉田 慎司 株式会社まちづくり山上
  40. 040
    鳥羽 直樹 GELATERIA torinosu