長谷 有理子 長谷製菓株式会社
摩周の天然水を使い、風土の恵みを映し出す。菓匠 碧生堂のお菓子
東北海道を旅した方は、どこかで「丹頂鶴の卵」というお菓子に出会ったことがあるのではないでしょうか。卵の黄身に見立てた白餡をカステラ生地でくるんだ卵のようなお菓子は、1960年に創業した長谷製菓の名物として今も愛され続けています。今回ご紹介する菓匠 碧生堂は、実は長谷製菓が2024年に始めた新ブランドです。60年以上に渡り菓子製造で培ってきた技術と土地の風土を新しい感性と視点で見つめ直したお菓子は、どれも製造工場がある弟子屈町の景色や自然を思わせるものばかり。これら菓匠 碧生堂のお菓子は、弟子屈町の工場敷地内にある「AOIDO FACTORY LABO」や道東でしか購入できませんが、皆さんに朗報です!5月27日(水)~6月1日(火)に開催される「あんこぱらだいす。」に、菓匠 碧生堂のお菓子がやってくることに!摩周の天然水で仕込んだあんこのお菓子が、札幌で買えるチャンスです。
取材者:大丸札幌店 千葉美奈子
長谷 有理子 はせ ゆりこ2>
長谷製菓株式会社 代表取締役社長
弟子屈町出身、43歳。高校卒業後、英語を学ぶためにアメリカ・ウィスコンシン州のRipon High Schoolへ留学。20歳で卒業後に帰国して家業を手伝い、23歳で再度アメリカへ渡る。Advanced Institute Computerにてグラフィックデザインを学び、現地の出版会社に勤務。26歳で帰国し長谷製菓へ入社。2020年~2024年に経営塾で学び、2022年、父親である先代から社長を引き継ぐ。2024年11月に、新ブランド菓匠碧生堂の旗艦店「AOIDO FACTORY LABO」、2025年4月本社の敷地に「AOIDO GARDEN」オープン。
摩周湖へ向かう道中に誕生した
和洋折衷スイーツの店
「丹頂鶴の卵」というお菓子に、どこかで出合ったことのある方も多いかもしれません。この銘菓を製造しているのは、弟子屈町に本社を構える長谷製菓。実は、今回ご紹介する菓匠 碧生堂(かしょう あおいどう)は、1960年創業の長谷製菓から生まれた新ブランド。このブランドを2024年に立ち上げたのは、2022年から3代目社長を務める長谷有理子さんです。
長谷さんにお会いするために、私たち取材スタッフが向かったのは、弟子屈町の本社敷地内にある「AOIDO FACTORY LABO」。釧路空港から弟子屈町へ向かう道中で、芽吹きを待つ畑で羽を休めるつがいのタンチョウが出迎えてくれました。
オープン直後の店内で目にしたのは、袋いっぱいのお菓子を抱えた地元のお客さま。その様子からも、地域に愛されていることが伝わってきます。
「AOIDO FACTORY LABOには、『丹頂鶴の卵』や『大鵬せんべい』といった長谷製菓の定番商品に加え、『十勝あずきと摩周の軟水AOIのつぶ餡』や『摩周の水 霧ノ餅』など、菓匠碧生堂の全商品が揃っています。一部のお菓子は、ここでしか購入できません。また『工場長のおやつ』コーナーでは、製造中に割れてしまったお菓子をアウトレット価格で販売しています」
碧生堂の世界観でコーディネートされた店内には、物販のほか、「あんコロネ」や「AOIのパイサンド」などを販売するテイクアウトコーナーも併設。店内のイートインスペースや、5月から10月にかけてオープンする、ショップ横の「AOIDO GARDEN」で楽しむことができます。
「AOIのつぶあん」をいただくと、十勝小豆の粒感を残した餡は、豆の香りがふわりと広がる奥行きのある味わい。甘さはすっきりとしていて、後味も軽やかです。
「十勝産の小豆を、摩周の天然水でひと晩かけて浸水し、丁寧に炊き上げています。あんこがおいしく炊き上がる硬度18.1mg/Lの軟水である摩周の天然水は、新ブランドでぜひ使いたい素材でした。長谷製菓のあんこは糖度70度ですが、碧生堂では糖度58度に抑え、素材の味をより感じられるようにしています」
お菓子の原材料には、摩周の天然水、 北海道産小麦のきたほなみ、根釧牛乳、十勝産の小豆など、商品によってさまざまな地元食材が使われています。白糠町にあるチーズ工房白糠酪恵舎のリコッタサラータ、温泉の地熱で栽培された弟子屈町産イチゴ「摩周ルビー」など、道東らしい食材を取り入れたスイーツも。
「大自然と共創する地域と菓子」というテーマを掲げる碧生堂ですが、誕生の背景には、私たちの記憶に新しいコロナ禍の出来事がありました。
社長就任も新ブランドも
きっかけは、コロナ禍
「姉と弟がいる3人きょうだいの真ん中です。長谷製菓は祖父が創業し、父親が2代目を継ぎましたが、3代目は決まっていませんでした」
転機となったのはコロナ禍。思うように仕事が出来ずに空いてしまった時間を活用して、長谷さんは経営塾に通い始めます。
「さまざまな経営者と出会い、大きな刺激を受けました。励まされることもあれば、自分もできるかなと勇気をもらうことも。最終的に、自分から『社長をやります』と手を挙げました」
その一方で、コロナ禍はお土産菓子を中心に生産を直撃します。
「他社ブランドの製造を委託で請け負うOEMの発注が止まって経営が苦しくなる中で、会社をなんとか支え、踏ん張ってくれたのは自社製品でした。地元の方々に支えられていることが、売上としてはっきり表れたんです」
長谷製菓は他社の商品の製造も請け負うOEMにも力を入れており、その商品は首都圏をはじめ北海道のさまざまな店に並んでいます。しかし、お客さまの判断で経営が左右されてしまう現実を実感したコロナ禍を経て、自社製品の比率を上げ、足元を固める必要性を強く実感したことが、新ブランド立ち上げへとつながりました。
1960年に祖父が創業した長谷製菓は、ピーナッツせんべいを詰めた一斗缶を持って地元の農家さんを回る行商なども行いながら看板商品を確立。そして現会長である2代目は、他社ブランドの菓子製造を請け負うOEM事業に挑戦します。
「最初の取引先は、品質管理を徹底している会社でした。工場づくりから監査まで丁寧に指導していただき、一緒に工場を育ててもらった感覚があります」
良質な原材料が手に入りやすい北海道・弟子屈町という立地も、大きな強みになりました。
「祖父が創業して看板商品をつくり、父がOEMによって会社の技術を確かなものにしてくれました。ですから私の代は、その技術を自分たちの手でお客さまへ直接売り出す番だと考えたんです。弟子屈町という場所にある価値を、お客さまにどう伝えるかという発想でブランドを形にしていきました」
それまでアウトレット品の店頭販売のみだった場を、お客さまをお迎えする店へ変化させることを描きながら新ブランドづくりが始まりました。
弟子屈の店舗限定スイーツが
期間限定で大丸札幌店に登場
「新ブランドを考える中で外部の方から教えていただいたのは、この土地の価値でした。弟子屈町で暮らしていると当たり前に感じてしまうことが魅力なのだと再認識し、もっと誇りを持っていいと思えるようになったんです」
碧生堂の文字には、摩周の山や湖、大地とともに生きてきた会社の歴史が込められています。また、AOIの文字の形に重なる三角、丸、四角は、あらゆる形の基本。組み合わせ次第で新しい形を生み出す姿勢は、新商品開発やOEM事業にも通じています。
「自分で立ち上げて初めて、祖父も父も新しいことに挑戦し続けていたのだと実感しました。その思いに尽きますね」
そして今、OEM事業は時代の流れを感じ取る重要な役割も担っています。
「ご依頼を通じて、世の中のトレンドが見えてきます。うちは少ない製造ロットから受注できるので、百貨店などのPOP-UPで販売する商品のご依頼をいただきます。フィナンシェや厚いチョコレートをはさんだラングドシャクッキーなどの似たご依頼が重なると、これからの流行が見えてくるんです」
商品が店頭に並ぶ前に、お菓子のトレンドをキャッチできることはOEMの大きな強み。手掛けた新商品の裏面ラベルの製造者を見て問合せが舞い込むこともあるのだとか。先代、先々代が培ってきた技術が流行を感じ取るアンテナとなり、長谷さんの挑戦を支えています。
「これからは地域のつながりをより大切にしながら、機械でつくるお菓子でも人の温かみを感じられるような商品を届けていきたいと思います」
碧生堂は、「あんこぱらだいす。」に初出店。 普段は弟子屈町でしか味わえないあんこスイーツが、期間限定でお楽しみいただけます。ぜひこの夏は、摩周湖の旅とあわせて、「AOIDO FACTORY LABO」にもお立ち寄りください。
※本記事の情報は、2026年4月のものです。
AOIDO FACTORY LABO
住所:〒088-3201 北海道川上郡弟子屈町摩周2丁目3-1
TEL:015-482-5566
営業時間:10:00〜17:00
定休日:月曜日
HP:https://aoido.jp/(※別サイトに遷移します)







































