
妹尾 大樹・萌子 ORITSURU
自由な発想で驚きの体験を。 ふたりで答えを探し出す 究極のペアリング
2025年5月に大丸札幌店7階で開催される『Coffee Pairing Festival』に初出展してくださる『ORITSURU』さんは、季節の和菓子と日本茶、コーヒーが味わえるお店です。妹尾夫妻が提供しているのは、おいしい和菓子と飲み物だけではなく、そのペアリング=組み合わせを通した驚きの体験。百貨店の企画を考える仕事をしている私たちも、お客さまに喜んでいただくのはもちろん、新しい発見や体験をご提供し、まだ知らない北海道の良さを見つけ出すことを目指して日々仕事に取り組んでいます。この店でしかできない体験やアイデアはどのように生まれているのか教えていただくために、円山の店を訪ねました。
取材者:大丸札幌店 藤尾 智美
妹尾 大樹 せのお だいき2>
ORITSURU 代表
北海道苫小牧市出身。34歳。コーヒー、デザイン、写真、SNS発信を担当。家具インテリア用品の大手企業に勤務したのち、札幌の『MORIHICO.』でコーヒーについて学び、自宅で焙煎した豆のオンライン販売をスタート。夫婦で上京し業務用コーヒーマシンのメンテナンス業務を経験。Qアラビカグレーダー。
妹尾 萌子 せのお もえこ2>
ORITSURU 共同代表
北海道恵庭市出身。30歳。日本茶、菓子を担当。札幌の老舗ホテルに就職し、高級レストランで飲食店の基礎を学ぶ。札幌の『MORIHICO.』をはじめとした飲食店で経験を積んだのち、夫婦で上京し銀座『HIGASHIYA』で日本茶の基礎を学ぶ。

五感をフル回転させる
唯一無二のペアリング体験
メニューに並ぶのは、見るだけで味覚が刺激される文字。例えば、「5月のペアリングセット3種」は下記のとおり。味を想像するだけで、なんだかワクワクしてきませんか?
5月のペアリングセット3種
- 【和菓子】きんとん「雪蔵甘熟メークイン 二冬越×土佐天日塩×日本酒」と【日本茶】「釜炒り茶 さやまみどり(佐賀 嬉野)」
- 【和菓子】最中「バナナ×パッションフルーツ×木の芽」と【珈琲】Indonesia Pollung Seribu Raja Sumatra」もしくは「いり番茶(京都)」
- 【和菓子】大福「台湾パイナップル×大葉×ルイボスレッド」と【日本茶】「和烏龍茶 みなみさやか(宮崎 五ヶ瀬)
「きんとんから順番にお召し上がりください」とセットを出してくれたのは、和菓子づくりを担当している萌子さんです。

目にもかわいらしいきんとんを口に含むと、十勝の農家さんから直接仕入れたという、二冬熟成させたメークインの濃い甘みにびっくり!スイートポテトのような香りを追いかけるように、寒天に加えられた日本酒の香りが広がり、ふいに塩味が現れます。ほっこりしたやさしい味わいを包み込むのは釜炒り茶の香気。直前にバーナーで炙った最中種のパリパリした食感が楽しい最中は、バナナとパッションフルーツのとろけるように濃厚な甘みを、果物を思わせるコーヒーの香りが引き立てます。求肥で包んだ台湾パイナップルと大葉の華やかな香りの衝撃は、ルイボスレッドと和烏龍茶の発酵感が至福の余韻に変えてくれました。
試食させていただいた取材スタッフ全員が思わず声を上げるほど、驚きに満ちていたペアリング体験。
お店の入口に書かれていた「珈琲、日本茶、和菓子。自分の五感を研ぎ澄ませながら、それぞれの相性の良さを感じて味わう体験をお愉しみください」とのメッセージのとおり、『ORITSURU』の魅力は、おいしい飲み物とお菓子の先にある“新しい味と出合う体験”にありました。

イラストを描いてイメージを膨らませ
とことん吟味した組み合わせを提案
「実は、4年前に円山でコーヒーをメインにした店を出す準備をしていたのですが、コロナ禍で出店を見送って。知見を広げるために夫婦で上京し、3年間東京で生活しました」と大樹さんはふり返ります。
蓄えてきた知識を表現する場として、週に一日だけ間借り出店していた時の季節菓子と飲み物のメニューが、ペアリングセットの原型になりました。東京で手応えを得たおふたりは、ペアリング主体のカフェがない札幌で出店することに意義があると考えて、2023年8月に『ORITSURU』をオープン。4年越しの夢を叶えます。

「まずは使用する季節の食材から考えます。3種の和菓子の食材を決めたら、イラストを描きながら、月替わりの和菓子のイメージを膨らませるんです」と言いながら萌子さんが見せてくれたレシピノートには、かわいい和菓子のイラストがびっしりと描かれていました。
使う食材は徹底的に吟味。黒糖を合わせる際は沖縄の各島から取り寄せて、イメージに合うものを探します。ハッカを使うお菓子なら、道内のハッカを食べ比べ、和菓子に合うマイルドな香りの滝上町産を選ぶといった具合です。
「休みの日や閉店後に、食材や飲み物をカウンターにずらりと並べて試食会をし、意見が一致したものだけを採用します。飲み物も、抽出方法や濃さ、温度やエイジングなどの工夫を重ねて吟味するんです」と話す大樹さんは、大学生の頃からウイスキーのミニチュアボトルを飲み比べては好みの味を探していたのだとか。
香りのバランスを重視するために、素材選びから始まるという和菓子づくり。
「芸術作品のように凛とした和菓子の裏には、地道な作業が隠れているのですね」と大丸札幌店の藤尾は目を丸くします。

初出展となるイベントを
私たち自身も楽しみたい!
「コーヒーに洋菓子、日本茶に和菓子という文化的なスタンダードをミックスさせたら、自分たちの個性になると考えました」。ワインや日本酒と食べ物の相性を表現するだけでなく、自分たちなりに突き詰めて提案したいと大樹さんは力を込めます。
「正解ではなく、自分たちなりの提案」だからこそ、お客さまも自由な感想を伝えておいしさを共有することも『ORITSURU』らしい楽しみ方といえるでしょう。

「今後は、他店とコラボレーションしたり、大好きな茶園を訪ねたりしたいです。北海道でやっているからには、できるかぎり地元の食材を使いたい。まだ隠れている食材を見つけ出し、通年販売の商品も開発したいですね」。お店を開店してから1年以上が経ち、内から外へ目を向け始めたという『ORITSURU』さんは、うれしいことに大丸札幌店の『Coffee Pairing Festival』に初出展してくださいます!
「これまで提供してきた和菓子の中から、チョコレート羊羹や、バラとフランボワーズの最中など、コーヒーとの相性がよかった選りすぐりの和菓子を持っていきます」。なんと、萌子さんはペアリングのワークショップも開催してくださることに!五感を研ぎ澄ませて味わう和菓子とコーヒーのペアリングを、ぜひみなさんもご体験ください。

ORITSURU Instagram:https://www.instagram.com/oritsuru.sapporo/
※本記事の情報は、2025年4月のものです。