百花の人
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竹花たけはな 利貴としたか 日本清酒株式会社 杜氏

年越しの乾杯は福を招く札幌の地酒・千歳鶴で

百花POINT

冬の札幌中心部を流れる豊平川に架かる豊平橋。その橋をすすきの方面に向かって渡る際に、右手に大きく見える千歳鶴の大きな看板があります。国道36号線を行き来する市民にとっては、すっかり日常の風景となっている看板の下に、千歳鶴ブランドの地酒を造る札幌唯一の酒蔵、日本清酒株式会社があります。前身となる柴田酒造店が創成川のほとりで創業したのは1872年(明治5)。開拓使が置かれ、蝦夷地から北海道に改称された1869年(明治2)とほぼ同時期まで時代は遡ります。長寿を願う「千歳」に、「鶴は千年、亀は万年」の言葉を合わせ、長く愛される日本酒になってほしいとの願いを込めて名付けられた千歳鶴。その伝統を、2024年8月より7代目の杜氏として受け継いだのが竹花利貴さんです。大丸札幌店では2025年12月26日(金)〜30日(火)の期間、年越しを前にお客さまへの感謝の気持ちを込めて、館内で3万3,000円以上お買い上げのお客さまを対象に、各日先着100本限定で竹花さんが手がける「千歳鶴 純米吟醸 きたしずく」(720ml)をプレゼントいたします。札幌の地酒について話を聞きに、2023年に完成した日本清酒株式会社の新醸造棟を訪ねました。

取材者:大丸札幌店 村田大樹

PROFILE

竹花 利貴 たけはな としたか

日本清酒株式会社 製造本部千歳鶴製造部 杜氏

45歳。奈良県の酒蔵で蔵人として働いた後、和歌山県の酒蔵で蔵人を経て杜氏として日本酒造りに従事。2022年に日本清酒株式会社へ入社し、2024年8月に7代目杜氏就任。南部杜氏。

「千歳鶴 純米吟醸 きたしずく」

明治5年から歴史を紡ぐ
札幌唯一の酒蔵で杜氏を務める

「搾りたての日本酒を飲んでみますか?出来たては、まったく違う味わいですよ」。そう言いながら、約1カ月間発酵させた醪(もろみ)を搾ったばかりの原酒「千歳鶴純米吟風」の試飲をさせてくれたのは、日本清酒株式会社7代目杜氏の竹花利貴さんです。

搾りたての酒を口に含むと、わずかな微発泡とともに華やかな香りが鼻の奥まで広がりました。ところが、瓶詰めされた同じ商品を飲むと爽やかな香りは落ち着きを増し、心地よくまろやかな味わいへと変化していることがわかります。加水していないため、アルコール度数も17〜18度と高め。劇的ともいえる味の変化に、酒米と水、麹菌のみで醸す日本酒の奥深さと、変化する味わいまでを見据えて醸す杜氏の技を垣間見た気がしました。

日本清酒株式会社7代目杜氏 竹花利貴さん

日本清酒株式会社は、1872年(明治5)から続く札幌唯一の酒蔵です。統一銘柄の千歳鶴は、北海道新十津川町学園・吉野地区の酒米と豊平川の伏流水で仕込む、まさに北海道の大地の味わい。原料となる酒米には、新十津川町ピンネ酒米生産組合の契約農家で育てられた酒造好適米、吟風、彗星、きたしずくを用いています。

酒造りの命ともいえる仕込み水は、蔵の横を流れる豊平川の伏流水。河川の水が数百年をかけて岩盤層でろ過されながら、地中を流れるもうひとつの川ともいえる伏流水を、地下60mの仕込み水用井戸から汲み上げています。

2023年から稼働を開始した新蔵は、醸造アルコールを添加しない純米酒のみを製造する方針に転換。旧蔵では冬だけ仕込みを行う寒造りが行われていましたが、室温やタンクの温度を徹底管理する四季醸造によって、通年にわたって新酒が造れるようになりました。搾った酒は5日以内に瓶詰めし、熟成が進みにくいマイナス5度の冷蔵庫で保管すると同時に、フレッシュローテーションによって搾りたての味わいを提供していることが特徴です。

酒米を浸水させたり、器具を洗浄したり。仕込み水はもちろん、酒造りにとって水は大切な宝です。

「日本酒は、とりわけ水の影響が大きく出ます。味わいの違いから『灘の男酒、伏見の女酒』とも表現されますが、造り方だけでなく、原料となる水の硬度がまったく異なるんですね。そして、水が豊富でおいしい土地には飲料をはじめ多くの工場が集まる。私たちの酒蔵がある一帯に、国産ビール発祥の地や味噌・醤油の工場があるのは、やはりここに“あるべくしてある”と感じます」

千歳鶴の仕込み水は伏見の水に近い中軟水のため、口当たりがやわらかいお酒に仕上がるのだとか。「この水がなければ伝統的な千歳鶴は造れない」という強い思いから、新蔵建設の際にも地方移転を選択しなかったという千歳鶴の宝です。

人との縁に導かれるように
酒造りの道を歩んで約20年

「人との縁に引っ張られて、ここまで来た気がします」。そう語る竹花さんが、酒造りの道に入ったのは、20代の半ばのことでした。奈良県の酒蔵で働いていた叔父から、『賄いのご飯がおいしいから食べにおいで』と誘われ、手伝いに行ったことがきっかけです。奈良から和歌山へと、人手が足りない酒蔵を手伝いながら酒造りを学び、やがて杜氏を務めるまでに技術を磨いていきました。

「僕が酒造りを学んでいた頃の酒蔵は、夏場は農家、冬場に酒造りをする人で成り立っていました。僕は農家ではなかったので夏の仕事がなく、それなら自分の生活を変えるしかないと考えて。冬に働いてお金を貯めて、夏はなるべくお金を使わずに遊んで暮らそうと決めたんです」

徹底した衛生管理と温度管理がなされている無機質な新蔵の中で、唯一、杉板で造られている麹室。

バックパックの旅をしていた30代は、冬は酒造り、夏は大好きなタイを中心に、インドやラオス、ミャンマーなどを旅する日々。そんな生活をしながら、タイで偶然参加した展示会が、意外にも今に繋がる日本清酒株式会社の川村社長との出会いの場となりました。

自分から辞めると言わない辛抱強さ、型にはまらない考え方、そしてなによりフットワークの軽さ。そんな持ち味を生かしながら、竹花さんは令和の酒造りを模索しています。伝統を大切にしつつ、風習だけに縛られることなく本当に必要な作業かどうかを見直して環境改善にも取り組む姿に、蔵人の皆さんは「やさしい杜氏」と口を揃えます。

「『酒造りは、人づくり』『酒造りはマラソンだ』『蔵が変われば1年生』。若い頃に一緒に働いていた酒造り歴50年を超える大先輩たちは、お酒の席でよくこんな名言を口にしていました」。経験を重ねて杜氏となった今、大先輩の言葉が実感を伴って心に響いてくるそうです。

醪(もろみ)のタンクをかき混ぜる竹花さん。約1カ月間かけて発酵させる醪は、時間が経つごとに米の形がなくなり、ぷくぷくと発酵します。

店で日本酒を注文したら
千歳鶴が出てくる世界を目指して

「千歳鶴の杜氏として2年目を迎えた今、力を入れているのは人づくりです。そしてもうひとつは、賞を取ること。僕が理想とする酒は、食事と相性がよく、料理を邪魔しない食中酒。それが、日本酒に求められている姿だと思っているから」

千歳鶴の酒造りは、蔵人8人によるチーム戦です。蔵の中では多くの工程が手作業で行われており、酒が人の手で醸されていることを実感します。だからこそ竹花さんは、「酒造りは人づくり」という先人の言葉を胸に、経験の浅い蔵人の育成に力を注いでいます。

「日本酒造りの面白さと難しさは紙一重です。同じレシピで造っても、同じ酒は二度とできない。これが酒造りの面白さであり、難しさであり、頭を悩ませる部分でもあります」。

一秒一寸の狂いの重なりが味に影響する酒造りの世界。すべての工程は、想像以上に細かく管理されています。原料の酒米を10キロずつ洗う工程では、酒米の品種によって最適な浸水時間が異なるため、常にストップウォッチをチェックしながら秒単位で作業が進められていました。

「寒造りでタンクに貯蔵する旧蔵の製造方法では、タンクごとの味の個性を見ながらブレンドし、味を平均化することができました。しかし、新蔵の四季醸造は、タンクで熟成させずに出来たてをそのまま瓶詰めするため、一切調整が出来ません。かっこよく言えば“腕が試される”蔵なんです」

「大丸札幌店で配布する〈千歳鶴 純米吟醸 きたしずく〉は、ラムネを感じさせる爽やかな香りが特徴。あまりお燗することはない吟醸酒ですが、お正月料理などの和食に合わせるならぬる燗にするのもよいと思います」と竹花さん。

札幌唯一の酒蔵として目指すのは、居酒屋に入って「お酒をください」と言えば、千歳鶴が出てくる未来。そんな竹花さんの思いを、私たち大丸札幌店も心から応援しています。

一年で、もっとも日本酒が似合う季節。年越しは、150年以上札幌の歴史を見守ってきた札幌の地酒・千歳鶴で乾杯してはいかがでしょうか?

※本記事の情報は、2025年11月のものです。

日本清酒株式会社の「千歳鶴 酒ミュージアム」は、大通公園に立つさっぽろテレビ塔から徒歩12分ほどの中心部にあります。日本酒や蔵元限定酒、ノンアルコールの酒粕ソフトクリームを販売。

千歳鶴 酒ミュージアム
所在地: 〒060-0053 札幌市中央区南3条東5丁目2番地
アクセス:札幌市営地下鉄 東西線「バスセンター前」駅9番出口より徒歩5分
営業時間:10:00~18:00(月末は棚卸のため17:00閉店)
休業日:年末・年始
TEL:011-221-7570
HP:https://nipponseishu.co.jp/chitosetsuru/museum/

Events

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開催日時:2025年12月26日(金)~31日(水) ※日本酒プレゼントは12月30日(火)まで

本年も大丸札幌店をご愛顧いただき誠にありがとうございました。今年も残りあと少し。1年の感謝を込めて「大丸松坂屋のクレジットカード」と「大丸・松坂屋アプリ」の両方をお持ちのW会員様に、年末のお買い物をおトクに楽しめるクーポンをプレゼントいたします!

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企画取材:村田大樹 / 制作:3KG / ライター:布施さおり / 写真:岡田昌紘