~二十四節気とともに綴る京都の食卓~

うつりかわる季節を楽しみ、旬を味わう、京都人の美意識と知恵。四季のある日本で、京都の人たちはひときわ季節を大切にしてきました。古くから季節の指標として用いられてきた「二十四節気」を軸として、名店の料理とともに、京都の暮らしにとけこむ食の風景を綴ります。

〜番外編~[

めぐる季節の喜び。

時節や行事に応じた器や調度品を出し、花を飾り、旬の食材を使った料理を楽しむ。
古くから京都の人たちは季節の移ろいをひときわ大切にしてきました。
写真は五節句のひとつである上巳(じょうし)の節句、桃の節句の食卓。
お雛様を飾り、ご馳走を囲んだ思い出はいつまでも心に刻まれます。

2023/02/24

次代へとつなぎたい
豊かな食と心。

千年の都として栄えた京都では、公家や武家、寺社と関わる行事や習わしが、日常の中に数多く息づいています。そして、夏越の祓といえば水無月、祇園祭といえば鱧というように、行事と切り離せない京都特有の食文化が様々にあり、そこには無病息災や家内安全といった願いがこめられています。ご馳走とは、準備のために走り回るという意の語源をもつように、ただ豪華な食事ではなく、人を思いやり、手間や工夫を凝らす心があってのもの。京都人の暮らしにとけこむ折々の行事や食には、季節や地域、人と人をつなぎ、折々の出合いを大切にした豊かな心があります。

季めくり季の味■地階 京の銘店そう菜売場

〈京都𠮷兆〉
〈京都𠮷兆〉
 
 
 

季節の出合いもんを
上品なだしで満喫。

だしを制すれば料理を制すると言われるほど、だしは和食にとって大切な要。下鴨茶寮では、料亭ならではの上品なだしを堪能できる料理がバラエティー豊かにそろいます。季節の具材とだしがセットになった"料亭小鍋"も人気のシリーズです。蛤(はまぐり)や筍、菜の花といった春の味覚をはじめ、お揚げ、じゃがいも、ねぎ、白菜、しめじと具だくさん。豆乳の優しい風味のだしに、具材のうまみがとけこみ、最後のひと口まで満足できます。蛤と筍は、春の出合いもんのひとつ。蛤は良縁を招く縁起もの、ひな祭りのご馳走としてもおなじみです。

〈下鴨茶寮〉

蛤と筍の料亭小鍋(1人前)税込1,512円
●3月1日(水)から販売

〈京都𠮷兆〉
〈京都𠮷兆〉
 
 
 

シンプルな料理ほど、
その差がわかる名脇役。

質のよい調味料をそろえておくと、食べなれた料理もぐっと味わい深くなり、日々の食卓が豊かになります。京都?兆特製の「土佐酢」は鰹節、昆布、丸大豆醤油、本みりんに醸造酢を加えた、柔らかい酸味。酢のもの全般のほか、素揚げ野菜にかけたり、オリーブオイルと合わせて魚介をマリネにしたり、幅広く活用できます。「エキストラヴァージン オリーブオイル」は総料理長の徳岡邦夫がイタリアへ赴いてブレンドしたもので、種を抜いてから抽出する特別製法により、えぐみや苦味がなく、繊細な味わい。日本の食材と相性がよく、醤油や生姜、胡麻などと組み合わせ、新感覚の調味料として様々に楽しめます。写真の調理例は、帆立と菜の花の酢のものです。フライパンにオリーブオイルを敷いて帆立を焼いた後、同じフライパンにオリーブオイルを足し、菜の花に軽く塩をして、しんなりするまで焼きます。器に盛りつけ、土佐酢をかければ、できあがり。菜の花は茹でることが多いですが、焼くと茹でるよりも風味が濃厚に。素材の持ち味を生かしたシンプルにして味わい豊かな一品です。

〈京都?兆〉

土佐酢(195ml)税込1,080円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら
エキストラヴァージン オリーブオイル(92g)税込1,620円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら

〈天ぷら八坂圓堂〉

さっくり揚げた山海の幸を
宝石箱さながら贅沢に。

圓堂名物 とうもろこしや海老パンをはじめ、海老や白魚、鯛しそ巻き、さらには生麩、舞茸、アスパラガスなど、人気の天ぷら12種を食べやすいサイズでたっぷりと。天ぷらのコースを折詰にぎゅっと凝縮したかのような贅沢さです。下のごはんは、米の名店として知られる八代目儀兵衛が圓堂のために厳選した専用のお米を炊いたもの。海苔を敷き、"かえし"と呼ばれる丼つゆを添え、アクセントに爽やかな香りの実山椒を散らしているので、味の変化を楽しみながら堪能できます。ひな祭りのご馳走といえば、ちらし寿司が定番ですが、少し趣向を変えた天ちらしもいいですね。

〈天ぷら八坂圓堂〉

宝楽 天ちらし(1人前)税込3,564円
※季節により食材の一部を変更します。

〈いづう〉

ほのかに柚子が香る、
凛と美しい、いなり寿司。

京都の鯖寿司の代名詞として、全国にその名が知られる、いづう。240余年の伝統が磨きあげた鯖姿寿司とともに大丸京都店で出合える名品が、七代目当主によって考案された京いなり寿司です。お揚げはしっとりと薄く、中には椎茸、きくらげ、胡麻、柚子酢を混ぜた酢飯。三つ葉をきゅっと結んだ姿が美しく、柚子の香りがほのかに漂います。口に運べば、お揚げに含まれただしの風味、酢飯の柔らかな甘みや酸味、具材の食感や香りが見事に調和。それぞれが主張しすぎず、引き立てあい、細部まで完成度の高さを感じます。家庭で作られることも多い素朴なおいなりさんが、料理人の技によって、けっして真似のできない洗練された味わいに。通常は本店にもなく、年間を通して販売しているのは大丸京都店だけという特別な一品です。併設しているイートインコーナーでも召し上がれます。

〈いづう〉

京いなり寿司(5個入)税込1,350円

〈鳴海餅本店〉
〈鳴海餅本店〉
 
 
 

■地階 和そう菜・米飯・寿司売場
鯖おぼろを散らした、
丹後に伝わるハレのご馳走。

食卓がパッと華やぐ、ばらずし。丹後地方に伝わる、鯖のおぼろを使った郷土料理です。その昔、若狭湾でとれた鯖をはじめとする魚介は、行商人が鯖街道を丸一日歩いて京都に運びましたが、腐敗を防ぐために焼くか一塩して運んだため、鯖街道周辺では焼き鯖を用いた郷土料理が多くあります。丹後ばらずしはハレの日のご馳走として作られる押し寿司の一種で、"まつぶた"と呼ばれる浅い木箱に寿司飯を敷き、その上に、甘辛く炊いた鯖おぼろ、椎茸、錦糸玉子、かまぼこ、かんぴょう、紅生姜などを彩りよく散らします。地元・加悦町(現在は合併により与謝野町)のお米のおいしさを広めようと設立された京の加悦寿司では、与謝野町産米を100%使用。劣化を抑えるために保冷庫で玄米保存した、つきたてを炊きあげ、ごはん粒が立った、ふっくら艶やかなシャリに仕上げています。味の決め手となる鯖さぼろは、鯖を焼きほぐし、余計な水分を飛ばしながら丁寧に釜で炒っているため、風味が豊か。伝統と風土によって育まれた、次世代へとつないでゆきたい味です。

〈京の加悦寿司〉

丹後のばらずし 祭り(1折)税込980円

  • ※本記事の内容はホームページ掲載時の情報です。
  • ※季節のメニューなど、商品により販売期間が限られていますので、ご了承ください。
  • ※やむを得ない事情により、食材の一部を変更する場合、予告なく価格変更、販売終了する場合がございます。
  • ※写真はいずれも盛り付け例です。皿などの容器は商品に含まれません。

2022年

[2022/2/4~2/18]

都大路に春一番が吹き、梅の花がほころび始めます。厳しい余寒が続く中にも、新しい季節の兆しはそこかしこに。

[2022/2/19~3/4]

雪が雨に変わる頃の意で雨水。北山の雪解け水が鴨川をうるおし、三寒四温を繰り返しながら、少しずつ春めいてきます。

けいちつ

[2022/3/5~3/20]

春の陽光に誘われ、冬ごもりしていた虫たちが動きだす。鴨川沿いの柳は鮮やかに芽吹き、早咲きの桜が花を開きはじめます。

しゅんぶん

[2022/3/21~4/4]

沈丁花の香りが漂い、椿や木蓮、雪柳、桜…と次々に咲き、つばめが飛来しはじめ、いよいよ本格的な春の到来です。

せいめい

[2022/4/5~4/19]

清らかな陽光にみちて、生きとし生けるものすべてがいきいきと生命を謳歌する季節。京都の街は桜色に染まります。

こく

[2022/4/20~5/4]

百穀春雨と呼ばれる恵みの雨がしっとりと大地に降りそそぐ頃。藤や石楠花、杜若が見頃を迎え、街路樹は瑞々しい若緑色へ。

りっ

[2022/5/5~5/20]

爽やかな青空が広がり、青もみじが目に眩しく、風薫る五月。納涼床、川床が始まり、夏日となる日も次第に多くなります。

しょうまん

[2022/5/21~6/5]

草木や枝葉が生い茂り、梅の実がふくらむ頃。衣替えや建具替えをすると、町並みも夏らしい装いに。

ぼうしゅ

[2022/6/6~6/20]

梅雨入りを迎え、雨に濡れた色とりどりの紫陽花が美しい頃。各地の寺社で田植祭や竹伐り会式など豊作を願う神事が行われます。

[2022/6/21~7/6]

都大路をしとしとと雨が濡らす頃。神社では夏越祓の神事が行われ、鉾町にお囃子の音色が響きだし、京都の夏はいよいよ本番へ。

[2022/7/7~7/22]

コンチキチンの音色が響き、夏の暑さはいよいよ盛り。3年ぶりの山鉾巡行が待ち遠しく例年にも増して町が活気づきます。

[2022/7/23~8/6]

朝早くから蝉が大合唱し、空には大きな入道雲が立ちのぼり、京の油照りと言われる盆地特有の蒸し暑さが続きます。

[2022/8/7~8/22]

じっとりとした残暑が続く毎日。万灯会や灯篭流しが行われ、五山の送り火を終えると、京都の街はようやく秋の気配に。

[2022/8/23~9/7]

赤とんぼの姿、鈴虫の声。山々の緑は濃くなり、夏の入道雲と秋の鰯雲が混じり合う、行き合いの空が見られる頃です。

[2022/9/8~9/22]

朝晩は日ごとに涼しさが増し、草花が白い朝露をむすぶ頃。萩の花がしだれ咲き、夜空には美しい月が輝きます。

[2022/9/23~10/7]

暑さ寒さも彼岸まで。肌に心地いい秋風が金木犀の甘い香りを漂わせ、色鮮やかな彼岸花を揺らします。

[2022/10/8~10/22]

すすきの穂が黄金色に輝き、菊の花は色とりどりに。秋の日暮れは釣瓶落とし、そろそろ燗酒が恋しくなります。

[2022/10/23~11/6]

ひんやりと風が冷たく、朝晩は吐く息が白くなり始める頃。山野は晩秋の色を帯び、菊の花は見頃を迎えます。

[2022/11/7~11/21]

街のあちらこちらでお火焚きの煙が立ち昇る頃。山々や街路樹が次々と色づき、京都に美しい緋色が広がります。

[2022/11/22~12/6]

山茶花が花開き、鴨川にはユリカモメが飛来。しぐれるごとに寒さが増し、いよいよ本格的な冬の到来です。

[2022/12/7~12/21]

南座のまねき看板が上がると、京都の街は師走のにぎわいに。寺社では大根焚きや煤払い、終い縁日が行われます。

[2022/12/22~2023/1/5]

陰が極まり陽となる冬至。「ん」のつくもんで気を転じ、をけら詣りに除夜の鐘、歳神様をお迎えします。

[2023/1/6~1/19]

風花が静かに散らつき、寒椿が冬景色に彩りを添える頃。初釜式や十日ゑびすに向かう人波でまちが華やぎます。

[2023/1/20~2/3]

雪中四友と呼ばれる花々が咲き、寒さの底、来る春の兆し。初弘法、初天神、初不動、そして節分行事で寺社が賑わいます。

2021年

[2021/4/4~4/19]

清浄明潔を略して清明。清らかな陽光を受けて草木が芽生え、万物がいきいきと生命を謳歌し、都大路は桜色に染まります。

[2021/4/20~5/4]

穀物の種を蒔き、春雨に生育の願いを託す穀雨。八十八夜、茶摘みの季節が始まり、京都の街は桜色から瑞々しい緑色に。

[2021/5/5~5/20]

木々の緑がまぶしく、暦の上では夏。納涼床、川床が始まり、そして行列は中止ですが、五月といえば平安の時代から続く葵祭です。

[2021/5/21~6/4]

日差しが強くなり、木々の緑は深く。京都には〝家の作りようは夏を旨とすべし〟と涼の知恵が息づき、町家では6月1日に建具替えをします。

[2021/6/5~6/20]

芒(のぎ)はイネ科植物の突起のこと。麦を刈り取り、田植えをする時期です。京都のそこかしこで紫陽花が美しく、夕闇を舞う蛍が夏の風情を運びます。

[2021/6/21~7/6]

東山が雨にけむり、梅雨まっただ中。630日、京都各地の神社では夏越祓(なごしのはらえ)を行い、残る半年の無病息災を祈願します。

[2021/7/7~7/21]

疫病や災厄の退散を祈願して平安時代に始まったとされる祇園祭。おごそかに神事が行われ、京都の厳しい暑さは盛りを迎えます。

[2021/7/22~8/6]

三方を山に囲まれ、夏の暑さが厳しい京都盆地。鴨川の飛び石に子供たちの歓声が響き、堤防に草いきれが立ち込めます。

[2021/8/7~8/22]

盆地特有の残暑が続く日々。おしょらいさんをお迎えし、五山の送り火が終わると、ようやく秋の気配が漂いはじめます。

[2021/8/23~9/6]

ようやく暑さが少し和らぎ、虫の音も聞こえはじめる頃。8月下旬の京都では町内の路地で地蔵盆が繰り広げられます。

[2021/9/7~9/22]

草花に朝露が白く光り、虫の声が夕暮れをつつむ頃。京都の各所で秋の名月を愛でる風雅な祭事が行われます。

[2021/9/23~10/7]

ひんやりと頬をなでる風、どこからか漂ってくる金木犀の香り。秋分を境に日が短くなり、秋の夜長の始まりです。

[2021/10/8~10/22]

朝夕は肌寒く草木に露が降りる頃。天高く澄みわたり、遠く比叡山や愛宕山の姿も冴え、夜空には月がくっきりと輝きます。

[2021/10/23~11/6]

露は霜へと変わり、風は冷たく、いちだんと秋が深まる頃。秋の特別拝観や秋祭りで京都の街はにぎわいを増します。

[2021/11/7~11/21]

暦の上では冬が始まり、火の温もりが恋しくなる頃。京都は至るところで紅葉が広がり、美しい緋色に染まります。

[2021/11/22~12/6]

街に落葉が舞い、北山に初雪が舞い始める時期。南座に顔見世のまねきが上がると、いよいよ京都の町は師走の様相に。

[2021/12/7~12/21]

京都盆地に比叡おろしが吹き、大根焚きの湯気が上がり、パタパタと煤払いの音が聞こえると、正月準備を始める頃です。

[2021/12/22~2022/1/4]

一陽来復とも称される冬至。新年がよい年となるよう願い、しめ縄や松を飾り、鏡餅を供え、歳神さまを迎える準備をします。

[2022/1/5~1/19]

寒の入りといわれ、京都の底冷えが身にしみる時期。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも落ち着いてきます。

[2022/1/20~2/3]

二十四節気の締めくくり。一年の邪気を祓い、心新たに春を迎えるために、各地の寺社で節分行事が営まれます。

番外編

[〜番外編~]

祭礼や年中行事などの日をハレ(晴)、普段の日をケ(褻)とし、非日常と日常を使い分ける文化が京都の暮らしに息づいています。

[〜番外編~]

相性のいい旬の食材の組み合わせを出合いもんと言います。季節、食材、人と人、調和を尊ぶ京都らしい美意識がここに。