~二十四節気とともに綴る京都の食卓~

うつりかわる季節を楽しみ、旬を味わう、京都人の美意識と知恵。四季のある日本で、京都の人たちはひときわ季節を大切にしてきました。古くから季節の指標として用いられてきた「二十四節気」を軸として、名店の料理とともに、京都の暮らしにとけこむ食の風景を綴ります。

2022/12/7~12/21[

ゆく年くる年、
師走の風物詩。

事始め、煤払い、終い弘法…、師走に入ると、
年の終わりと始まりが様々に交差し、にぎにぎしく活気づく京都。
店頭にはこの時期特有の正月食材が並び、寒さが増すとともに、冬の旬食材のおいしさも増します。

2022/12/02

毎年12月13日は正月事始め。

昔の暦で12月13日は「鬼宿日」という吉日にあたり、新暦になってからも12月13日が正月準備にとりかかる「正月事始め」とされています。年神様を迎えるために一年間の汚れを払い清める「煤払い」が行われ、昔は「松迎え」といって、正月飾り用の松やおせち調理のための薪を山へ取りに行きました。京都の花街では芸舞妓が鏡餅を持って芸事の師匠やなじみのお茶屋にご挨拶に行く姿が、年の瀬の華やかな風物詩となっています。

季めくり季の味■地階 京の銘店そう菜売場

〈天ぷら八坂圓堂〉

海老芋=里の幸、
海老=海の幸の縁起もの。

京の伝統野菜のひとつ、えびいもは今が旬。そりかえった形と皮のしましま模様が海老のように見えることが、名前の由来だそうです。揚げるとホクホク、むっちりした粘りけと濃厚なうまみがたまりません。えびいもは種芋=親芋をもとに、親芋のまわりに子芋、子芋のまわりに孫芋ができ、親・子・孫...と増え続けていくので、子孫繁栄の象徴とも。長寿の象徴とされる海老とともに、おせち料理でもおなじみの縁起ものです。

〈天ぷら八坂圓堂〉

天ぷら各種(1個)
海老 税込259円
海老しそ巻き 税込270円
野菜かき揚げ 税込334円
えびいも 税込340円

〈下鴨茶寮〉

むっくりした海老芋と
ぷりっとした烏賊が調和。

えびいもは古くから京都を中心に作られ、京料理の食材として用いられてきたことから京芋(きょういも)という呼び名も。キメが細かく、しっとりなめらかな食感をもち、煮込んでも形がくずれにくいため、冬場の煮もの食材として欠かせません。京都では"えびいもと棒だらの炊いたん"が親しまれているように、魚介との相性がよく、こちらは烏賊(いか)のつみれとの炊き合わせです。ぷりっとした心地いい歯ごたえのつみれは、烏賊とともに鶏肉や人参、たけのこ、玉ねぎ、生姜などが混ぜ込んであり、様々なうまみが複雑にとけあう深みのある味わい。湯葉や紅葉麩、銀杏、海老なども添えた、彩り豊かでなんとも京都らしい一品です。

〈下鴨茶寮〉

海老芋と烏賊つみれの炊き合わせ(1人前)税込810円

〈京都𠮷兆〉
〈京都𠮷兆〉
 
 
 

うまだしで風味ひときわ、
冬の出合いもん、ぶり大根。

うまだしは鹿児島産の本枯かつお節、北海道産の羅臼昆布を使用し、丸大豆しょうゆ、本みりんで風味豊かに仕上げた、京都?兆特製の万能調味料。希釈して煮もの、鍋ものなどに使えるほか、そのままストレートで麺つゆ、天つゆにしたり、かけ醤油感覚で焼き野菜や魚介にかけたり。角のないまろやかな味なので、どんな食材にもよく合い、しっかり味が決まります。写真の調理例は、冬の出合いもん、ぶり大根。出合いもんとは、旬を同じくした海の幸と山の幸が互いを引き立て合う組み合わせのことです。寒さとともに、ぶりは脂がのり、大根は甘みが増し、どちらも今がおいしい時期。ぶりは霜降り(熱湯をかけて脂・血・ぬめりなどを落とすこと)をし、大根は下茹でしてから、うまだし、刻み生姜とともに鍋に入れ、味を見ながら水、醤油、みりん(または砂糖)を足して煮詰めます。器に盛り、柚子の千切りをのせれば完成。ふっくら柔らかいぶりの身と、うまみが中までしみた大根は、冬ならではの贅沢な味わいです。

〈京都?兆〉

うまだし(195ml)税込1,080円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら

〈笹屋伊織〉

■地階 和菓子売場
弘法さんの前後3日間だけ
販売される、どら焼。

1716年に創業して以来、神社仏閣や茶道家元の御用を務めて300余年の歴史をもつ、笹屋伊織。その代表銘菓として知られるのが、どら焼です。江戸時代末期に五代目当主が東寺の僧侶から、お寺で食べる菓子作りを依頼されたのが始まり。お寺でも作れるようにと、鉄板の代わりに銅鑼(どら)の上でも焼けるように考案したことから、どら焼と名付けられました。もちもちした薄皮でこし餡を幾重にも巻いてあり、輪切りにすると、その断面はまるで年輪のような美しさ。不殺生戒を守るお坊さんのために卵は使用せず、皮は小麦粉、砂糖、米飴、蜂蜜などを主原料にしています。もともとは東寺にだけ納めていましたが、いつしか評判が広まり、弘法さん(毎月21日に開かれる東寺の弘法市)に合わせて一般販売されるようになり、現在ではその前後を含む毎月20日・21日・22日にのみ販売しています。竹皮を外し、そのまま食べてもおいしいのはもちろん、電子レンジや蒸し器で温めたり、オーブントースターやフライパンで焼いたり、あるいは、ひんやり冷やしても美味です。12月21日は終い弘法、今年のどら焼も食べおさめですね。

〈笹屋伊織〉

どら焼(1棹)税込1,728円
●毎月20日・21日・22日限定販売

  • ※本記事の内容はホームページ掲載時の情報です。
  • ※季節のメニューなど、商品により販売期間が限られていますので、ご了承ください。
  • ※やむを得ない事情により、食材の一部を変更する場合、予告なく価格変更、販売終了する場合がございます。
  • ※写真はいずれも盛り付け例です。皿などの容器は商品に含まれません。

2022年

[2022/2/4~2/18]

都大路に春一番が吹き、梅の花がほころび始めます。厳しい余寒が続く中にも、新しい季節の兆しはそこかしこに。

[2022/2/19~3/4]

雪が雨に変わる頃の意で雨水。北山の雪解け水が鴨川をうるおし、三寒四温を繰り返しながら、少しずつ春めいてきます。

けいちつ

[2022/3/5~3/20]

春の陽光に誘われ、冬ごもりしていた虫たちが動きだす。鴨川沿いの柳は鮮やかに芽吹き、早咲きの桜が花を開きはじめます。

しゅんぶん

[2022/3/21~4/4]

沈丁花の香りが漂い、椿や木蓮、雪柳、桜…と次々に咲き、つばめが飛来しはじめ、いよいよ本格的な春の到来です。

せいめい

[2022/4/5~4/19]

清らかな陽光にみちて、生きとし生けるものすべてがいきいきと生命を謳歌する季節。京都の街は桜色に染まります。

こく

[2022/4/20~5/4]

百穀春雨と呼ばれる恵みの雨がしっとりと大地に降りそそぐ頃。藤や石楠花、杜若が見頃を迎え、街路樹は瑞々しい若緑色へ。

りっ

[2022/5/5~5/20]

爽やかな青空が広がり、青もみじが目に眩しく、風薫る五月。納涼床、川床が始まり、夏日となる日も次第に多くなります。

しょうまん

[2022/5/21~6/5]

草木や枝葉が生い茂り、梅の実がふくらむ頃。衣替えや建具替えをすると、町並みも夏らしい装いに。

ぼうしゅ

[2022/6/6~6/20]

梅雨入りを迎え、雨に濡れた色とりどりの紫陽花が美しい頃。各地の寺社で田植祭や竹伐り会式など豊作を願う神事が行われます。

[2022/6/21~7/6]

都大路をしとしとと雨が濡らす頃。神社では夏越祓の神事が行われ、鉾町にお囃子の音色が響きだし、京都の夏はいよいよ本番へ。

[2022/7/7~7/22]

コンチキチンの音色が響き、夏の暑さはいよいよ盛り。3年ぶりの山鉾巡行が待ち遠しく例年にも増して町が活気づきます。

[2022/7/23~8/6]

朝早くから蝉が大合唱し、空には大きな入道雲が立ちのぼり、京の油照りと言われる盆地特有の蒸し暑さが続きます。

[2022/8/7~8/22]

じっとりとした残暑が続く毎日。万灯会や灯篭流しが行われ、五山の送り火を終えると、京都の街はようやく秋の気配に。

[2022/8/23~9/7]

赤とんぼの姿、鈴虫の声。山々の緑は濃くなり、夏の入道雲と秋の鰯雲が混じり合う、行き合いの空が見られる頃です。

[2022/9/8~9/22]

朝晩は日ごとに涼しさが増し、草花が白い朝露をむすぶ頃。萩の花がしだれ咲き、夜空には美しい月が輝きます。

[2022/9/23~10/7]

暑さ寒さも彼岸まで。肌に心地いい秋風が金木犀の甘い香りを漂わせ、色鮮やかな彼岸花を揺らします。

[2022/10/8~10/22]

すすきの穂が黄金色に輝き、菊の花は色とりどりに。秋の日暮れは釣瓶落とし、そろそろ燗酒が恋しくなります。

[2022/10/23~11/6]

ひんやりと風が冷たく、朝晩は吐く息が白くなり始める頃。山野は晩秋の色を帯び、菊の花は見頃を迎えます。

[2022/11/7~11/21]

街のあちらこちらでお火焚きの煙が立ち昇る頃。山々や街路樹が次々と色づき、京都に美しい緋色が広がります。

[2022/11/22~12/6]

山茶花が花開き、鴨川にはユリカモメが飛来。しぐれるごとに寒さが増し、いよいよ本格的な冬の到来です。

[2022/12/7~12/21]

南座のまねき看板が上がると、京都の街は師走のにぎわいに。寺社では大根焚きや煤払い、終い縁日が行われます。

[2022/12/22~2023/1/5]

陰が極まり陽となる冬至。「ん」のつくもんで気を転じ、をけら詣りに除夜の鐘、歳神様をお迎えします。

[2023/1/6~1/19]

風花が静かに散らつき、寒椿が冬景色に彩りを添える頃。初釜式や十日ゑびすに向かう人波でまちが華やぎます。

[2023/1/20~2/3]

雪中四友と呼ばれる花々が咲き、寒さの底、来る春の兆し。初弘法、初天神、初不動、そして節分行事で寺社が賑わいます。

2021年

[2021/4/4~4/19]

清浄明潔を略して清明。清らかな陽光を受けて草木が芽生え、万物がいきいきと生命を謳歌し、都大路は桜色に染まります。

[2021/4/20~5/4]

穀物の種を蒔き、春雨に生育の願いを託す穀雨。八十八夜、茶摘みの季節が始まり、京都の街は桜色から瑞々しい緑色に。

[2021/5/5~5/20]

木々の緑がまぶしく、暦の上では夏。納涼床、川床が始まり、そして行列は中止ですが、五月といえば平安の時代から続く葵祭です。

[2021/5/21~6/4]

日差しが強くなり、木々の緑は深く。京都には〝家の作りようは夏を旨とすべし〟と涼の知恵が息づき、町家では6月1日に建具替えをします。

[2021/6/5~6/20]

芒(のぎ)はイネ科植物の突起のこと。麦を刈り取り、田植えをする時期です。京都のそこかしこで紫陽花が美しく、夕闇を舞う蛍が夏の風情を運びます。

[2021/6/21~7/6]

東山が雨にけむり、梅雨まっただ中。630日、京都各地の神社では夏越祓(なごしのはらえ)を行い、残る半年の無病息災を祈願します。

[2021/7/7~7/21]

疫病や災厄の退散を祈願して平安時代に始まったとされる祇園祭。おごそかに神事が行われ、京都の厳しい暑さは盛りを迎えます。

[2021/7/22~8/6]

三方を山に囲まれ、夏の暑さが厳しい京都盆地。鴨川の飛び石に子供たちの歓声が響き、堤防に草いきれが立ち込めます。

[2021/8/7~8/22]

盆地特有の残暑が続く日々。おしょらいさんをお迎えし、五山の送り火が終わると、ようやく秋の気配が漂いはじめます。

[2021/8/23~9/6]

ようやく暑さが少し和らぎ、虫の音も聞こえはじめる頃。8月下旬の京都では町内の路地で地蔵盆が繰り広げられます。

[2021/9/7~9/22]

草花に朝露が白く光り、虫の声が夕暮れをつつむ頃。京都の各所で秋の名月を愛でる風雅な祭事が行われます。

[2021/9/23~10/7]

ひんやりと頬をなでる風、どこからか漂ってくる金木犀の香り。秋分を境に日が短くなり、秋の夜長の始まりです。

[2021/10/8~10/22]

朝夕は肌寒く草木に露が降りる頃。天高く澄みわたり、遠く比叡山や愛宕山の姿も冴え、夜空には月がくっきりと輝きます。

[2021/10/23~11/6]

露は霜へと変わり、風は冷たく、いちだんと秋が深まる頃。秋の特別拝観や秋祭りで京都の街はにぎわいを増します。

[2021/11/7~11/21]

暦の上では冬が始まり、火の温もりが恋しくなる頃。京都は至るところで紅葉が広がり、美しい緋色に染まります。

[2021/11/22~12/6]

街に落葉が舞い、北山に初雪が舞い始める時期。南座に顔見世のまねきが上がると、いよいよ京都の町は師走の様相に。

[2021/12/7~12/21]

京都盆地に比叡おろしが吹き、大根焚きの湯気が上がり、パタパタと煤払いの音が聞こえると、正月準備を始める頃です。

[2021/12/22~2022/1/4]

一陽来復とも称される冬至。新年がよい年となるよう願い、しめ縄や松を飾り、鏡餅を供え、歳神さまを迎える準備をします。

[2022/1/5~1/19]

寒の入りといわれ、京都の底冷えが身にしみる時期。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも落ち着いてきます。

[2022/1/20~2/3]

二十四節気の締めくくり。一年の邪気を祓い、心新たに春を迎えるために、各地の寺社で節分行事が営まれます。

番外編

[〜番外編~]

祭礼や年中行事などの日をハレ(晴)、普段の日をケ(褻)とし、非日常と日常を使い分ける文化が京都の暮らしに息づいています。

[〜番外編~]

相性のいい旬の食材の組み合わせを出合いもんと言います。季節、食材、人と人、調和を尊ぶ京都らしい美意識がここに。