~二十四節気とともに綴る京都の食卓~

うつりかわる季節を楽しみ、旬を味わう、京都人の美意識と知恵。四季のある日本で、京都の人たちはひときわ季節を大切にしてきました。古くから季節の指標として用いられてきた「二十四節気」を軸として、名店の料理とともに、京都の暮らしにとけこむ食の風景を綴ります。

2021/9/7~9/22[

豊穣を祝う、
芋名月。

古くは月の満ち欠けを暦代わりに種まきや刈り入れを行っていた人々にとって、月は農耕の神でした。
9月21日(火)は中秋の名月、またの名を芋名月。秋の実りに感謝し、芋を供え、月見酒を酌み交わしましょう。

2021/09/10

お米より付き合いの長い里芋。

日本各地に稲作が広まったのは弥生時代ですが、一部の地域では縄文時代の晩期にすでに稲作が行われ、さらに遡って縄文中期には焼畑農業によって里芋などの根茎作物を栽培していたと考えられています。長い歴史をもち、稲作以前の主食だったという説もある里芋。中秋の名月に里芋を供える風習があるのは、大切な食べ物であったことを物語っているのかもしれません。縄文時代の人々も里芋を味わい、月を見上げていたのでしょうか。

季めくり季の味■地階 京の銘店そう菜売場

〈京都𠮷兆〉
〈京都𠮷兆〉
 
 
 

素朴な煮ころがしが
?兆のだしで風流な料理に。

だしは日本料理の命。「?兆のだし」は家庭料理でも手軽に"ほんまもん"のだしを味わっていただけるようにと開発した、鰹節と昆布のだしパックです。鰹節はカビ付けを繰り返しながらじっくり乾燥・熟成させた、コクの深い"本枯鰹節"を使用。昆布はうまみが強く濃厚なだしが取れる、天然の"羅臼昆布"を使用。原材料はこの2つのみで、余計なものは何も加えていません。写真の調理例は里芋の煮ころがし。だしに煮切りみりんと淡口醬油を加えて煮詰め、照りが出たら、あらかじめ蒸して皮をむいておいた里芋を入れてからめます。つやつやと美しく、表面には味がしっかりつき、中はほっくりと自然な味や食感を生かした調理法です。芋名月らしく、積み上げるように高く盛り、柚子の千切りをのせました。

〈京都?兆〉

?兆のだし(だしパック5袋入)税込1,080円

〈二傳〉

だしのうまみを
たっぷり含んだ、赤ずいき。

ずいきは漢字で"芋茎"と書き、里芋の葉柄(葉と茎のあいだ)の部分です。しゃきしゃきした歯ざわりとかすかな粘りけをもつ、京都人にはなじみ深い食材であり、芋名月のお供えに用いられることもあります。こちらは赤ずいきと鰻の東寺巻。たれ焼きした香ばしく脂のりのいい鰻とともに、赤ずいきを湯葉で巻き、八方だしで煮た上品で奥ゆかしい味わいです。東寺は湯葉の別名で、湯葉を使った料理を東寺揚げや東寺蒸しなどと呼びます。里芋や冬瓜などの炊き合わせとともにどうぞ。

〈二傳〉

惣菜など各種
[2種]税込1,080円から
[3種]税込1,620円から
[4種]税込2,160円から
赤ずいきと鰻の東寺巻(1人前)税込540円相当
※2パック以上での販売のため、単品販売はしておりません。

〈天ぷら八坂圓堂〉

薄衣でさっくり揚げた、
風味豊かな秋の恵み。

さまざまに創意と趣向を凝らした天ぷらの数々。芋名月に向けたおすすめは、焼きいもの天ぷらです。通常は生のさつま芋を揚げますが、こちらは文字どおり、焼いたさつま芋を揚げたもの。パリッと香ばしくほろ苦い皮と、ねっとりと甘い実の部分が一体となった、ちょっとした驚きのある味わいです。奥に見えるま〜るいお月様みたいな天ぷらは、だし巻きに海苔を巻いたもの。お団子みたいに3つ並んで刺してあるのは、新銀杏です。おなじみ海老の天ぷらも、プレーンなもの、しそで巻いたもの、どちらも美味!

〈天ぷら八坂圓堂〉

天ぷら各種(1個)
焼きいも 税込200円
だし巻き 税込180円
海老しそ巻き、海老 各税込160円
新銀杏 税込120円

〈下鴨茶寮〉

つるり、とろ~り、
口の中でとろける幸せ。

まんまる満月のような茶わん蒸し。上にはふっくら香ばしく焼いた本しめじ、海老や花麩を彩りよく。中には穴子、百合根、銀杏がかくれんぼ。シンプルな料理ですが、だしと卵の割合、蒸す火加減や時間が見事に一致してこそ、つるりと美しくなめらかに仕上がり、ぷるぷると柔らかい食感が生まれます。とろ~り、だしの風味が豊かなあんをかけました。

〈下鴨茶寮〉

焼本しめじ茶わん蒸し 税込648円

  • ※本記事の内容はホームページ掲載時の情報です。
  • ※季節のメニューなど、商品により販売期間が限られていますので、ご了承ください。
  • ※やむを得ない事情により、食材の一部を変更する場合、予告なく価格変更、販売終了する場合がございます。
  • ※写真はいずれも盛り付け例です。皿などの容器は商品に含まれません。

2022年

[2022/2/4~2/18]

都大路に春一番が吹き、梅の花がほころび始めます。厳しい余寒が続く中にも、新しい季節の兆しはそこかしこに。

[2022/2/19~3/4]

雪が雨に変わる頃の意で雨水。北山の雪解け水が鴨川をうるおし、三寒四温を繰り返しながら、少しずつ春めいてきます。

けいちつ

[2022/3/5~3/20]

春の陽光に誘われ、冬ごもりしていた虫たちが動きだす。鴨川沿いの柳は鮮やかに芽吹き、早咲きの桜が花を開きはじめます。

しゅんぶん

[2022/3/21~4/4]

沈丁花の香りが漂い、椿や木蓮、雪柳、桜…と次々に咲き、つばめが飛来しはじめ、いよいよ本格的な春の到来です。

せいめい

[2022/4/5~4/19]

清らかな陽光にみちて、生きとし生けるものすべてがいきいきと生命を謳歌する季節。京都の街は桜色に染まります。

こく

[2022/4/20~5/4]

百穀春雨と呼ばれる恵みの雨がしっとりと大地に降りそそぐ頃。藤や石楠花、杜若が見頃を迎え、街路樹は瑞々しい若緑色へ。

りっ

[2022/5/5~5/20]

爽やかな青空が広がり、青もみじが目に眩しく、風薫る五月。納涼床、川床が始まり、夏日となる日も次第に多くなります。

しょうまん

[2022/5/21~6/5]

草木や枝葉が生い茂り、梅の実がふくらむ頃。衣替えや建具替えをすると、町並みも夏らしい装いに。

ぼうしゅ

[2022/6/6~6/20]

梅雨入りを迎え、雨に濡れた色とりどりの紫陽花が美しい頃。各地の寺社で田植祭や竹伐り会式など豊作を願う神事が行われます。

[2022/6/21~7/6]

都大路をしとしとと雨が濡らす頃。神社では夏越祓の神事が行われ、鉾町にお囃子の音色が響きだし、京都の夏はいよいよ本番へ。

[2022/7/7~7/22]

コンチキチンの音色が響き、夏の暑さはいよいよ盛り。3年ぶりの山鉾巡行が待ち遠しく例年にも増して町が活気づきます。

[2022/7/23~8/6]

朝早くから蝉が大合唱し、空には大きな入道雲が立ちのぼり、京の油照りと言われる盆地特有の蒸し暑さが続きます。

[2022/8/7~8/22]

じっとりとした残暑が続く毎日。万灯会や灯篭流しが行われ、五山の送り火を終えると、京都の街はようやく秋の気配に。

[2022/8/23~9/7]

赤とんぼの姿、鈴虫の声。山々の緑は濃くなり、夏の入道雲と秋の鰯雲が混じり合う、行き合いの空が見られる頃です。

[2022/9/8~9/22]

朝晩は日ごとに涼しさが増し、草花が白い朝露をむすぶ頃。萩の花がしだれ咲き、夜空には美しい月が輝きます。

[2022/9/23~10/7]

暑さ寒さも彼岸まで。肌に心地いい秋風が金木犀の甘い香りを漂わせ、色鮮やかな彼岸花を揺らします。

[2022/10/8~10/22]

すすきの穂が黄金色に輝き、菊の花は色とりどりに。秋の日暮れは釣瓶落とし、そろそろ燗酒が恋しくなります。

[2022/10/23~11/6]

ひんやりと風が冷たく、朝晩は吐く息が白くなり始める頃。山野は晩秋の色を帯び、菊の花は見頃を迎えます。

[2022/11/7~11/21]

街のあちらこちらでお火焚きの煙が立ち昇る頃。山々や街路樹が次々と色づき、京都に美しい緋色が広がります。

[2022/11/22~12/6]

山茶花が花開き、鴨川にはユリカモメが飛来。しぐれるごとに寒さが増し、いよいよ本格的な冬の到来です。

[2022/12/7~12/21]

南座のまねき看板が上がると、京都の街は師走のにぎわいに。寺社では大根焚きや煤払い、終い縁日が行われます。

[2022/12/22~2023/1/5]

陰が極まり陽となる冬至。「ん」のつくもんで気を転じ、をけら詣りに除夜の鐘、歳神様をお迎えします。

[2023/1/6~1/19]

風花が静かに散らつき、寒椿が冬景色に彩りを添える頃。初釜式や十日ゑびすに向かう人波でまちが華やぎます。

[2023/1/20~2/3]

雪中四友と呼ばれる花々が咲き、寒さの底、来る春の兆し。初弘法、初天神、初不動、そして節分行事で寺社が賑わいます。

2021年

[2021/4/4~4/19]

清浄明潔を略して清明。清らかな陽光を受けて草木が芽生え、万物がいきいきと生命を謳歌し、都大路は桜色に染まります。

[2021/4/20~5/4]

穀物の種を蒔き、春雨に生育の願いを託す穀雨。八十八夜、茶摘みの季節が始まり、京都の街は桜色から瑞々しい緑色に。

[2021/5/5~5/20]

木々の緑がまぶしく、暦の上では夏。納涼床、川床が始まり、そして行列は中止ですが、五月といえば平安の時代から続く葵祭です。

[2021/5/21~6/4]

日差しが強くなり、木々の緑は深く。京都には〝家の作りようは夏を旨とすべし〟と涼の知恵が息づき、町家では6月1日に建具替えをします。

[2021/6/5~6/20]

芒(のぎ)はイネ科植物の突起のこと。麦を刈り取り、田植えをする時期です。京都のそこかしこで紫陽花が美しく、夕闇を舞う蛍が夏の風情を運びます。

[2021/6/21~7/6]

東山が雨にけむり、梅雨まっただ中。630日、京都各地の神社では夏越祓(なごしのはらえ)を行い、残る半年の無病息災を祈願します。

[2021/7/7~7/21]

疫病や災厄の退散を祈願して平安時代に始まったとされる祇園祭。おごそかに神事が行われ、京都の厳しい暑さは盛りを迎えます。

[2021/7/22~8/6]

三方を山に囲まれ、夏の暑さが厳しい京都盆地。鴨川の飛び石に子供たちの歓声が響き、堤防に草いきれが立ち込めます。

[2021/8/7~8/22]

盆地特有の残暑が続く日々。おしょらいさんをお迎えし、五山の送り火が終わると、ようやく秋の気配が漂いはじめます。

[2021/8/23~9/6]

ようやく暑さが少し和らぎ、虫の音も聞こえはじめる頃。8月下旬の京都では町内の路地で地蔵盆が繰り広げられます。

[2021/9/7~9/22]

草花に朝露が白く光り、虫の声が夕暮れをつつむ頃。京都の各所で秋の名月を愛でる風雅な祭事が行われます。

[2021/9/23~10/7]

ひんやりと頬をなでる風、どこからか漂ってくる金木犀の香り。秋分を境に日が短くなり、秋の夜長の始まりです。

[2021/10/8~10/22]

朝夕は肌寒く草木に露が降りる頃。天高く澄みわたり、遠く比叡山や愛宕山の姿も冴え、夜空には月がくっきりと輝きます。

[2021/10/23~11/6]

露は霜へと変わり、風は冷たく、いちだんと秋が深まる頃。秋の特別拝観や秋祭りで京都の街はにぎわいを増します。

[2021/11/7~11/21]

暦の上では冬が始まり、火の温もりが恋しくなる頃。京都は至るところで紅葉が広がり、美しい緋色に染まります。

[2021/11/22~12/6]

街に落葉が舞い、北山に初雪が舞い始める時期。南座に顔見世のまねきが上がると、いよいよ京都の町は師走の様相に。

[2021/12/7~12/21]

京都盆地に比叡おろしが吹き、大根焚きの湯気が上がり、パタパタと煤払いの音が聞こえると、正月準備を始める頃です。

[2021/12/22~2022/1/4]

一陽来復とも称される冬至。新年がよい年となるよう願い、しめ縄や松を飾り、鏡餅を供え、歳神さまを迎える準備をします。

[2022/1/5~1/19]

寒の入りといわれ、京都の底冷えが身にしみる時期。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも落ち着いてきます。

[2022/1/20~2/3]

二十四節気の締めくくり。一年の邪気を祓い、心新たに春を迎えるために、各地の寺社で節分行事が営まれます。

番外編

[〜番外編~]

祭礼や年中行事などの日をハレ(晴)、普段の日をケ(褻)とし、非日常と日常を使い分ける文化が京都の暮らしに息づいています。

[〜番外編~]

相性のいい旬の食材の組み合わせを出合いもんと言います。季節、食材、人と人、調和を尊ぶ京都らしい美意識がここに。