~二十四節気とともに綴る京都の食卓~

うつりかわる季節を楽しみ、旬を味わう、京都人の美意識と知恵。四季のある日本で、京都の人たちはひときわ季節を大切にしてきました。古くから季節の指標として用いられてきた「二十四節気」を軸として、名店の料理とともに、京都の暮らしにとけこむ食の風景を綴ります。

2023/1/20~2/3[

今年の恵方は
南南東。

恵方とは、その年の福徳を司る歳神様が御座する吉方位のこと。
関西では節分に恵方を向いて、太巻き寿司を丸かぶりする風習があります。
今年は2月3日(金)が節分です。恵方巻やいわしを味わい、おいしい笑顔で福招きを。

2023/01/20

一年の邪気を祓う節分。

節分とは季節の分かれ目のことであり、本来は立春、立夏、立秋、立冬それぞれの前日をさします。旧暦では立春が新年の始まりであり、その前日は一年を締めくくる特別な日だったので、立春の前だけを節分と言うようになりました。平安時代の宮中では、新年を前に邪気を祓い清め、無病息災を願う、古代中国から伝来した追儺(ついな)という行事が行われ、やがて民間にも、豆まきして鬼を追い払う行事が定着していきました。

季めくり季の味■地階 京の銘店そう菜売場

〈下鴨茶寮〉
〈下鴨茶寮〉
〈下鴨茶寮〉
 
 
 

ひと技凝らした節分の定番、
太巻き寿司といわし。

節分といえば、太巻き寿司の丸かぶり。料亭らしい技とひと手間を感じる一本で、"口福"を招き、運気アップを願いましょう。写真1枚目・2枚目の右側は、鯛の昆布じめと柚子をはじめ、鰻の蒲焼き、海老煮、卵、かんぴょうなどを巻いた、毎年恒例の人気商品。左側は、生姜風味の牛しぐれ煮や人参、三つ葉を湯葉と卵で巻いた、今年の新商品。いずれも様々な具材の香りや食感が見事にとけあい、なんとも贅沢な味わいです。節分といえば、いわしの塩焼きを食べ、その頭をひいらぎの枝に刺して門口に立てる風習もあります。写真3枚目は、いわしを小骨まで柔らかく甘露煮にし、かつお節をたっぷりとまぶした土佐煮。ごはんにもお酒にもよく合い、節分ならずとも味わいたい人気の定番です。

〈下鴨茶寮〉

鯛と柚子の丸かぶり寿司(1本)《限定数70》税込2,376円
牛しぐれと湯葉の丸かぶり寿司(1本)《限定数10》税込2,484円
●いずれも2月3日(金)のみ販売
●ご予約も承ります
いわし土佐煮(100g)税込486円

〈天ぷら八坂圓堂〉

小さな口でもがぶりと、
海老天入りの細巻き。

節分に恵方を向いて、巻き寿司を無言で丸かぶりする縁起担ぎ。縁を切らないよう、福が途切れないようにという意味を込め、包丁で切らずに丸ごと一本を無言で食べるのが習わしとされています。こちらは、小さな口でも食べやすく、食べきりやすいサイズの天むす風の細巻きです。"かえし"と呼ばれる丼ものなどに使うつゆで味つけしたごはんと炙り海苔で、ぷりぷりの海老の天ぷらと大葉を巻いています。紅白の紐を結んだ、見映えも華やかな3本組。

〈天ぷら八坂圓堂〉

恵方天巻き(3本)《数量限定》税込1,296円
●2月2日(木)・3日(金)販売
●ご予約も承ります

〈京都𠮷兆〉
〈京都𠮷兆〉
 
 
 

柚子が香る醤油もろみで、
ひと味ちがう節分いわし。

京都?兆の「柚子もろみ」は大豆や大麦を発酵させた醤油もろみに柚子皮を加えた柚子味噌です。粒々感が残った、とろりと濃厚な風味に柚子が香り、料理に少量添えるだけで奥行きある味わいに。寒い季節には湯豆腐や温野菜、暖かい季節には冷奴や生野菜をはじめ、魚介や肉にもよく合います。写真2枚目は「柚子もろみ」がよく合う、いわしの調理例。カリッとした食感の米菓 柿の種を衣にしたユニークな揚げものです。柿の種はビニール袋に入れ、麺棒などで叩いて砕いておきます。通常のフライをつくる要領で、いわしの下処理をしたあと、小麦粉、溶き卵をつけ、パン粉の代わりに砕いた柿の種をまぶして揚げれば、できあがり。ざくざくとしたピリ辛い衣に「柚子もろみ」が実に相性よく、野性味ある見た目には鬼も驚きそうですね。

〈京都?兆〉

柚子もろみ(120g)税込864円

〈鶴屋?信〉
〈鶴屋?信〉
 
 
 

■地階 和菓子売場
福を呼びこむ
黄金色の縁起菓。

1904年に鶴屋?信の4代目当主が節分の豆まきの光景を見て創案したのがはじまり。以来120年近くに渡って愛されている縁起菓、その名も「福ハ内」です。福を招く"お多福豆"になぞらえた、ふっくらコロンとした愛らしい形。卵の黄身をふんだんに使った黄金色の口どけのよい桃山生地に、備中白小豆と手亡豆を炊きあげた優しい甘みの白餡を包んでいます。枡(ます)の形を模した秋田杉の木箱に詰め合わせているのは"ますます繁盛"との縁起担ぎ。掛け紙には京都画壇で華々しく活躍した日本画家 山元春挙が描いたお多福豆の絵とともに、近代日本を代表する文人画家 富岡鉄斎による"よはひをます(長寿を授かる)ほどの美味"と讃えた一文があります。掛け紙や木箱の「福ハ内」の文字も鉄斎によるものです。鶴屋?信は1803年に創業し、「ヨキモノ」を探求し続けて今年で220年。「福ハ内」を創案した4代目も創意工夫の志を忘れず、100年ほど昔に洋菓子のレシピを多数書き残すなど、いつの時代にもその世界を広げる姿勢は貫かれています。

〈鶴屋?信〉

福ハ内(8個)税込2,376円
●2月3日(金)頃まで販売(なくなり次第終了)

  • ※本記事の内容はホームページ掲載時の情報です。
  • ※季節のメニューなど、商品により販売期間が限られていますので、ご了承ください。
  • ※やむを得ない事情により、食材の一部を変更する場合、予告なく価格変更、販売終了する場合がございます。
  • ※写真はいずれも盛り付け例です。皿などの容器は商品に含まれません。

2022年

[2022/2/4~2/18]

都大路に春一番が吹き、梅の花がほころび始めます。厳しい余寒が続く中にも、新しい季節の兆しはそこかしこに。

[2022/2/19~3/4]

雪が雨に変わる頃の意で雨水。北山の雪解け水が鴨川をうるおし、三寒四温を繰り返しながら、少しずつ春めいてきます。

けいちつ

[2022/3/5~3/20]

春の陽光に誘われ、冬ごもりしていた虫たちが動きだす。鴨川沿いの柳は鮮やかに芽吹き、早咲きの桜が花を開きはじめます。

しゅんぶん

[2022/3/21~4/4]

沈丁花の香りが漂い、椿や木蓮、雪柳、桜…と次々に咲き、つばめが飛来しはじめ、いよいよ本格的な春の到来です。

せいめい

[2022/4/5~4/19]

清らかな陽光にみちて、生きとし生けるものすべてがいきいきと生命を謳歌する季節。京都の街は桜色に染まります。

こく

[2022/4/20~5/4]

百穀春雨と呼ばれる恵みの雨がしっとりと大地に降りそそぐ頃。藤や石楠花、杜若が見頃を迎え、街路樹は瑞々しい若緑色へ。

りっ

[2022/5/5~5/20]

爽やかな青空が広がり、青もみじが目に眩しく、風薫る五月。納涼床、川床が始まり、夏日となる日も次第に多くなります。

しょうまん

[2022/5/21~6/5]

草木や枝葉が生い茂り、梅の実がふくらむ頃。衣替えや建具替えをすると、町並みも夏らしい装いに。

ぼうしゅ

[2022/6/6~6/20]

梅雨入りを迎え、雨に濡れた色とりどりの紫陽花が美しい頃。各地の寺社で田植祭や竹伐り会式など豊作を願う神事が行われます。

[2022/6/21~7/6]

都大路をしとしとと雨が濡らす頃。神社では夏越祓の神事が行われ、鉾町にお囃子の音色が響きだし、京都の夏はいよいよ本番へ。

[2022/7/7~7/22]

コンチキチンの音色が響き、夏の暑さはいよいよ盛り。3年ぶりの山鉾巡行が待ち遠しく例年にも増して町が活気づきます。

[2022/7/23~8/6]

朝早くから蝉が大合唱し、空には大きな入道雲が立ちのぼり、京の油照りと言われる盆地特有の蒸し暑さが続きます。

[2022/8/7~8/22]

じっとりとした残暑が続く毎日。万灯会や灯篭流しが行われ、五山の送り火を終えると、京都の街はようやく秋の気配に。

[2022/8/23~9/7]

赤とんぼの姿、鈴虫の声。山々の緑は濃くなり、夏の入道雲と秋の鰯雲が混じり合う、行き合いの空が見られる頃です。

[2022/9/8~9/22]

朝晩は日ごとに涼しさが増し、草花が白い朝露をむすぶ頃。萩の花がしだれ咲き、夜空には美しい月が輝きます。

[2022/9/23~10/7]

暑さ寒さも彼岸まで。肌に心地いい秋風が金木犀の甘い香りを漂わせ、色鮮やかな彼岸花を揺らします。

[2022/10/8~10/22]

すすきの穂が黄金色に輝き、菊の花は色とりどりに。秋の日暮れは釣瓶落とし、そろそろ燗酒が恋しくなります。

[2022/10/23~11/6]

ひんやりと風が冷たく、朝晩は吐く息が白くなり始める頃。山野は晩秋の色を帯び、菊の花は見頃を迎えます。

[2022/11/7~11/21]

街のあちらこちらでお火焚きの煙が立ち昇る頃。山々や街路樹が次々と色づき、京都に美しい緋色が広がります。

[2022/11/22~12/6]

山茶花が花開き、鴨川にはユリカモメが飛来。しぐれるごとに寒さが増し、いよいよ本格的な冬の到来です。

[2022/12/7~12/21]

南座のまねき看板が上がると、京都の街は師走のにぎわいに。寺社では大根焚きや煤払い、終い縁日が行われます。

[2022/12/22~2023/1/5]

陰が極まり陽となる冬至。「ん」のつくもんで気を転じ、をけら詣りに除夜の鐘、歳神様をお迎えします。

[2023/1/6~1/19]

風花が静かに散らつき、寒椿が冬景色に彩りを添える頃。初釜式や十日ゑびすに向かう人波でまちが華やぎます。

[2023/1/20~2/3]

雪中四友と呼ばれる花々が咲き、寒さの底、来る春の兆し。初弘法、初天神、初不動、そして節分行事で寺社が賑わいます。

2021年

[2021/4/4~4/19]

清浄明潔を略して清明。清らかな陽光を受けて草木が芽生え、万物がいきいきと生命を謳歌し、都大路は桜色に染まります。

[2021/4/20~5/4]

穀物の種を蒔き、春雨に生育の願いを託す穀雨。八十八夜、茶摘みの季節が始まり、京都の街は桜色から瑞々しい緑色に。

[2021/5/5~5/20]

木々の緑がまぶしく、暦の上では夏。納涼床、川床が始まり、そして行列は中止ですが、五月といえば平安の時代から続く葵祭です。

[2021/5/21~6/4]

日差しが強くなり、木々の緑は深く。京都には〝家の作りようは夏を旨とすべし〟と涼の知恵が息づき、町家では6月1日に建具替えをします。

[2021/6/5~6/20]

芒(のぎ)はイネ科植物の突起のこと。麦を刈り取り、田植えをする時期です。京都のそこかしこで紫陽花が美しく、夕闇を舞う蛍が夏の風情を運びます。

[2021/6/21~7/6]

東山が雨にけむり、梅雨まっただ中。630日、京都各地の神社では夏越祓(なごしのはらえ)を行い、残る半年の無病息災を祈願します。

[2021/7/7~7/21]

疫病や災厄の退散を祈願して平安時代に始まったとされる祇園祭。おごそかに神事が行われ、京都の厳しい暑さは盛りを迎えます。

[2021/7/22~8/6]

三方を山に囲まれ、夏の暑さが厳しい京都盆地。鴨川の飛び石に子供たちの歓声が響き、堤防に草いきれが立ち込めます。

[2021/8/7~8/22]

盆地特有の残暑が続く日々。おしょらいさんをお迎えし、五山の送り火が終わると、ようやく秋の気配が漂いはじめます。

[2021/8/23~9/6]

ようやく暑さが少し和らぎ、虫の音も聞こえはじめる頃。8月下旬の京都では町内の路地で地蔵盆が繰り広げられます。

[2021/9/7~9/22]

草花に朝露が白く光り、虫の声が夕暮れをつつむ頃。京都の各所で秋の名月を愛でる風雅な祭事が行われます。

[2021/9/23~10/7]

ひんやりと頬をなでる風、どこからか漂ってくる金木犀の香り。秋分を境に日が短くなり、秋の夜長の始まりです。

[2021/10/8~10/22]

朝夕は肌寒く草木に露が降りる頃。天高く澄みわたり、遠く比叡山や愛宕山の姿も冴え、夜空には月がくっきりと輝きます。

[2021/10/23~11/6]

露は霜へと変わり、風は冷たく、いちだんと秋が深まる頃。秋の特別拝観や秋祭りで京都の街はにぎわいを増します。

[2021/11/7~11/21]

暦の上では冬が始まり、火の温もりが恋しくなる頃。京都は至るところで紅葉が広がり、美しい緋色に染まります。

[2021/11/22~12/6]

街に落葉が舞い、北山に初雪が舞い始める時期。南座に顔見世のまねきが上がると、いよいよ京都の町は師走の様相に。

[2021/12/7~12/21]

京都盆地に比叡おろしが吹き、大根焚きの湯気が上がり、パタパタと煤払いの音が聞こえると、正月準備を始める頃です。

[2021/12/22~2022/1/4]

一陽来復とも称される冬至。新年がよい年となるよう願い、しめ縄や松を飾り、鏡餅を供え、歳神さまを迎える準備をします。

[2022/1/5~1/19]

寒の入りといわれ、京都の底冷えが身にしみる時期。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも落ち着いてきます。

[2022/1/20~2/3]

二十四節気の締めくくり。一年の邪気を祓い、心新たに春を迎えるために、各地の寺社で節分行事が営まれます。

番外編

[〜番外編~]

祭礼や年中行事などの日をハレ(晴)、普段の日をケ(褻)とし、非日常と日常を使い分ける文化が京都の暮らしに息づいています。

[〜番外編~]

相性のいい旬の食材の組み合わせを出合いもんと言います。季節、食材、人と人、調和を尊ぶ京都らしい美意識がここに。