~二十四節気とともに綴る京都の食卓~

うつりかわる季節を楽しみ、旬を味わう、京都人の美意識と知恵。四季のある日本で、京都の人たちはひときわ季節を大切にしてきました。古くから季節の指標として用いられてきた「二十四節気」を軸として、名店の料理とともに、京都の暮らしにとけこむ食の風景を綴ります。

2022/6/6~6/20[

夏の鱚は
絵に描いてでも
食え。

旬を迎えた鱚(きす)のおいしさ、旬の食材を称えることわざです。
魚介はもちろん、なすに青とう、おくら、みょうがといった夏野菜もいよいよ出番。
おいしい時期を逃さず、たっぷりと満喫しましょう。

2022/06/10

名画に描かれた
魚や野菜。

食材は東西の画家たちに数多く描かれ、身近なところでは京都 錦市場の青物問屋に生まれ育ち、江戸時代中期に活躍した絵師 伊藤若冲がいます。代表作「動植綵絵」の群魚図では鱚は登場しないものの、蛸、鯛、鰤、とらふぐ、鰯などが描かれ、近隣の魚屋や魚市場で入念に観察したのではないかと。晩年の「果蔬涅槃図」では約90種もの野菜や果物が描かれ、賀茂なすや山科なす、鹿ヶ谷かぼちゃといった京都の名産の数々も登場します。

季めくり季の味■地階 京の銘店そう菜売場

〈天ぷら八坂圓堂〉

さっくり衣をまとった、
ほろりと柔らかい鱚。

透き通るような涼しげな容姿をもち、見た目にふさわしい淡泊で繊細な味わいの鱚(きす)は、6~7月が旬の盛りです。脂がのりながらもクセがなく、ふっくら柔らかい身は、天ぷらに合う魚の代表格。圓堂では"サラダ油の王様"と称される良質の綿実油で、さっくりと揚げています。京都の伝統野菜 伏見とうがらし、圓堂名物 とうもろこしの天ぷらとともに、夏の味覚をお楽しみください。

〈天ぷら八坂圓堂〉

天ぷら各種(1個)
伏見とうがらし 税込140円
とうもろこし 税込194円
きす 税込421円

〈二傳〉

見事に味噌が調和した
夏の口福、賀茂なす田楽。

賀茂なすは油と相性がよく、揚げると香りとうまみが引き立つとともに、緻密な果肉は油を吸い過ぎないので身くずれせず、ほどよい歯ごたえとトロトロ感に。田楽味噌は二傳の主人が自ら腕をふるう秘伝の味。白味噌に酒や味醂などを加え、じっくり煮詰めたもので、やさしく深みのある甘みとコク、なめらかな舌ざわりが、賀茂なすと渾然一体となって、えも言われぬ味わいです。素揚げした賀茂なすに田楽味噌をのせ、表面にサッと焼き目をつけて仕上げています。

〈二傳〉

惣菜など各種
[2種]税込1,080円から
[3種]税込1,620円から
[4種]税込2,160円から
賀茂なすの田楽(1人前)税込810円相当
※2パック以上での販売のため、単品販売はしておりません。
※賀茂なすの田楽を含めると、[2種]税込1,350円から [3種]税込1,890円から [4種]税込2,430円から となります。

〈京都𠮷兆〉
〈京都𠮷兆〉
 
 
 

旬の夏野菜とも好相性の
シンプルで奥深い味わい。

麺、だし、薬味のひとつひとつにこだわり抜いた自信作「にゅうめん」。麺は国産小麦を使用し、麺帯を何十層にも重ねる製法によって、もっちりとコシのある食感。濃縮だしは鹿児島産の天然荒節と北海道産の昆布から抽出した深い味わい。薬味には鹿児島産の鰹節、瀬戸内産の海苔、京都?兆特製ブレンドのごま七味を添えています。器に麺を入れてお湯を注ぎ、濃縮だしをかけるだけで簡単にできあがり、そのままシンプルに熱々を味わうのはもちろん、アレンジを加えても美味です。写真の調理例は、ひんやり冷やして味わう、夏野菜添え。器に「にゅうめん」の麺と熱湯400ccを入れ、ラップをかけてレンジ(500W)で1分。流水で洗い、氷水で麺をしめてから、焼きなす、湯がいて刻んだおくら、錦糸玉子とともに盛りつけます。濃縮だしを4倍の冷水で希釈してかけ、薬味と一緒にどうぞ。

〈京都?兆〉

にゅうめん(1食)税込1,080円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら

〈下鴨茶寮〉

だしのジュレがぷるるん、
さっぱり涼やか、芋蛸南瓜。

蛸(たこ)は麦が色づく今頃の時期がおいしいと言われ、仲夏の季語に"麦藁章魚(むぎわらだこ)"という言葉があるほどです。その蛸とともに、里芋、かぼちゃを柔らかく炊き、だしジュレで味わう冷製惣菜にしました。古くから女性好みの食材として言い習わされてきた"芋蛸南瓜(いもたこなんきん)"の取り合わせ。上品なだしの風味を生かして、京都らしい夏風情で仕立てた、女性にも男性にもおすすめの一品です。

〈下鴨茶寮〉

芋蛸なんきんのだし寄せ(1人前)税込799円

〈川勝總本家〉
〈川勝總本家〉
 
 
 

■地階 漬物売場
好みの食材で我が家の味に。
手軽に始める、ぬか漬け。

どなたでも簡単にぬか漬けづくりが楽しめるキットです。近年、ぬか漬けをする家庭が減る中、家ごとの味が失われていくのは寂しいと、京漬物をつくって百余年の川勝總本家が、漬物文化継承の一助になればと発売。ケースのぬか床の中にはあらかじめ食べ頃に漬かったぬか漬け3種が入っているので、まずはそれを味わってください。その後は好みの野菜を入れて、繰り返しぬか漬けがつくれます。容器ごと冷蔵庫に保存すればよく、ポイントはしっかりぬかに埋めて、定期的にぬか床を混ぜること(2~3日にいちど30秒程度)。漬け込み時間は食材の種類や大きさによりますが、なすやきゅうりは半日程度、人参は1~2日が目安です。予備の炒りぬかが付いているので、ぬか床がゆるくなってきたら足し、好みの調味料(塩、昆布、かつお節、唐辛子など)で少しずつご家庭の味に。店頭で販売している川勝のぬか漬けと味くらべしても楽しいですね。昔ながらのぬか漬けはもちろん、アスパラガスやズッキーニなどの洋野菜、アボカドなどの変わり種を漬けても美味。

〈川勝總本家〉

京のぬか漬キット 税込2,160円
●予約販売のみ/2日前までにご予約ください。

  • ※本記事の内容はホームページ掲載時の情報です。
  • ※季節のメニューなど、商品により販売期間が限られていますので、ご了承ください。
  • ※やむを得ない事情により、食材の一部を変更する場合、予告なく価格変更、販売終了する場合がございます。
  • ※写真はいずれも盛り付け例です。皿などの容器は商品に含まれません。

2022年

[2022/2/4~2/18]

都大路に春一番が吹き、梅の花がほころび始めます。厳しい余寒が続く中にも、新しい季節の兆しはそこかしこに。

[2022/2/19~3/4]

雪が雨に変わる頃の意で雨水。北山の雪解け水が鴨川をうるおし、三寒四温を繰り返しながら、少しずつ春めいてきます。

けいちつ

[2022/3/5~3/20]

春の陽光に誘われ、冬ごもりしていた虫たちが動きだす。鴨川沿いの柳は鮮やかに芽吹き、早咲きの桜が花を開きはじめます。

しゅんぶん

[2022/3/21~4/4]

沈丁花の香りが漂い、椿や木蓮、雪柳、桜…と次々に咲き、つばめが飛来しはじめ、いよいよ本格的な春の到来です。

せいめい

[2022/4/5~4/19]

清らかな陽光にみちて、生きとし生けるものすべてがいきいきと生命を謳歌する季節。京都の街は桜色に染まります。

こく

[2022/4/20~5/4]

百穀春雨と呼ばれる恵みの雨がしっとりと大地に降りそそぐ頃。藤や石楠花、杜若が見頃を迎え、街路樹は瑞々しい若緑色へ。

りっ

[2022/5/5~5/20]

爽やかな青空が広がり、青もみじが目に眩しく、風薫る五月。納涼床、川床が始まり、夏日となる日も次第に多くなります。

しょうまん

[2022/5/21~6/5]

草木や枝葉が生い茂り、梅の実がふくらむ頃。衣替えや建具替えをすると、町並みも夏らしい装いに。

ぼうしゅ

[2022/6/6~6/20]

梅雨入りを迎え、雨に濡れた色とりどりの紫陽花が美しい頃。各地の寺社で田植祭や竹伐り会式など豊作を願う神事が行われます。

[2022/6/21~7/6]

都大路をしとしとと雨が濡らす頃。神社では夏越祓の神事が行われ、鉾町にお囃子の音色が響きだし、京都の夏はいよいよ本番へ。

[2022/7/7~7/22]

コンチキチンの音色が響き、夏の暑さはいよいよ盛り。3年ぶりの山鉾巡行が待ち遠しく例年にも増して町が活気づきます。

[2022/7/23~8/6]

朝早くから蝉が大合唱し、空には大きな入道雲が立ちのぼり、京の油照りと言われる盆地特有の蒸し暑さが続きます。

[2022/8/7~8/22]

じっとりとした残暑が続く毎日。万灯会や灯篭流しが行われ、五山の送り火を終えると、京都の街はようやく秋の気配に。

[2022/8/23~9/7]

赤とんぼの姿、鈴虫の声。山々の緑は濃くなり、夏の入道雲と秋の鰯雲が混じり合う、行き合いの空が見られる頃です。

[2022/9/8~9/22]

朝晩は日ごとに涼しさが増し、草花が白い朝露をむすぶ頃。萩の花がしだれ咲き、夜空には美しい月が輝きます。

[2022/9/23~10/7]

暑さ寒さも彼岸まで。肌に心地いい秋風が金木犀の甘い香りを漂わせ、色鮮やかな彼岸花を揺らします。

[2022/10/8~10/22]

すすきの穂が黄金色に輝き、菊の花は色とりどりに。秋の日暮れは釣瓶落とし、そろそろ燗酒が恋しくなります。

[2022/10/23~11/6]

ひんやりと風が冷たく、朝晩は吐く息が白くなり始める頃。山野は晩秋の色を帯び、菊の花は見頃を迎えます。

[2022/11/7~11/21]

街のあちらこちらでお火焚きの煙が立ち昇る頃。山々や街路樹が次々と色づき、京都に美しい緋色が広がります。

[2022/11/22~12/6]

山茶花が花開き、鴨川にはユリカモメが飛来。しぐれるごとに寒さが増し、いよいよ本格的な冬の到来です。

[2022/12/7~12/21]

南座のまねき看板が上がると、京都の街は師走のにぎわいに。寺社では大根焚きや煤払い、終い縁日が行われます。

[2022/12/22~2023/1/5]

陰が極まり陽となる冬至。「ん」のつくもんで気を転じ、をけら詣りに除夜の鐘、歳神様をお迎えします。

[2023/1/6~1/19]

風花が静かに散らつき、寒椿が冬景色に彩りを添える頃。初釜式や十日ゑびすに向かう人波でまちが華やぎます。

[2023/1/20~2/3]

雪中四友と呼ばれる花々が咲き、寒さの底、来る春の兆し。初弘法、初天神、初不動、そして節分行事で寺社が賑わいます。

2021年

[2021/4/4~4/19]

清浄明潔を略して清明。清らかな陽光を受けて草木が芽生え、万物がいきいきと生命を謳歌し、都大路は桜色に染まります。

[2021/4/20~5/4]

穀物の種を蒔き、春雨に生育の願いを託す穀雨。八十八夜、茶摘みの季節が始まり、京都の街は桜色から瑞々しい緑色に。

[2021/5/5~5/20]

木々の緑がまぶしく、暦の上では夏。納涼床、川床が始まり、そして行列は中止ですが、五月といえば平安の時代から続く葵祭です。

[2021/5/21~6/4]

日差しが強くなり、木々の緑は深く。京都には〝家の作りようは夏を旨とすべし〟と涼の知恵が息づき、町家では6月1日に建具替えをします。

[2021/6/5~6/20]

芒(のぎ)はイネ科植物の突起のこと。麦を刈り取り、田植えをする時期です。京都のそこかしこで紫陽花が美しく、夕闇を舞う蛍が夏の風情を運びます。

[2021/6/21~7/6]

東山が雨にけむり、梅雨まっただ中。630日、京都各地の神社では夏越祓(なごしのはらえ)を行い、残る半年の無病息災を祈願します。

[2021/7/7~7/21]

疫病や災厄の退散を祈願して平安時代に始まったとされる祇園祭。おごそかに神事が行われ、京都の厳しい暑さは盛りを迎えます。

[2021/7/22~8/6]

三方を山に囲まれ、夏の暑さが厳しい京都盆地。鴨川の飛び石に子供たちの歓声が響き、堤防に草いきれが立ち込めます。

[2021/8/7~8/22]

盆地特有の残暑が続く日々。おしょらいさんをお迎えし、五山の送り火が終わると、ようやく秋の気配が漂いはじめます。

[2021/8/23~9/6]

ようやく暑さが少し和らぎ、虫の音も聞こえはじめる頃。8月下旬の京都では町内の路地で地蔵盆が繰り広げられます。

[2021/9/7~9/22]

草花に朝露が白く光り、虫の声が夕暮れをつつむ頃。京都の各所で秋の名月を愛でる風雅な祭事が行われます。

[2021/9/23~10/7]

ひんやりと頬をなでる風、どこからか漂ってくる金木犀の香り。秋分を境に日が短くなり、秋の夜長の始まりです。

[2021/10/8~10/22]

朝夕は肌寒く草木に露が降りる頃。天高く澄みわたり、遠く比叡山や愛宕山の姿も冴え、夜空には月がくっきりと輝きます。

[2021/10/23~11/6]

露は霜へと変わり、風は冷たく、いちだんと秋が深まる頃。秋の特別拝観や秋祭りで京都の街はにぎわいを増します。

[2021/11/7~11/21]

暦の上では冬が始まり、火の温もりが恋しくなる頃。京都は至るところで紅葉が広がり、美しい緋色に染まります。

[2021/11/22~12/6]

街に落葉が舞い、北山に初雪が舞い始める時期。南座に顔見世のまねきが上がると、いよいよ京都の町は師走の様相に。

[2021/12/7~12/21]

京都盆地に比叡おろしが吹き、大根焚きの湯気が上がり、パタパタと煤払いの音が聞こえると、正月準備を始める頃です。

[2021/12/22~2022/1/4]

一陽来復とも称される冬至。新年がよい年となるよう願い、しめ縄や松を飾り、鏡餅を供え、歳神さまを迎える準備をします。

[2022/1/5~1/19]

寒の入りといわれ、京都の底冷えが身にしみる時期。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも落ち着いてきます。

[2022/1/20~2/3]

二十四節気の締めくくり。一年の邪気を祓い、心新たに春を迎えるために、各地の寺社で節分行事が営まれます。

番外編

[〜番外編~]

祭礼や年中行事などの日をハレ(晴)、普段の日をケ(褻)とし、非日常と日常を使い分ける文化が京都の暮らしに息づいています。

[〜番外編~]

相性のいい旬の食材の組み合わせを出合いもんと言います。季節、食材、人と人、調和を尊ぶ京都らしい美意識がここに。