~二十四節気とともに綴る京都の食卓~

うつりかわる季節を楽しみ、旬を味わう、京都人の美意識と知恵。四季のある日本で、京都の人たちはひときわ季節を大切にしてきました。古くから季節の指標として用いられてきた「二十四節気」を軸として、名店の料理とともに、京都の暮らしにとけこむ食の風景を綴ります。

2022/11/7~11/21[

錦繍に染まる京都。

京都は至るところに紅葉の名所があり、盆地を囲む山々や街路樹も、冬の眠りにつく前に美しく色づきます。
朝夕がいちだんと冷え込むと、いよいよ見頃。
食卓にも色鮮やかな料理を並べて、紅葉の季節を楽しみましょう。

2022/11/04

京都の気候風土が生む、美しい紅葉。

紅葉が美しく色づくために必要だとされているのは、気温差、日照、湿度。盆地の京都は、夏の暑さと冬の底冷え、そして市街を囲む山々から大小の川が流れ込むことによる適度な湿気など、好条件が整っています。また、イロハモミジの仲間だけでも14種が自生するなど落葉樹の種類が豊富。深紅や橙、黄…と豊かな色味が、錦繍(きんしゅう)と呼ぶにふさわしい華やかな眺めを生みます。さて、今年はどこへ出かけましょうか。

季めくり季の味■地階 京の銘店そう菜売場

〈二傳〉

仕出し文化が息づく、
ハレのお弁当。

折詰の蓋を取ると、多種多様な料理が色とりどりにぎっしりと。煮もの、和えもの、焼きもの、揚げものなど、バラエティーに富んだ味わいが食べやすい一口サイズで詰められています。二傳の歴史は1757年、初代が魚屋を開いたことに始まり、長く仕出し屋を専業とする時代を経て、1966年に座敷を構えるように。仕出しとは料理を作り届ける、いわばデリバリーサービスの元祖ですが、京都の食は仕出し抜きには語れないと言われているほど、特有の豊かな文化があります。その仕出しで築いたノウハウや職人技が隅々まで生かされているお弁当です。作りたてを目の前で出す料理とは異なり、時間が経っても余計な汁気が出ず、冷めてもおいしいようにと考えられた味つけ。持ち運んでも偏りにくく、隣り合う料理の味が邪魔しない盛りつけ。五法・五味・五色が詰まった折詰は、どこから箸をつけようかと迷うのも楽しく、最初から最後まで存分に堪能できます。

〈二傳〉

京の四季 もみじ
(1人前、15×21.3×4.7cm)
税込2,700円
●ご予約も承ります。3日前までにご予約ください。
(数量によっては前日まで承ります。
店頭または電話:075-211-8111[代表/内線2554]にてご確認ください。)

〈下鴨茶寮〉

ぶり大根を主役に、
料亭ならではの味わいで。

ふっくら柔らかく脂がのったぶりと、うまみが中までしみた大根。"出合いもん"と呼ばれる相性のいい組み合わせです。中央は、主役のぶり大根に、ほうれん草としめじを添えて彩りよく。左上の升目は、だし巻き玉子と一口にしん昆布巻き。上の真ん中は、飛龍頭や湯葉、粟麩、高野豆腐などの炊き合わせ。右上は、煮しめ大豆。左下は、紫蘇をふりかけた白ごはん、水菜しめじ。右下は、かやくごはんと香の物を。平安朝の頃から下鴨神社の包丁人を務めてきた歴史があり、1856年、下鴨の地に創業した下鴨茶寮。神社の鳥居のような朱色の仕切りの折詰に料理を詰めた、特別なお弁当です。ぶり大根入りは大丸京都店だけで販売しています。

〈下鴨茶寮〉

おうち料亭 結
(ぶり大根、1人前、20.7×16.2×5cm)
税込2,268円
●ご予約も承ります。4日前までにご予約ください。
(数量によっては前日まで承ります。
店頭または電話:075-211-8738[直通]にてご確認ください。)

〈天ぷら八坂圓堂〉

京都らしさ、圓堂らしさを
贅沢な二段の折詰に。

ぷりぷりの海老天を使った天むす、天巻きに、京懐石の口取肴、天ぷらが味わえる、贅沢な二段弁当です。天むすは丼つゆ味、ちりめん山椒味、京しば漬け味、おぼろ昆布味、胡麻塩味、黒胡椒味の6種。天巻きは丼つゆ味、胡麻塩味の2種。口取肴は野菜の炊き合わせや海老、蛸、鰆、鴨ロース、笹巻き麩など10品目以上が彩り豊かに。そして天ぷらは圓堂名物として知られる、とうもろこし、えんどう豆のコロッケ、海老パンを。とうもろこしは蒸すことで甘みが増し、弧を描く独特の切り方によって一粒一粒がぷりっと弾ける食感。えんどう豆のコロッケは、さやから出した豆を裏ごししてから、さやに詰め直して揚げるなど、見えないところに想像以上の手間がかけられています。

〈天ぷら八坂圓堂〉

天むす・天巻 口取弁当
(1人前、20.5×10.5×5.5cm、2段)
税込5,184円
●予約販売のみ/3日前までにご予約ください。
(数量によっては前日まで承ります。
店頭または電話:075-288-7375[直通]にてご確認ください。)

〈京都𠮷兆〉
〈京都𠮷兆〉
 
 
 

素朴にして奥深い
"ほんまもん"の味わい。

京都?兆の人気商品を生かした、素朴にして味わい豊かなお弁当の調理例です。おむすびには「京兆梅干」「本さざなみ煮」を、サーモン柚庵焼きには「うまだし」を、だし巻き玉子、里芋煮、ほうれん草したしには「?兆のだし」を用いました。「京兆梅干」は大粒の南高梅を紫蘇と塩だけで漬けた梅干し。「本さざなみ煮」は昭和30年頃に料亭のおみやげとして誕生したちりめん山椒です。「うまだし」は鰹節、昆布、丸大豆醤油、本みりんで風味豊かに仕上げた万能調味料。「?兆のだし」は本枯鰹節と羅臼昆布のみを原材料にした手軽なだしパックで、だしを取り終えた"だしがら"も「うまだし」を使って煮詰めると、ふりかけとして無駄なく味わえます。今回の調理例は、竹の皮に金泊を施した"光琳笹"に盛りつけました。尾形光琳が嵐山に花見に出かけたとき、一見、質素な竹皮包みのにぎり飯を食べていたけれど、よく見ると竹皮の内側に金銀の蒔絵が施されていて周りを驚かせたという逸話にちなんでいます。

〈京都?兆〉

京兆梅干(110g)税込1,080円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら
本さざなみ煮 柔らかめ(60g)税込1,080円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら
うまだし(195ml)税込1,080円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら
?兆のだし(だしパック5袋入)税込1,080円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら

〈塩芳軒〉

■地階 和菓子売場
引き算の美学が生みだす、
季節を映した干菓子。

和三盆の上品な甘み、繊細な口どけ。菊、紅葉、栗の3種を詰め合わせた、秋の干菓子です。京都の菓子は古くから外来文化の影響を受けつつ、宮廷や茶道の文化と結びつきながら発展し、干菓子は江戸時代、茶の湯の広まりの中で普及しました。茶席では濃茶に主菓子(生菓子)、薄茶には落雁、煎餅などを含めた干菓子を出し、主菓子は抽象的、干菓子は具象的なデザインが特徴とされています。塩芳軒は1882年に西陣で創業。季節の移ろいを映しだす和菓子の数々には"引き算の美学"があり、菓子そのものにも包装にも、余計な装飾を省いた高貴な美しさがあります。鮮やかな季節の情景を思い描きながら、薄茶にはもちろん、コーヒーや紅茶のおともにも、ぜひどうぞ。

〈塩芳軒〉

四季の干菓子 秋(15個)税込1,512円

  • ※本記事の内容はホームページ掲載時の情報です。
  • ※季節のメニューなど、商品により販売期間が限られていますので、ご了承ください。
  • ※やむを得ない事情により、食材の一部を変更する場合、予告なく価格変更、販売終了する場合がございます。
  • ※写真はいずれも盛り付け例です。皿などの容器は商品に含まれません。

2022年

[2022/2/4~2/18]

都大路に春一番が吹き、梅の花がほころび始めます。厳しい余寒が続く中にも、新しい季節の兆しはそこかしこに。

[2022/2/19~3/4]

雪が雨に変わる頃の意で雨水。北山の雪解け水が鴨川をうるおし、三寒四温を繰り返しながら、少しずつ春めいてきます。

けいちつ

[2022/3/5~3/20]

春の陽光に誘われ、冬ごもりしていた虫たちが動きだす。鴨川沿いの柳は鮮やかに芽吹き、早咲きの桜が花を開きはじめます。

しゅんぶん

[2022/3/21~4/4]

沈丁花の香りが漂い、椿や木蓮、雪柳、桜…と次々に咲き、つばめが飛来しはじめ、いよいよ本格的な春の到来です。

せいめい

[2022/4/5~4/19]

清らかな陽光にみちて、生きとし生けるものすべてがいきいきと生命を謳歌する季節。京都の街は桜色に染まります。

こく

[2022/4/20~5/4]

百穀春雨と呼ばれる恵みの雨がしっとりと大地に降りそそぐ頃。藤や石楠花、杜若が見頃を迎え、街路樹は瑞々しい若緑色へ。

りっ

[2022/5/5~5/20]

爽やかな青空が広がり、青もみじが目に眩しく、風薫る五月。納涼床、川床が始まり、夏日となる日も次第に多くなります。

しょうまん

[2022/5/21~6/5]

草木や枝葉が生い茂り、梅の実がふくらむ頃。衣替えや建具替えをすると、町並みも夏らしい装いに。

ぼうしゅ

[2022/6/6~6/20]

梅雨入りを迎え、雨に濡れた色とりどりの紫陽花が美しい頃。各地の寺社で田植祭や竹伐り会式など豊作を願う神事が行われます。

[2022/6/21~7/6]

都大路をしとしとと雨が濡らす頃。神社では夏越祓の神事が行われ、鉾町にお囃子の音色が響きだし、京都の夏はいよいよ本番へ。

[2022/7/7~7/22]

コンチキチンの音色が響き、夏の暑さはいよいよ盛り。3年ぶりの山鉾巡行が待ち遠しく例年にも増して町が活気づきます。

[2022/7/23~8/6]

朝早くから蝉が大合唱し、空には大きな入道雲が立ちのぼり、京の油照りと言われる盆地特有の蒸し暑さが続きます。

[2022/8/7~8/22]

じっとりとした残暑が続く毎日。万灯会や灯篭流しが行われ、五山の送り火を終えると、京都の街はようやく秋の気配に。

[2022/8/23~9/7]

赤とんぼの姿、鈴虫の声。山々の緑は濃くなり、夏の入道雲と秋の鰯雲が混じり合う、行き合いの空が見られる頃です。

[2022/9/8~9/22]

朝晩は日ごとに涼しさが増し、草花が白い朝露をむすぶ頃。萩の花がしだれ咲き、夜空には美しい月が輝きます。

[2022/9/23~10/7]

暑さ寒さも彼岸まで。肌に心地いい秋風が金木犀の甘い香りを漂わせ、色鮮やかな彼岸花を揺らします。

[2022/10/8~10/22]

すすきの穂が黄金色に輝き、菊の花は色とりどりに。秋の日暮れは釣瓶落とし、そろそろ燗酒が恋しくなります。

[2022/10/23~11/6]

ひんやりと風が冷たく、朝晩は吐く息が白くなり始める頃。山野は晩秋の色を帯び、菊の花は見頃を迎えます。

[2022/11/7~11/21]

街のあちらこちらでお火焚きの煙が立ち昇る頃。山々や街路樹が次々と色づき、京都に美しい緋色が広がります。

[2022/11/22~12/6]

山茶花が花開き、鴨川にはユリカモメが飛来。しぐれるごとに寒さが増し、いよいよ本格的な冬の到来です。

[2022/12/7~12/21]

南座のまねき看板が上がると、京都の街は師走のにぎわいに。寺社では大根焚きや煤払い、終い縁日が行われます。

[2022/12/22~2023/1/5]

陰が極まり陽となる冬至。「ん」のつくもんで気を転じ、をけら詣りに除夜の鐘、歳神様をお迎えします。

[2023/1/6~1/19]

風花が静かに散らつき、寒椿が冬景色に彩りを添える頃。初釜式や十日ゑびすに向かう人波でまちが華やぎます。

[2023/1/20~2/3]

雪中四友と呼ばれる花々が咲き、寒さの底、来る春の兆し。初弘法、初天神、初不動、そして節分行事で寺社が賑わいます。

2021年

[2021/4/4~4/19]

清浄明潔を略して清明。清らかな陽光を受けて草木が芽生え、万物がいきいきと生命を謳歌し、都大路は桜色に染まります。

[2021/4/20~5/4]

穀物の種を蒔き、春雨に生育の願いを託す穀雨。八十八夜、茶摘みの季節が始まり、京都の街は桜色から瑞々しい緑色に。

[2021/5/5~5/20]

木々の緑がまぶしく、暦の上では夏。納涼床、川床が始まり、そして行列は中止ですが、五月といえば平安の時代から続く葵祭です。

[2021/5/21~6/4]

日差しが強くなり、木々の緑は深く。京都には〝家の作りようは夏を旨とすべし〟と涼の知恵が息づき、町家では6月1日に建具替えをします。

[2021/6/5~6/20]

芒(のぎ)はイネ科植物の突起のこと。麦を刈り取り、田植えをする時期です。京都のそこかしこで紫陽花が美しく、夕闇を舞う蛍が夏の風情を運びます。

[2021/6/21~7/6]

東山が雨にけむり、梅雨まっただ中。630日、京都各地の神社では夏越祓(なごしのはらえ)を行い、残る半年の無病息災を祈願します。

[2021/7/7~7/21]

疫病や災厄の退散を祈願して平安時代に始まったとされる祇園祭。おごそかに神事が行われ、京都の厳しい暑さは盛りを迎えます。

[2021/7/22~8/6]

三方を山に囲まれ、夏の暑さが厳しい京都盆地。鴨川の飛び石に子供たちの歓声が響き、堤防に草いきれが立ち込めます。

[2021/8/7~8/22]

盆地特有の残暑が続く日々。おしょらいさんをお迎えし、五山の送り火が終わると、ようやく秋の気配が漂いはじめます。

[2021/8/23~9/6]

ようやく暑さが少し和らぎ、虫の音も聞こえはじめる頃。8月下旬の京都では町内の路地で地蔵盆が繰り広げられます。

[2021/9/7~9/22]

草花に朝露が白く光り、虫の声が夕暮れをつつむ頃。京都の各所で秋の名月を愛でる風雅な祭事が行われます。

[2021/9/23~10/7]

ひんやりと頬をなでる風、どこからか漂ってくる金木犀の香り。秋分を境に日が短くなり、秋の夜長の始まりです。

[2021/10/8~10/22]

朝夕は肌寒く草木に露が降りる頃。天高く澄みわたり、遠く比叡山や愛宕山の姿も冴え、夜空には月がくっきりと輝きます。

[2021/10/23~11/6]

露は霜へと変わり、風は冷たく、いちだんと秋が深まる頃。秋の特別拝観や秋祭りで京都の街はにぎわいを増します。

[2021/11/7~11/21]

暦の上では冬が始まり、火の温もりが恋しくなる頃。京都は至るところで紅葉が広がり、美しい緋色に染まります。

[2021/11/22~12/6]

街に落葉が舞い、北山に初雪が舞い始める時期。南座に顔見世のまねきが上がると、いよいよ京都の町は師走の様相に。

[2021/12/7~12/21]

京都盆地に比叡おろしが吹き、大根焚きの湯気が上がり、パタパタと煤払いの音が聞こえると、正月準備を始める頃です。

[2021/12/22~2022/1/4]

一陽来復とも称される冬至。新年がよい年となるよう願い、しめ縄や松を飾り、鏡餅を供え、歳神さまを迎える準備をします。

[2022/1/5~1/19]

寒の入りといわれ、京都の底冷えが身にしみる時期。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも落ち着いてきます。

[2022/1/20~2/3]

二十四節気の締めくくり。一年の邪気を祓い、心新たに春を迎えるために、各地の寺社で節分行事が営まれます。

番外編

[〜番外編~]

祭礼や年中行事などの日をハレ(晴)、普段の日をケ(褻)とし、非日常と日常を使い分ける文化が京都の暮らしに息づいています。

[〜番外編~]

相性のいい旬の食材の組み合わせを出合いもんと言います。季節、食材、人と人、調和を尊ぶ京都らしい美意識がここに。