~二十四節気とともに綴る京都の食卓~

うつりかわる季節を楽しみ、旬を味わう、京都人の美意識と知恵。四季のある日本で、京都の人たちはひときわ季節を大切にしてきました。古くから季節の指標として用いられてきた「二十四節気」を軸として、名店の料理とともに、京都の暮らしにとけこむ食の風景を綴ります。

2022/7/23~8/6[

土用の丑は
"う"のつくもん。

土用の丑には鰻や牛をはじめ、冬瓜や苦瓜といった瓜類など「う」のつくものを食べる習わしがあります。
今年は一の丑が7月23日(土)、二の丑が8月4日(木)。
おいしく味わって、京都の厳しい夏を乗り切りましょう。

2022/07/15

土用の食い養生。

夏の土用がよく知られていますが、土用は立春・立夏・立秋・立冬の直前の約18日間を指します。夏の土用といえば丑の日に「う」のつくものを食べるように、秋の土用は辰の日に「た」のつくもの、冬の土用は未の日に「ひ」のつくもの、春の土用は戌の日に「い」のつくものを食べるとよいと言われています。季節を意識し、食べるものに気を配る。季節の変わり目を健やかに乗り切るための先人たちの知恵なのかもしれません。

季めくり季の味■地階 京の銘店そう菜売場

〈下鴨茶寮〉

"う"のつく牛を
香り高いだし茶漬けで。

柔らかく炊いた牛肉がたっぷり。こんがり香ばしい焼きおにぎりの上に具材とだしをかけて味わう"安政茶漬け"のシリーズです。お茶漬けは江戸時代中期頃から広く親しまれるようになったと言われ、下鴨茶寮が創業した1856年は安政年間にあたることにちなんで名づけました。だしの風味が利いていて、おにぎりのカリッとした焦げ目、針生姜やねぎ、ぶぶあられによって味わいの変化を楽しみながら堪能できます。主食としても、お酒のあとのシメにもおすすめです。

〈下鴨茶寮〉

安政茶漬け(牛)税込972円

〈二傳〉

"う"のつく鰻を
凛と美しいお寿司に。

土用の丑の日に鰻を食べるようになったのは江戸時代に平賀源内が発案したのが始まりだという説がありますが、古くは奈良時代に大伴家持が「石麻呂に我れ物申す 夏痩せに良しといふものぞ 鰻捕り喫せ」と万葉集に詠んだほど、夏に鰻を食べる文化は大昔からあるようです。ビタミンAをはじめ、ビタミンB1・B2、カルシウムなども豊富で、食欲が落ちがちな夏に頼もしい味方。ふっくら肉厚で脂のりのいい鰻を上品な姿かたちのお寿司にしました。ひと目で丁寧な仕事ぶりが伝わってくる、美しい焼き色。口に運べば香ばしく、実山椒が小気味いいアクセントに。丑の日限定、数量限定なので、ぜひお早めにご予約ください。

〈二傳〉

鰻寿司(5貫)税込2,970円
●7月23日(土)限定販売
●ご予約も承ります。

〈京都𠮷兆〉
〈京都𠮷兆〉
 
 
 

"う"のつく瓜類にも合う、
濃厚な風味の穴子煮。

国産の穴子を、実山椒、醤油、味醂、酒で丁寧に炊きあげた、京都?兆の「あなご山椒煮」。そのまま酒の肴やごはんのお供にはもちろん、にゅうめんやお蕎麦といった麺類のトッピングにすれば、穴子のうまみがだしに深みを出し、贅沢な一品に。写真の調理例は、冬瓜あんかけ。冬瓜は薄味で柔らかく炊き、葛または片栗粉でとろみをつけます。万願寺唐辛子は切って油と塩をまぶして電子レンジで加熱したら、冬瓜とともに器に盛ります。そして、オーブントースターで軽く焼いて食べやすく切った「あなご山椒煮」をのせれば、できあがり。冬瓜は冬の瓜と書きますが、旬は夏。貯蔵性が高く、冬までもつという意で(実際にはそこまで日持ちがするわけではありませんが)そう記すようになったと言われています。涼しげな見た目とさっぱりとした味が夏にちょうどよく、濃厚な穴子の風味が好相性です。

〈京都?兆〉

あなご山椒煮(80g)税込1,836円
●オンラインストアでも販売しています。詳しくはこちら

〈天ぷら八坂圓堂〉

さっくり、ふっくら、
夏が旬の穴子の天ぷら。

土用の丑といえば鰻がまっ先に思い浮かびますが、天ぷらで味わうのなら、同じウナギ目に属する穴子がおすすめです。低カロリー高たんぱくで知られ、さっぱりと淡泊。衣はさっくり、身はふっくらと柔らかく、天つゆや塩はもちろん、ぽん酢をかけても合います。暑い日には冷たい麺類にのせてもおいしいですよ。一般的に魚は脂ノリのいい時期を旬とすることが多いですが、淡泊な味わいが好まれる穴子は、脂の少ない夏が旬とされる珍しい魚です。夏野菜のズッキーニ、鮮やかな色とほのかな酸味が食欲をそそる紅しょうがも、今の時期に人気。

〈天ぷら八坂圓堂〉

天ぷら各種(1個)
ズッキーニ 税込118円
紅しょうが 税込162円
あなご 税込594円

〈三嶋亭〉
〈三嶋亭〉
 
 
 

■地階 精肉売場
銘柄や等級を超越した、
熟成肉のとろける味わい。

京都を代表する牛肉の名店であり、日本のすき焼き店の草分け的存在として140余年の歴史を誇り、その名を海外の食通にも知られる三嶋亭。牛肉の選定にあたっては銘柄、格付けにとらわれず、代々受け継いできた"目利き"によって一頭一頭を吟味しています。そして、三嶋亭の貯蔵庫で約3週間熟成することで、とろけるように柔らかく深みのある上質な味わいに。大丸京都店の三嶋亭では精肉の数々をそろえるほか、お弁当や牛肉コロッケ、しぐれ煮なども販売。さらにはおひとりでも気軽に立ち寄れるカウンター席のイートインコーナーを併設し、すき焼き膳、あみ焼き膳、ステーキ膳といったお料理をご用意しています。

〈三嶋亭〉

国産熟成黒毛和牛 サーロインステーキ(1枚、150g)税込4,320円

  • ※本記事の内容はホームページ掲載時の情報です。
  • ※季節のメニューなど、商品により販売期間が限られていますので、ご了承ください。
  • ※やむを得ない事情により、食材の一部を変更する場合、予告なく価格変更、販売終了する場合がございます。
  • ※写真はいずれも盛り付け例です。皿などの容器は商品に含まれません。

2022年

[2022/2/4~2/18]

都大路に春一番が吹き、梅の花がほころび始めます。厳しい余寒が続く中にも、新しい季節の兆しはそこかしこに。

[2022/2/19~3/4]

雪が雨に変わる頃の意で雨水。北山の雪解け水が鴨川をうるおし、三寒四温を繰り返しながら、少しずつ春めいてきます。

けいちつ

[2022/3/5~3/20]

春の陽光に誘われ、冬ごもりしていた虫たちが動きだす。鴨川沿いの柳は鮮やかに芽吹き、早咲きの桜が花を開きはじめます。

しゅんぶん

[2022/3/21~4/4]

沈丁花の香りが漂い、椿や木蓮、雪柳、桜…と次々に咲き、つばめが飛来しはじめ、いよいよ本格的な春の到来です。

せいめい

[2022/4/5~4/19]

清らかな陽光にみちて、生きとし生けるものすべてがいきいきと生命を謳歌する季節。京都の街は桜色に染まります。

こく

[2022/4/20~5/4]

百穀春雨と呼ばれる恵みの雨がしっとりと大地に降りそそぐ頃。藤や石楠花、杜若が見頃を迎え、街路樹は瑞々しい若緑色へ。

りっ

[2022/5/5~5/20]

爽やかな青空が広がり、青もみじが目に眩しく、風薫る五月。納涼床、川床が始まり、夏日となる日も次第に多くなります。

しょうまん

[2022/5/21~6/5]

草木や枝葉が生い茂り、梅の実がふくらむ頃。衣替えや建具替えをすると、町並みも夏らしい装いに。

ぼうしゅ

[2022/6/6~6/20]

梅雨入りを迎え、雨に濡れた色とりどりの紫陽花が美しい頃。各地の寺社で田植祭や竹伐り会式など豊作を願う神事が行われます。

[2022/6/21~7/6]

都大路をしとしとと雨が濡らす頃。神社では夏越祓の神事が行われ、鉾町にお囃子の音色が響きだし、京都の夏はいよいよ本番へ。

[2022/7/7~7/22]

コンチキチンの音色が響き、夏の暑さはいよいよ盛り。3年ぶりの山鉾巡行が待ち遠しく例年にも増して町が活気づきます。

[2022/7/23~8/6]

朝早くから蝉が大合唱し、空には大きな入道雲が立ちのぼり、京の油照りと言われる盆地特有の蒸し暑さが続きます。

[2022/8/7~8/22]

じっとりとした残暑が続く毎日。万灯会や灯篭流しが行われ、五山の送り火を終えると、京都の街はようやく秋の気配に。

[2022/8/23~9/7]

赤とんぼの姿、鈴虫の声。山々の緑は濃くなり、夏の入道雲と秋の鰯雲が混じり合う、行き合いの空が見られる頃です。

[2022/9/8~9/22]

朝晩は日ごとに涼しさが増し、草花が白い朝露をむすぶ頃。萩の花がしだれ咲き、夜空には美しい月が輝きます。

[2022/9/23~10/7]

暑さ寒さも彼岸まで。肌に心地いい秋風が金木犀の甘い香りを漂わせ、色鮮やかな彼岸花を揺らします。

[2022/10/8~10/22]

すすきの穂が黄金色に輝き、菊の花は色とりどりに。秋の日暮れは釣瓶落とし、そろそろ燗酒が恋しくなります。

[2022/10/23~11/6]

ひんやりと風が冷たく、朝晩は吐く息が白くなり始める頃。山野は晩秋の色を帯び、菊の花は見頃を迎えます。

[2022/11/7~11/21]

街のあちらこちらでお火焚きの煙が立ち昇る頃。山々や街路樹が次々と色づき、京都に美しい緋色が広がります。

[2022/11/22~12/6]

山茶花が花開き、鴨川にはユリカモメが飛来。しぐれるごとに寒さが増し、いよいよ本格的な冬の到来です。

[2022/12/7~12/21]

南座のまねき看板が上がると、京都の街は師走のにぎわいに。寺社では大根焚きや煤払い、終い縁日が行われます。

[2022/12/22~2023/1/5]

陰が極まり陽となる冬至。「ん」のつくもんで気を転じ、をけら詣りに除夜の鐘、歳神様をお迎えします。

[2023/1/6~1/19]

風花が静かに散らつき、寒椿が冬景色に彩りを添える頃。初釜式や十日ゑびすに向かう人波でまちが華やぎます。

[2023/1/20~2/3]

雪中四友と呼ばれる花々が咲き、寒さの底、来る春の兆し。初弘法、初天神、初不動、そして節分行事で寺社が賑わいます。

2021年

[2021/4/4~4/19]

清浄明潔を略して清明。清らかな陽光を受けて草木が芽生え、万物がいきいきと生命を謳歌し、都大路は桜色に染まります。

[2021/4/20~5/4]

穀物の種を蒔き、春雨に生育の願いを託す穀雨。八十八夜、茶摘みの季節が始まり、京都の街は桜色から瑞々しい緑色に。

[2021/5/5~5/20]

木々の緑がまぶしく、暦の上では夏。納涼床、川床が始まり、そして行列は中止ですが、五月といえば平安の時代から続く葵祭です。

[2021/5/21~6/4]

日差しが強くなり、木々の緑は深く。京都には〝家の作りようは夏を旨とすべし〟と涼の知恵が息づき、町家では6月1日に建具替えをします。

[2021/6/5~6/20]

芒(のぎ)はイネ科植物の突起のこと。麦を刈り取り、田植えをする時期です。京都のそこかしこで紫陽花が美しく、夕闇を舞う蛍が夏の風情を運びます。

[2021/6/21~7/6]

東山が雨にけむり、梅雨まっただ中。630日、京都各地の神社では夏越祓(なごしのはらえ)を行い、残る半年の無病息災を祈願します。

[2021/7/7~7/21]

疫病や災厄の退散を祈願して平安時代に始まったとされる祇園祭。おごそかに神事が行われ、京都の厳しい暑さは盛りを迎えます。

[2021/7/22~8/6]

三方を山に囲まれ、夏の暑さが厳しい京都盆地。鴨川の飛び石に子供たちの歓声が響き、堤防に草いきれが立ち込めます。

[2021/8/7~8/22]

盆地特有の残暑が続く日々。おしょらいさんをお迎えし、五山の送り火が終わると、ようやく秋の気配が漂いはじめます。

[2021/8/23~9/6]

ようやく暑さが少し和らぎ、虫の音も聞こえはじめる頃。8月下旬の京都では町内の路地で地蔵盆が繰り広げられます。

[2021/9/7~9/22]

草花に朝露が白く光り、虫の声が夕暮れをつつむ頃。京都の各所で秋の名月を愛でる風雅な祭事が行われます。

[2021/9/23~10/7]

ひんやりと頬をなでる風、どこからか漂ってくる金木犀の香り。秋分を境に日が短くなり、秋の夜長の始まりです。

[2021/10/8~10/22]

朝夕は肌寒く草木に露が降りる頃。天高く澄みわたり、遠く比叡山や愛宕山の姿も冴え、夜空には月がくっきりと輝きます。

[2021/10/23~11/6]

露は霜へと変わり、風は冷たく、いちだんと秋が深まる頃。秋の特別拝観や秋祭りで京都の街はにぎわいを増します。

[2021/11/7~11/21]

暦の上では冬が始まり、火の温もりが恋しくなる頃。京都は至るところで紅葉が広がり、美しい緋色に染まります。

[2021/11/22~12/6]

街に落葉が舞い、北山に初雪が舞い始める時期。南座に顔見世のまねきが上がると、いよいよ京都の町は師走の様相に。

[2021/12/7~12/21]

京都盆地に比叡おろしが吹き、大根焚きの湯気が上がり、パタパタと煤払いの音が聞こえると、正月準備を始める頃です。

[2021/12/22~2022/1/4]

一陽来復とも称される冬至。新年がよい年となるよう願い、しめ縄や松を飾り、鏡餅を供え、歳神さまを迎える準備をします。

[2022/1/5~1/19]

寒の入りといわれ、京都の底冷えが身にしみる時期。初ゑびす、小正月と続いて、新年の華やぎも落ち着いてきます。

[2022/1/20~2/3]

二十四節気の締めくくり。一年の邪気を祓い、心新たに春を迎えるために、各地の寺社で節分行事が営まれます。

番外編

[〜番外編~]

祭礼や年中行事などの日をハレ(晴)、普段の日をケ(褻)とし、非日常と日常を使い分ける文化が京都の暮らしに息づいています。

[〜番外編~]

相性のいい旬の食材の組み合わせを出合いもんと言います。季節、食材、人と人、調和を尊ぶ京都らしい美意識がここに。