大阪・関西万博イベントレポート
テーマ:都市養蜂で自然豊かな街に
銀座ミツバチプロジェクト副理事長 田中淳夫×梅田ミツバチプロジェクト理事長 小丸和弘
去る10月4日(土)、閉幕を間近に連日多くの人が詰めかける大阪・関西万博の「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」で大丸心斎橋店主催のイベント「THINK“WELL-BEING” FOR OUR CITY〜ビジョナルリーダーと“都市のウェルビーイング”を考える」が開催されました。5月には「歴史的建築の継承」、「ジャズで関西を盛り上げる」をテーマにイベントが開催されたこのシリーズ、今回は、大丸心斎橋店屋上でもミツバチを飼うなど、環境への貢献で注目されている都市養蜂にフォーカス。銀座ミツバチプロジェクト副理事長の田中淳夫さん、梅田ミツバチプロジェクト理事長の小丸和弘さんをゲストスピーカーに迎え、「都市養蜂で自然豊かな街に」をテーマに、トークショーを展開しました。その模様をレポートします。
大丸心斎橋店の屋上で行われている都市養蜂。
大丸心斎橋店では、2019年のグランドオープンを機に、約900㎡の屋上の緑地にハチの巣箱を設置して都市養蜂を行っています。巣箱からは約20万匹のミツバチが飛び立ち、靱公園や大阪城公園などで咲く花々から蜜を集めてきます。採取されたハチミツは、大丸心斎橋店本館地下1階のはちみつ専門店「ラベイユ」で、「心斎橋のはちみつ」として販売されるほか、館内の多くの飲食店で使われています。
近年、パリやニューヨーク、香港など世界中で行われている都市養蜂が注目されている理由に、街にミツバチが行き交い受粉を行うことで生態系が循環し、緑化につながるということが挙げられます。大丸心斎橋店でも行われている都市養蜂がどのように環境に貢献するかを知ってもらうために、今回のイベントは行われました。
今回のイベントの会場となった「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」は、「ともに生き、ともに輝く未来へ」をコンセプトに、あらゆる性別の人々が真の平等のうちに共存し、互いに尊重し合い、誰もが自分の可能性を最大限に発揮できる、公平で持続可能な未来を目指すために何ができるのか?をテーマに、女性たちの体験や視点を通して考えるパビリオン。2階の「WA」スペースでトークショーが行われました。
小中学生を迎え、ミツバチや
養蜂を知る第一部がスタート。
午後1時からの第一部では梅田ミツバチプロジェクトの小丸さんが、小学生や中学生向けにミツバチの生態や養蜂の基本についてレクチャーを行いました。これは、梅田ミツバチプロジェクトが普段から行っている「BEE SCHOOL」の内容をベースに、小丸さんがミツバチの種類や生態について解説し、万博の会場と梅田の養蜂場をつなぐ中継も用意された特別版のスクールです。
小学生高学年と中学生の子どもたち、その父母たちが席を埋めるなか、いよいよイベントがスタート! 純白のオーバーオールにライトブラウンのキャップというユニフォームに身を包んだ小丸さんが拍手に迎えられ登場します。
「万博も閉幕が近づいてきて、すごく人が集まっていますが、ここでは外の喧騒から離れてゆっくりミツバチや養蜂の話を聞いていただいて、万博に来てこういうことを勉強したという、何かを持って帰ってくれたらうれしいです」と開口一番に挨拶をしました。
小丸さんは梅田ミツバチプロジェクトの活動内容を簡単に紹介してから、ミツバチのことを知るレクチャーが始まりました。ハチは世界に約20万種類いること、その中で花の蜜をごはんにするハチは約2万種類で、ミツバチはその代表的なものということを教えてくれます。
そして、ハチといえば針を持っていて刺されるんじゃないか?という恐れに対して、小丸さんは次のように解説してくれました。
「ミツバチの針は内臓とつながっています。そして人を刺すと針が抜けて内臓が飛び出して死んでしまうんです。だからむやみに人を刺したりしません。自分の家の花壇に来ても襲ってくることは基本的にないので、そっと見守ってください。ミツバチって実際に手ですくってみるとモフモフしていて、温くて気持ちいいんですよね」
ミツバチは実はやさしい生きもので、さらには社会性昆虫と呼ばれていると小丸さんは続けます。
「昆虫の中には、一匹だけで暮らしている虫もいれば、ミツバチとかアリのように団体で生活する昆虫もいて、それらは社会性昆虫と呼ばれています。みんなでコロニーを形成して、助け合って、いろんな役割を分担して生活している生きものなんです」
社会性昆虫であるミツバチの巣での生活について、小丸さんはさらに掘り下げてくれました。
「よく知られているように、コロニー(群)の中には、女王バチが1匹だけいます。それ以外にはメスの働きバチが約9割、オスバチが約1割で構成されています。働きバチは、蜜を取りにいくほか、部屋づくり、妹や弟たちの世話など、やることがたくさんあります。一方、オスバチは巣の中で毎日ゴロゴロしていて、ごはんだけ食べて暮らしているんですよ」という小丸さんの説明に、身につまされる(?)お父さんたちもいるのか、会場にはドッと笑いが巻き起こります。
そして、ミツバチが地球のためにしてくれる最も大切なこととして、小丸さんは受粉のことを説明してくれました。
「働きバチは、外に蜜を集めに行ったときに、花のおしべとめしべをくっつける受粉をして、花の種や実をつくる大事な作業をしています。野菜や果物もミツバチの受粉によって実がなることが多くて。世界には主要作物が約100種類あると言われていますが、ミツバチがいなくなると、そのうち70%もの果物や野菜が採れなくなると言われているので、だいぶ困りますよね。ミツバチは見えないところですごくがんばってくれる、われわれの生活にはすごく大切な生きもの。アインシュタインなんかは『この世にミツバチがいなくなったら、4年で人類が滅びる』という言葉を残したと言われています」
ハチのことをもっと知るために、
梅田・茶屋町の養蜂場から中継。
ミツバチの基本について学んだ後は、梅田ミツバチプロジェクトや大丸心斎橋店が行っている都市養蜂について話をします。
「養蜂とはそもそも畜産業で、はちみつやローヤルゼリーを採取することを目的とされています。しかし梅田ミツバチプロジェクトでは、はちみつはあくまでも副産物で、ミツバチを保護したり環境の保全を目的として飼育しています」と小丸さん。
都会の蜜源は、公園や街路樹、川沿いなどが多く、梅田だと淀川河川敷、心斎橋なら大阪城公園などへミツバチが飛び、採蜜してくるそうです。
「大丸心斎橋店では屋上にミツバチの巣箱を置いていますが、ここはとてもいい環境。見晴らしがよくて、ミツバチたちは幸せだと思います。ここから飛び立って蜜を集めてきてくれるのですが、先ほど言ったように受粉を進めることで、都会に花が増えて鳥も増えるという生態系の循環が豊かになります。でも、実はミツバチはすごく弱い生きもので、空気や水が悪くなるなど、ちょっとした環境変化があると生きていけない。だからミツバチは環境指標生物と呼ばれたりもします」
都市環境における養蜂の意義について知ったところで、梅田・茶屋町にある養蜂場と映像でつなぎ、オンタイムで実際の養蜂の現場を覗くことに。この日の天気は雨模様で、本来なら雨の日は巣箱の蓋は開けないそうですが、この日は特別に開放。スタッフが巣箱から巣板を取り出すとミツバチがぎっしりです。
「コロニーの中には、女王バチと働きバチとオスバチが暮らしています。あっ、ここに女王バチがいますね」と小丸さんが実況中継すると、子どもたちも興味津々で見入っていました。
梅田の養蜂現場を実況しながら、小丸さんは働きバチの体長は約1.5cmと以外に小さく、卵から羽化するまで21日かかること、生まれてから約50日しか生きられないこと、女王バチはローヤルゼリーしか食べないことや1日に多いときには2,000個の卵を産むこと、オスバチは英語でドローンということなどを教えてくれました。
「僕たちがこの養蜂場で何をしているかというと、女王バチがしっかり産卵しているかなとか、ごはんをしっかり食べてるかなとか、はちみつを集めてくれてるかなとかを日々チェックしています。養蜂を始めると本当にミツバチがかわいくなってきて、そのうち“うちの子は”なんて言い出しますよ(笑)」
小丸さんのミツバチへの愛情たっぷりの言葉とともに実況中継も終了。子どもたちやお父さん、お母さんたちも養蜂場のスタッフに拍手を送ります。
さらにクイズとQ&Aを行ない、
深くミツバチのことを知る。
中継が終わったあとは、小丸さんが子どもたちにクイズを出しました。ミツバチがどれぐらいの距離を飛んで蜜を集めてくるのか?(答えは3km〜5km)というクエスチョンに続いて、1匹のミツバチが一生かかってどれぐらいのはちみつを集められるか? というクイズが出されます。
「正解は、ティースプーン1杯です。わずか50日の人生で、約3gのはちみつしか集めてこないんです。だから、はちみつはもっともっと大事にしてください」と答えを伝える小丸さんに、「うんうん」とうなずく子どももいました。
ミツバチや養蜂に関する知識を深めたあと、小丸さんから地球の環境のために「今日聞いたことを誰かに話そう」、「ゴミの分別など、できることから環境を守っていこう」、「食べ物を大切に扱おう」「空いたスペースで植物を育てよう」「ミツバチをみんな見守ろう」など、今すぐできることの提案があり、質問タイムへと移ります。
「スズメバチって、ミツバチの巣を襲ったりするんですか?」、「ミツバチ同士は近くにいるけどケンカとかしないんですか?」など、子どもらしいストレートでいて鋭い質問に、小丸先生もうれしそうに回答をしていきます。
「女王蜂と交尾するオスバチって、他のオスバチと違った特別なものがあるのですか?」という質問には、「すばらしい質問だね。女王バチは交尾するために巣を出て飛んでいくけど、体も大きいのですごく早いんですよ。そこに交尾したいオスバチが何百匹も追いかける。女王バチは、自分の速さについてこれる強いDNAを求めて交尾します。するとその場でオスバチは死んじゃうんです。女王バチは、だいたい4、5匹のオスバチと交尾して帰ってきてから有精卵を産み始める。交尾できなかったオスバチはまた巣箱に帰って、ゴロゴロしてごはんを食べて、次の日また出かける。そんなことを繰り返した末に『ええかげん出て行ってくれ』と、残ったオスバチも巣から追い出されるんですよ(笑)」
小丸さんのユーモアあふれるアンサーに、会場は和やかな雰囲気に包まれます。そして、一生懸命勉強してくれた子どもたちに小丸さんは、「みなさんはもう私たちと同じビーキーパーです。ビーキーパーというのはミツバチを飼う、愛する人のこと。これからはビーキーパーとして行動して環境のことも考えてほしい」と、それぞれの名前が書かれたBEE SCHOOLの修了証書が子どもたちに渡されました。
最後に「私たちが思っている以上にミツバチは減っています。この10年間で北半球のミツバチが4分の3になりました。これからもっと減ることが予測されますし、それを止めないといけないと私は危機感を持っています。少しでも街に花や緑を増やしてもらえればなと思って、菜の花の種を配りますので、お家に持って帰って植えてください」という小丸さんの言葉とともに第一部は終了しました。
東西を代表するプロジェクトの2人が
トークショーをする第二部がスタート。
休憩を挟んで夕方5時に始まった第二部では、東京の銀座、大阪の梅田…東西を代表する繁華街で都市養蜂をする2人、銀座ミツバチプロジェクトの田中さんと梅田ミツバチプロジェクトの小丸さんが登壇、トークショーを行いました。まずは小丸さんが、2009年の冬にスタートした梅田ミツバチプロジェクトをはじめたきっかけを語ってくれます。
「海外のインテリア雑誌に、パリで都市養蜂が始まっているという小さな記事が掲載されていて。それは都会の中で小さな自然への興味を呼び覚ます環境活動で、自然、街、人をひとつにつなげることができる大きなポテンシャルがあるということが書かれていました。これって私たちが気づいていない何かを教えてくれるすごく大きな存在になるんじゃないかと直感して、都市養蜂についていろいろと調べ始めました」
世界各国でどのような都市養蜂が行われているかを調べた小丸さんは、早速海外視察も行います。
「一番最初に行ったのはパリ。オペラ座やルーヴル美術館など、誰もが知っている建物の屋上で普通に養蜂が行われているんですよ。また、リュクサンブール公園の中にも養蜂場があり、周りは高さ20cmぐらいの柵しか設けてないので、誰でも身近に体験できる。パリ市が運営していることにも驚きました。ニューヨークでは、元々古い鉄道の高架だったハイラインを壊さずにそのまま生かして、2.3kmを緑化したんですね。そこで野菜をつくったり、養蜂をしている。古い施設をスクラップアンドビルドするのではなく、都市で生活している人たちがより快適な生活をできるように活かしていることに感銘を受けましたね」
海外での都市養蜂を実際に見て刺激を受けた小丸さんは、建て替えられる前のヤンマー本社ビルで養蜂を始めます。現在は建て替えたビル最上階屋上の吹き抜けにある、第一部で実況中継した円形ガラス張りの空間で養蜂をしています。
「ガラス越しに、養蜂やミツバチの様子を子どもたちが見ることができます」と小丸さん。
さらに小丸さんは、フランスの化粧品ブランド「GUERAIN(ゲラン)」が、貧困国の女性のサポートや女性の地位向上を目指す一環で、世界各地で女性養蜂家を育てる「WOMAN FOR BEES」という活動を2020年から開始し、日本では2022年から梅田ミツバチプロジェクト、翌年から銀座ミツバチプロジェクトが提携して実施。毎年6〜8名の女性養蜂家を育てていることも紹介してくれました。その一環で、梅田の研修には、アンジェリーナ・ジョリーさんも参加したそうです。
銀座という日本一洗練された街で
始まったミツバチプロジェクト。
続いて、2006年に日本で初めて都市養蜂をスタートした銀座ミツバチプロジェクトについて田中さんが話をしてくれました。
「私は当時銀座にある紙パルプ会館というビルで働いていて、そこで銀座の街を学ぶさまざまな研修会をやっていたんですけど、あるとき岩手県の養蜂家さんとの出会いがあり、ビルの屋上で養蜂をやりませんか?という話になった。てっきり彼がやってくれるのかなと思っていましたが、こっちでやれと(笑)。最初はできるのかなぁと思いましたが、江戸時代から消費するだけの街だった銀座で天然のハチミツが採れたら面白い、銀座にはたくさんのストーリーがあるけど、そこに環境への視点が加わるのはすごくステキだと思ったんですね。もちろん繁華街でハチを飼って大丈夫かという声もあったので、そこからみなさんを説得してプロジェクトが始まりました」
3箱の巣箱でスタートして、最初は150kgだった採蜜量も今は4.8tと、国産はちみつ生産量の0.1%を超えるほどに発展した銀座ミツバチプロジェクト。採蜜量だけでなく、都市養蜂を軸にした活動がさまざまな広がりを見せています。
「銀座の400軒以上が集まる料理飲食業組合連合会が賛助会員として入っていて、一流のシェフや世界チャンピオンのバーテンダーなどといっしょに作業してハニーカステラなどの商品をつくり出す。そういう関係がスタート時からできたのはよかったですね。また、大分のカボスや広島のレモンの苗を植えるなど日本各地と交流。特に福島市とは、蜜源を増やそうと福島市荒井産の菜の花を松屋、三越百貨店などに植えたり、銀座中学校に福島の西信中学校の子どもたちが来て交流するなど、どんどん地域との関係を深めています」と田中さん。
さらに銀座ミツバチプロジェクトは発展をし続け、田中さんの発案で、屋上で育てたサツマイモを焼酎の材料に使用する「芋人」の活動もスタート。この芋人プロジェクトは、名古屋、札幌、宝塚。下関など全国に広がっています。そのほか、島根県の萩・石見空港で養蜂を始めたり、千葉では千葉市商科大学、明海大学のキャンパス、東京・足立区の都内最大の精神科病院・足立病院でも養蜂がスタートするなど、さまざまな連携が広がってきたと田中さんが紹介してくれます。
「環境というのは、いろんなところでつながりやすいということです」と言う田中さんの言葉が印象的でした。
ここで小丸さんは、田中さんに「東京では、先ほど紹介したニューヨークのハイラインのような構想があると聞いたのですが…?」と問いかけました。
「私、銀座のある東京都中央区のグリーンインフラの委員を10年以上やっています。これは、水と緑が持つ機能を活用した、持続可能な街づくりを進めるものですが、構想のひとつとして、地下化する予定の日本橋の高速道路、今年4月に廃止された東京高速道路を緑化する計画があります。そこに、全国47都道府県の名産品を植えて、マルシェやお祭りをしたり、多様なコミュニティを生むことを目指しています」
田中さんの説明に、小丸さんは「日本で暮らすものとしては、ぜひ実現してほしいですね」と目を輝かせます。
ミツバチにとって最高の環境で
養蜂をする大丸心斎橋店。
東京での養蜂に続いては、2020年に始まった大丸心斎橋店屋上での養蜂へと話が進みます。まずは、一度現場を視察したことがある小丸さんが次のように感想を述べました。
「自分がミツバチだったらここに住みたいと思うような、すごくいい環境なんですよ。まず見晴らしがいいので、いろんなところに行って、いろんなところから帰ってきやすい。実際によくはちみつも取れるそうですが、環境がよくてミツバチの数が多かったので当然です」
小丸さんの言葉を受けて田中さんは、「うらやましいなと思うのは、屋上で採れたはちみつをすぐ地下の食品売場で売ることができるわけですから、究極の地産地消ですよね」
田中さんの言葉通り、大丸心斎橋店では地下1階のはちみつ専門店「ラベイユ」にて、屋上で採蜜された「心斎橋のはちみつ」を常時販売。(※無くなり次第終了。)そのほか同じ地下1階の食品売場では、カステラの人気店「黒船」で「心斎橋はちみつファンク」(※無くなり次第終了。)、サステナブルなお菓子づくりに取り組む「GOOD NEWS OSAKA」(※販売時期は店頭にご確認お願いします。)の「バターのいとこ 大丸心斎橋店限定 ハニー&ミルク味」など、「心斎橋のはちみつ」を使ったお菓子が販売されるほか、館内のレストランやバーでも、屋上で採れたはちみつを使ったメニューを展開していました。
※2025年10月の情報になります。 ※販売状況については店頭にご確認お願いいたします。
小丸さんはさらに田中さんに、「ミツバチプロジェクトとして、大丸心斎橋店といっしょに何ができそうですか?」と問いかけます。
「大丸心斎橋は来年創業300周年じゃないですか。次の300年は環境を考えることがマストで、大丸心斎橋店さんはあれだけのスペースを街の中心に持っているわけですから、やはり街の顔として次の環境のデザインや共生を地域と共に考えていってほしい。たとえば保育園児や幼稚園児といっしょに街に花を植え、子どもたちが自分たちで育てた花にミツバチが来たよと絵を描いてくれたり。そういうふうに街がつながっていくのは、ステキじゃないかなと思うんですね」と言う田中さんに続き、「まずはBEE SCHOLLをやりたいですよね。百貨店に来てくれる子どもたちが、いろんなことを気づく舞台になるかもしれない」と小丸さん。
2人の熱き養蜂家の話はさらに続きます。
銀座ミツバチプロジェクトでは、銀座にショールームがある黒川鞄のランドセルを縫う糸に蜜蝋を染み込ませて撥水性を上げたり、サッポロビールとともに、ミツバチが採取した花粉の酵母を使ったビール「銀座ブラウン」をつくったりして、新しい価値がどんどん広がっていること。梅田ミツバチプロジェクトでは、お菓子の「OSAKA HONEY」、メンテナンスコスメ「MITSU」という自社ブランドを発足。はちみつを使ったフードとドリンクが楽しめるカフェ「B HONEY」を2024年にオープンし、大阪・関西万博のモナコ公国パビリオンで展示されていたミツバチの展示を譲り受けて設置することなど、都市養蜂が持つ限りない可能性を感じさせてくれるエピソードを披露してくれました。
最後に、小丸さんが、「都市養蜂を始めて継続するために必要なことは?」と田中さんに尋ねました。
「ミツバチがそばにいると怖い、危ないというイメージがまだあります。そのへんを理解してもらうことが大事ですね。日本の養蜂家は、今、約11,000人。韓国は約30,000人いて、九州ぐらいの小さい領土のスイスで約20,000人、ドイツは150,000人。養蜂大国と言われるスロベニアなんかは、全人口の200人にひとりが養蜂家。20人にひとりが養蜂関係の仕事をしています。そう考えたら、日本ももっと養蜂に関わる人が増えていってもいい。そして、飼育する側のしっかりした知識を確立させていくことが必要です」と田中さん。
SDGsやサステナブルな社会が根づきつつある今、都市における養蜂の意義を参加者たちがしっかり感じ取った様子でイベントは終了しました。個人でも企業でも、小さなアクションを続けることで地球の未来を変えることができる。大丸心斎橋店での都市養蜂もそのひとつとして、これからも活動を続けていきます。
田中淳夫
1957年東京都生まれ。大学卒業後、銀座にある株式会社紙パルプ会館に就職。2006年に養蜂家の藤原誠太さんとの出会いから、紙パルプ会館屋上で養蜂を始め、銀座ミツバチプロジェクトをスタート。銀座の街の活性化とミツバチが住めるまちづくりを提唱すると同時に、日本における都市養蜂のパイオニアとして、各地のミツバチプロジェクトの発足に協力し、全国各地にミツバチ仲間を広げている。
小丸和弘
1965年兵庫県生まれ。1990年にインテリア業界に入り、2000年に独立し、株式会社クルールを設立。レストランを中心にさまざまな店舗のデザイン、プロデュースを手掛ける。2010 年にデザイン業務と並行して梅田ミツバチプロジェクトを発足、2012 年大阪府と緑化活動の連携協定を締結、2013 年 NPO 法人化。2017 年に 6 次産業ブランド「大阪ハニー」を立ち上げ、現在に至る。
※今回掲載の内容は2026年1月9日現在の情報を掲載しています。
写真/竹田俊吾 取材・文・編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 編集・プロデュース/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
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