Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
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PROFESSIONAL'S EYES Vol.73
京山幸太、京山幸乃|浪曲師
大阪にゆかりのあるゲストを迎えて大丸心斎橋店を巡ってもらう「PROFESSIONAL‘S EYES」。今回は、昨年人間国宝(重要無形文化保持者)に認定された浪曲師、二代目京山幸枝若さんの弟子、京山幸太、京山幸乃さんが登場。日本の伝統芸能・浪曲を演じるために、日頃行っていることや考えていることを披露していただきながら、舞台衣装の着物で館内を巡ってもらいました。
自宅も近く、大丸心斎橋店にはよく来館するという幸太さん。ポケモンが好きで、9階の「ポケモンセンター 大阪DX&ポケモンカフェ」には特によく訪れるそうです。一方、8年前に師匠のもとへ入門するために関東から大阪に移住してきた幸乃さんは、東京に行くときのお土産や、来阪した友人などに渡すお菓子を大丸心斎橋店のフード&スイーツ・フロアでよく買うそうで、そんなときに店の前を通るたびに「ああ、いいなあ」と思っていた店が「神戸ビフテキ亭DELI PREMIUM」です。
「一度ここで食べてみたかった」という幸乃さんの念願を叶えるべく、まずは「神戸ビフテキ亭DELI PREMIUM」でランチすることに。注文をする前に、埼玉県川口市から大阪に来た幸乃さんに、2つの街の違いを聞いてみました。
「大阪では、歩いてるときやエレベーターに乗ったときなど、結構な確率で知らない方から話しかけられますね。『今日暑いなー』とか『そこ危ないで』とか、普通に話しかけられます。知り合いじゃないよね、と思いながら(笑)、関東ではまずないので、あったかいなあと感じますね」
それでは注文をと、2人はうれしそうにメニューを眺めます。幸太さんは黒毛和牛メス イチボステーキ、幸乃さんは黒毛和牛メス 赤身ステーキをセレクト。焼きかたも選択できるので、幸太さんはミディアム、幸乃さんは、「レアめが好きなので、ミディアムレアで」と注文。料理が出てくるまでの間、2人が浪曲師になったきっかけを聞きました。
「元々ヘビーメタルバンドでベースをやっていて、ベースがかっこいいブルースやファンクの音楽が好きになって、日本でもそういう類のものがないか、いろいろ聞いているうちに出合いました。音楽関係の方に師匠のことを聞いて浪曲教室に行き、すごくかっこいいなと思ってその場で弟子入り志願しました。18歳の時です。そこから1年ほど修業して2013年、19歳のときに入門し浪曲師になりました」と幸太さん。
幸太さんと同じように、幸乃さんも10代の頃からバンド活動をしたり、将来は歌や音楽活動に携わりたいと思っていたそう。そこから落語を好きになり、寄席で演じられる浪曲にも興味を持つように。大阪の一心寺門前浪曲寄席で聞いた師匠の浪曲に衝撃を受け、2018年に弟子入りしました。
2人の若者を浪曲への道に誘った二代目 京山幸枝若さんは、2024年度に浪曲師として初めて、そして吉本興業所属芸人としても初めて人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定されたほどですから、人を魅きつける特別なものをお持ちなのにも納得です。
お待ちかねのステーキが届いて、2人は小さく歓声を上げます。ステーキをひと口食べた幸太さんは「めちゃくちゃおいしい!」
肉にはステーキソースとわさびとカナダの岩塩の調味料がついています。
「それほど頻繁にステーキを食べるわけではないですけど、シンプルにお塩をつけるのもいいですね。やわらかくて、今まで食べたステーキの中で一番おいしいかも」と幸乃さん。
「幸太兄さんは体を鍛えてらっしゃるので、タンパク質が豊富な肉は食べないとですね」と振る幸乃さんに、幸太さんは「そうですね。ボディビルの大会に出ることもあって、結構鍛えてはいるのでお肉は食べますね。イチボは脂身も少なくて、さっぱりとしておいしいですね」
カウンターで笑みを浮かべながら和牛ステーキを堪能する幸太さんと幸乃さん。ここで、赤い山高帽と肉の総柄ベストという出で立ちの副店長の中島進一さんが2人の前に登場。40年もの間牛肉に関わっている肉のプロが、そのおいしさの秘密を明かしてくれます。
「和牛のメスだけを一頭買いしています。しっかりと牛を育てる人を選び、あとは僕らが熟成を見極める。1カ月ぐらい店頭で熟成して、店長が今日はこれにしようと選んで焼いています。品質管理も徹底していますよ」
「メス牛のほうがおいしいんですか?」という幸太さんの質問に、「そうですね。肌がやわらかいので」と中島さん。
「そのベストがかわいいですね」という幸乃さんのコメントに、「特注のオリジナルなんです。ジャケットもあります。かなり目立つので、『あっ! いたいた!』と、この服を目印に来店くださるお客さんもいます」と中島さん。
「宣伝効果バツグンですね」と言う幸太さんに、中島さんは「会社命令でして」と苦笑いです。
大丸心斎橋店の「神戸ビフテキ亭DELI PREMIUM」は、新大阪の「神戸ビフテキ亭DELI」に続いて大丸心斎橋店が2店舗目の出店。イートインできる席は4席で、テイクアウトできるバラエティ豊かな弁当は常時20種類以上並びます。
「和牛肉を使った日本一のお弁当屋さんを目指しています。オーナーはとにかくお肉を食べてお肉のことをわかってほしいという願いがあるので、普段使いの肉をできるだけ安くして売っている。ぜひ一度食べていただきたいです」と中島さん。
ここで、兵庫県加古川市在住という中島さんが、幸太さんに「加古川観光大使の先生にお目にかかれて光栄です」とひと言。
「うわ、知ってくださっていて、うれしい」と返す幸太さんは、加古川市出身で、今年の8月に加古川観光大使に就任したばかり。中島さんは、就任式の模様を掲載する加古川市の広報誌「広報かこがわ」誌面のキリヌキを見せながら「すごいですよ。先生はもう雲の上の存在です」と。
中島さんは幸太さんの浪曲もよく聞いているらしく、「浪曲界の若きエースですからね。そのうち師匠に追いつくかもしれない。浪曲を今風にアレンジしてるから、若い人にもウケるんじゃないかな」
「そんなに聞いていただいているんですか。ありがとうございます」と幸太さんは恐縮しきりです。
さらに、幸太さんの浪曲を褒めあげる中島さん。
「本当に強弱のつけ方がお上手ですよね。先生の浪曲を聞くと情景が見えてくるんですよ。普通は何年も修業してやっとできることやけど、この若さでできるというのは才能ですよ」とベタ褒めする中島さんに、幸太さんは照れながら、「すごくよく言ってくださって、ありがたいです。やはり浪曲は啖呵(セリフ)や節(歌)を覚えるだけじゃダメで、物語の風景を思い浮かべながら演じるんですよね」
幸太さんの言葉を受けて、「わかりやすかったと言ってもらえるとうれしいですね」と幸乃さん。幸太さんはさらに続けます。
「映画やお芝居は、役の衣装も着るし背景も設定するので、ちゃんとビジュアルが見えるんですけど、われわれはいつも着物だけで演じます。だからこそ、読書と同じようにお客様が自由に想像できる。風景はお客様がつくるものであって、共同作業のような楽しさがあります。お客様も想像して作品の世界をクリエイトしている、双方向な関係だと感じます」と幸太さん。
2人は、焼いた牛の骨髄から出るエキスとタマネギなどの野菜を48時間煮込んだ自家製ボーンズブロスひとくちカレーも試食してすっかり完食。大満足で店を後にしました。
ここで、幸太さんは次に訪れる「Dr.stretch(ドクターストレッチ)」で着るウェアへ着替えるため別室に向かいます。単独で幸乃さんが訪れたのは「チャコット大丸心斎橋店」。「チャコット」は、バレエをはじめ、ヨガなどで使うウェアやグッズ、そしてコスメを数多くそろえた今年75周年を迎える伝統あるブランド。大丸心斎橋店は今年2月にオープンしました。
「浪曲の舞台用の化粧品を探していて、『チャコット』さんには前々からぜひ訪れたいと思っていたんです」という幸乃さんに対応してくれたのはスタッフの髙木さん。
「舞台だと顔がテカりやすいので、それを抑えるようなコスメがあればいいですね」と言う幸乃さんに、「かしこまりました。テカリ防止だとこれがおすすめです」と髙木さんが提案してくれたのがフィニッシングパウダーです。
フィニッシングパウダーは、保湿性のあるモイスチャータイプとマットタイプがあります。
「舞台用で使うならマットがおすすめです。キープ力が高いのでバレエをされる方でもマットを必需品として使われる方はとても多いです。カラーはナチュラルとクリアとライトオークルの3種類。幸乃さんはお肌がすごくお白いので、ナチュラルかクリアがお肌に合うかなと思います」
説明を聞いた幸乃さんは、「クリアを買おうかな。実は前々から狙っていたんです」
さらに舞台用に特化したファンデーションを紹介してくれます。
「強い照明を受けるお肌をケアするのにおすすめなのが、こちらの黒のパッケージのスティックファンデーション。発色がよくて“ザ・舞台向き”の商品です」
ずらりと並んだ黒のパッケージを見て、幸乃さんは「色のバリエーションがすごく多いですね」
「そうですね。お役柄によって合う色みが違って、たとえばクラシックバレエだとピンク系を使うことが多いですね。浪曲師さんだとライト系あたりが一番お肌をきれいに見せてくれると思います。演目によって血色感を出したいようなときはピンクあたりでもいいと思います」と髙木さんが解説してくれます。
さらに浪曲師・京山幸乃さんへのアドバイスは続きます。
「幸乃さんが浪曲を演じる動画を拝見したのですが、お顔の表情が結構動いてらっしゃるので、肌のツッパリ感があるかないかが大事になってきそうですよね。こちらのスティックファンデーションはツッパリ感がないので、浪曲師さんにはいいと思います」
「『チャコット』の化粧品は、舞台用として落ちにくく、一般のシーンで使うときも、汗をかいてもメイク崩れしにくいと、すごく人気がありますよね」
幸乃さんのコメントに、髙木さんは「私どもにかわって解説していただきありがとうございます(笑)。舞台用から派生した一般コスメなので、崩れにくさとアイシャドウなどの発色のよさが強みとなっております」
「そうですよね。こちらのピンク色の商品も舞台用と普段用、両方使えますか? 今すごく話題になっているので気になっていました」
そう言って幸乃さんが注目したのは、ラスティングベース モイストCの限定カラー、ピンクがかったナチュラルコーラルです。
「はい、こちらは期間限定の商品で大変好評をいただいており、まとめ買いしてくださるお客様もいらっしゃいます。少量でも結構伸びるテクスチャーで、パール感があるので、ツヤを出すのにおすすめです」と言いながら、髙木さんは幸乃さんの手にテスターを塗っていきます。
「そこまでピンクピンクしてはいませんね」と言う幸乃さんに、「そうですね。ちょっと血色がよく見えるので、日本人の肌にはおすすめの色みでなじみやすいです。これに同じピンク系のフィニッシングパウダー モイストC パールピンクを重ねると、さらにラメ感、ツヤ感が出ます」と髙木さん。
フィニッシングパウダーを塗った幸乃さんが「サラっとしていますね」と感想を述べると、「そうなんです。汗を吸いやすいタイプになっているので、テカりにくいと思います。浪曲を演じるときは結構ライトが強いですよね?」と髙木さんが聞き、「そうなんですよ」と答える幸乃さんに、「そういうシーンにもおすすめです」と髙木さん。
さらに髙木さんは、「こちらがピンク系のモイストタイプのフィニッシングキープミストで、お化粧水としても使えます。メイクをキープできるミストで、舞台が終わった後に、お肌が乾燥しちゃったなというときにも、上からシュシュっと振りかけていただければ潤いも戻ります」
手につけた幸乃さんは、「爽やか香り。思ったよりすぐ乾きますね」
顔まわりの化粧品に続いては、ヘアケア製品にも興味津々の幸乃さん。
「最近髪を短くして、髪がパラパラと乱れやすくなったので、なにかいいものがないかなと探しているところなんです」という悩みに、「こちらのEXハードジェル 0980がおすすめです。水溶性でヘアウォーターなどとも相性がよく、しっとりしたテクスチャーで、すぐ髪をまとめられる。お直しにもコームが通りやすいので、舞台用にもいいと思います」と髙木さん。
髙木さんの説明を聞いた幸乃さんが「いつもスプレーなんですけどジェルもいいなと思っていて。これは普段使いというよりは舞台用ですかね?」と聞くと、「少量だったら普段でも使っていただけます」
舞台用としてだけでなく、普段使いにも優秀なコスメやヘア小物に幸乃さんは感心しきりです。
「浪曲師になる前は趣味でフラメンコを習っていて、舞台化粧品をよくチェックしていたんですけど、舞台化粧品と言ったらやっぱり『チャコット』さんというイメージがありますね」
モデルやヘアメイクも愛用している人が多いという「チャコット」のコスメ。浪曲の舞台でもひときわ映えそうです。
続いては、着替えを終えた幸太さんが、心斎橋パルコ8階にある「Dr.stretch(ドクターストレッチ)」を訪れました。
「落語家さんの先輩で『ドクターストレッチ』に来ている人がいて、『いいよ』とおっしゃっていたので、一度来てみたいと思っていたんですよ」
今回、15分のトライアルコース(所要時間約40分、ストレッチ体験約15分)を体験していただきました。施術してくれたのは店長でコアバランスストレッチトレーナーの山口颯斗さんです。
まずはカウンセリングからスタートしました。
「肩や腰、足など、お悩みの箇所があれば、それに合わせて体のプランを考え、ストレッチ、柔軟をさせていただいています」と言う山口店長に、「浪曲の台本を書くとき、長時間パソコンに向かって座っていることが多く、目も悪いので肩まわりにこりや疲れが出てるのかなと思います」と幸太さん。
幸太さんの悩みを聞いた山口店長は、「わかりました。それでは上半身のストレッチをメインに施術させていただきます。最初に申し上げておきますが、コアバランスストレッチは、準備運動などでするストレッチとちょっと違っていて、気持ちいいというよりも少しきつさがあります。その中でも一緒に頑張ってやっていただけたらなと思います」
「そうなんですね…」と言いながら、若干不安げな表情を見せる幸太さん。まずは座って、手を上に伸ばして合わせたり、体の状態を確かめていきます。
「次は腕のストレッチをします」と言いながら、山口店長は仰向けに寝た幸太さんの左右の腕を伸ばしていきます。
「あっ、すごい!腕がめちゃくちゃ伸びている感覚があります。それほど痛くはなく、気持ちいいぐらいの痛みです」と幸太さん。
「次は“肩甲骨はがし”をしていきましょう」と、山口店長は幸太さんを横向きに寝るように促します。
「結構痛いですけど、一瞬我慢してください」という言葉に、幸太さの表情には少し緊張感が垣間見られます。
右側の肩甲骨をはがされた幸太さんは、「それほど痛みはないです。うわー、肩甲骨が浮いている感覚が少しあります」
施術を続ける山口店長との会話の中で、「たまに自分でストレッチをすることもあります」と言う幸太さんに、「YouTubeとかを見てされていますか?」と聞く山口店長。「いえ、なんとなく伸ばしているだけです」と幸太さん。
「『ドクターストレッチ』の公式のYouTubeがあるので、そちらを見ながら家でもやってみてください。ストレッチを間違ったやり方でやると、変に力んでしまったり、ケガにつながることもあるんです。正しいやり方かどうか、見本を見ながらやるのがおすすめです」と山口店長。
最後に背中への施術をしていきます。
「これが一番こたえますね」と苦悶の表情を見せる幸太さんに、「広背筋が少し硬いかもしれません」と山口店長。
肩周りのこりや疲れの解消を目的にしたトライアルコースも終わり、山口店長が解説をしてくれます。
「普段のデスクワークの体勢がどうしても前屈みになっているので、肩の筋肉が硬くなっています。そこに脱力感を促してあげるのと、ストレッチをして柔軟性を与えることで腕を上がりやすくしています。柔軟性は続けてやらないと元に戻りますので、体質改善を目指してこれからも続けていただければ」
山口店長の言葉を受け、「(施術前と後では)全然違う。こんなに変わると思わなかったです」と幸太さんも満足そうです。
再び2人が合流して訪れたのが、大丸心斎橋店本館8階の「漆器 山田平安堂」。1919(大正8)年に、京漆器の専門店として東京・日本橋で創業。その後、代官山に本店を移転し、2017年には「GINZA SIX」に出店。昨年9月に、大丸心斎橋店に関西で初めての直営店をオープンさせました。
浪曲師の2人が「漆器 山田平安堂」を訪れた理由は、舞台で使う道具として漆塗りの湯呑みがあるからです。
「特に決まりはないと思うのですが、漆塗りの湯呑みを使っている人が多いんです。お湯を入れて舞台の合間に喉を潤す。30分浪曲を演じると途中で喉が枯れてきたりもしますので。お湯をごくりと飲む人もいれば、お湯の蒸気で喉を温めるだけの人もいます」と幸乃さん。
「私は、喉を潤す程度に、少しだけ飲みます」と言う幸太さんに、「舞台で少し間をつくりたいときに、あえて飲むときもありますね。私がやっている『幸助餅』というネタで主人公がお茶を飲む場面があるんですよ。“ほっと一息ついて腰を下ろしてお茶を飲んでいる途端に表から〜”って、このときは本当に湯呑みを持って飲んでいますね」と幸乃さん。
湯呑みのほか、漆器が数多くそろう店内で、店長の陳ケンゲンさんに、幸乃さんが聞きたかったという漆塗りの扱い方を聞いていきます。
「漆塗りは普通に洗えるんですか?」という質問に、「そうですね。中性洗剤をつけてやわらかいスポンジで洗っていただければいいと思います。思ったより簡単だと思います」と陳店長。「あまり熱すぎるお湯もよくないと聞いたのですが…」と聞く幸乃さんに、「そうですね90度以下がいいと思います。温度が上がりすぎると黒や朱色の漆の色が白くなったりすることもあります」と陳店長。
真剣な表情で陳店長の説明を聞いていた幸乃さんは、「実は『漆器 山田平安堂』さんは個人的にもお世話になっていまして。うちの師匠が人間国宝に選ばれたとき、記念の品をつくりたいと言うので私が手配したのですが、こちらのHPを見て、ここにあるような時計を選んで、裏に名入れをしてお贈りしました」
ここで中国出身の陳店長が、「漆器 山田平安堂」で働いて7年になると知り、「日本語うますぎますよ」と驚く幸太さん。自身も中国語を勉強しているということで、中国語で挨拶をすると、陳店長は「上手い上手い」と喜びます。
今、店を訪れるお客様はやはり中国の方をはじめとする海外からの渡航者が多いらしく、「金箔をあしらったものなど、和の雰囲気がある商品が人気です」と陳店長。
置時計の近くに展示されていた商品に注目した幸乃さんが、「ここに手文庫がありますけど、現代ではあまり使わないですよね」と陳店長に聞くと、「手文庫は、昔はいろいろなサイズがあったのですが、弊社はA4サイズに統一して、ビジネス資料などが入るようにして利用しやすいようにしています」
幸乃さんが「実は、手文庫って浪曲の中に出てくるんですよ。『左甚五郎』という題目で」と言うと、「確かに“手文庫の蓋を空け〜”って言ってます。虫眼鏡を入れてましたね。今この商品を見て、ああこういう感じかと思いました」と幸太さん。
「漆器 山田平安堂」には、古くから長く続いている商品だけではなく、新しい発想で生まれた商品もあり、「龍」シリーズもそのうちのひとつです。
「空を舞う龍をイメージし金彩の刷毛目で描いています。洋食器もあり、いまどきのライフスタイルにも合うのではないでしょうか」と陳店長。
伝統あるものに新しい風を吹きこむのは浪曲も同じ。落語と同じように、古典に加えて新作をつくることも多いという幸太さん。
「今は『源氏物語』をベースにした浪曲の台本を書いています。かつてはボディビル浪曲やギャルのパラパラ浪曲も演じました。節と啖呵で演じるというベースを守れば、題材はなんでもいいんですよ」と言う幸太さんに、幸乃さんは「時代設定も自由で、最初は江戸時代っぽく話に入るけど、阪神タイガースの選手が出てきたりする演目もやりました。節があるので、やはり和風が合うんですけど、ギャル浪曲みたいに外すのも面白いなと思っています」
バラエティ豊かな商品が並ぶ店内を見ていた2人ですが、「これ、いいですね」と幸乃さんが手に取ったのは、ひょうたんの絵柄が描かれた酒器。宮内省御用達の菓子器・ボンボニエールなどの小物にも、鶴と亀、だるま、てんとう虫など縁起がいいものをモチーフにしているものが多いのが特徴的です。
「基本は春夏秋冬の季節を表しているもの、あとは松竹梅や鶴と亀、富士山やひょうたんなど縁起のいいものが多いです」と陳店長。
かわいくてめでたい小物や酒器を、日常に取れ入れるのもよさそうです。
「漆器 山田平安堂」の酒器を見ていてお酒を飲みたくなった(?)2人が最後に向かったのは「Liquarshop GrandCercle(リカーショップ グランセルクル)」。
ワインやウイスキー、焼酎、日本酒など、国内外のさまざまなお酒が500種以上もそろうショップです。今回ご対応いただいたのは、ソムリエの橋本高志さん。
幸太さんは仕事柄、人との出会いが多く、お酒を飲む機会も多いそう。個人的にもお酒は好きとのこと。
「お酒はなんでも飲みますが、最近蔵元見学に行って初めて飲んだ日本酒の古酒にも興味があります。おいしかったですね」
一方幸乃さんは、「飲むことは飲みますが、それほど多くの種類を飲んだことがないので、味の違いなどはそれほどわからないので教えてほしいです」。
そんな2人に、橋本さんが薦めてくれたのは、ジャパニーズウイスキーです。
「ジャパニーズウイスキーって増えているんですか?」という幸太さんの質問に「増えていますね。今蒸溜所は100を超えています。今回お薦めするのは、僕らが“ジャパニーズウイスキー・第2世代”と呼んでるものです」と橋本さん。
第2世代とはどのようなものでしょうか? 気になります。
「サントリーやニッカ、イチローズなどおなじみの第1世代に続くのが第2世代です。これが第1世代にも負けないぐらい実力がありまして。日本らしい繊細さとやわらかさを持っています。こちらは店で試飲できるので飲んでみますか?」という橋本さんの提案に、2人はうれしそうに「ぜひ! お願いします!」。
今回2人が試飲した2本のウイスキーは、ともに今年発売されたばかりのニューフェイス。まずは大分県久住蒸溜所の「シングルモルト久住 ザ・ファースト」を口にします。
「やわらかくて、飲みやすい。やさしいというか癒されますね」と笑みを浮かべる幸太さんに、「いい香りがします。私は飲み慣れてないんですけど、ウイスキーってみんなこんなに香りがするもんなんですか?」と幸乃さん。
続いて試飲したのは、静岡県井川蒸溜所の「シングルモルト デッサンシリーズ ファウナ2025」。井川蒸溜所は静岡県の製紙会社が親会社で、県最北端の南アルプスにある自社市有林の中に蒸溜所を2020年に開業させました。
「度数が53度なので、サントリー角瓶など標準的なウイスキーの40度に比べてかなり高いですね。先ほどの『シングルモルト久住 ザ・ファースト』も58度と高いですが、これはできたウイスキーの原酒に加水していないからです」と橋本さん。
香りを嗅いだ2人は口をそろえて「『久住』とは全然違いますね」
「スモーキーでスコッチっぽいですね。ピート香もします」と言う幸太さんに、「少しピートも炊いていると思います。スコッチはパンチが強いですが、こちらは日本らしいやわらかさがあると思います」と橋本さん。
2つのジャパニーズウイスキーを橋本さんは、「やはりていねいにつくっているなというのが伝わるウイスキーじゃないでしょうか。中国の方などに飲んでいただくと、結構感動してもらえます」と説明してくれました。
飲み比べた2人にどちらが好きだったかを聞いてみると、幸乃さんは「どっちも全然違っておいしくて比べにくいけど、どちらかといえば『久住』が好きですね」。幸太さんは、「スコッチが好きなので、『ファウナ』ですね」
「お酒をつくりだして3年から5年ぐらいの第2世代がやっと今年発売されたという感じです。来年になるとまた次世代が登場予定で、これからジャパニーズウイスキーが楽しみですね。今日飲んでいただいたウイスキーあたりが世界で評価されていったら、もっと盛り上がるでしょうし」と橋本さんは今後に期待を込めます。
「これは贈り物の選択肢としてすごくいいですね。パッケージもおしゃれだし」と言う幸乃さんに、「いいと思いますね。まだあまり世に知られていないこともギフトとしてポイントは高いかもしれません」と橋本さん。
幸乃さんは、今回の試飲で新境地に目覚めたようです。
「私、今まで家でひとりで飲むということはしなかったんですけど、こういうウイスキーだったら、ひとりでチビチビ飲むのもありですね」と言う幸乃さんに、家でのひとり飲み向けお酒のおすすめを聞いたところ、橋本さんが薦めてくれたのはやはり国産のジンです。
「ジン、最近流行っていますよね」と言う幸太さんに、「日本人って原料のボタニカルをていねいにつくるので、きれいなジンができる。個性的な味もあれば、飲みやすいものも。テイストはさまざまですね」と橋本さん。
個性的なジャパニーズジンの代表として、橋本さんが紹介してくれたのは、宮崎県の尾鈴山蒸溜所の「オスズ ジン キンカン」。尾鈴山蒸溜所は芋焼酎の「尾鈴山 山ねこ」をつくっていますが、それをベースにしたスピリッツに無農薬金柑を贅沢に使っています。
幸太さんが試飲をしてみます。
「うわ、香りがすごい」と驚く幸太さん。
「これも海外の方が試飲すると、よく買っていかれますね。海外にはあまりなく、日本らしくてキンカンの質がいいんでしょうね」と言う橋本さんに、「これは確かに買いたくなりますね。ジンは家ではあまり飲んでこなかったので、『オスズ ジン キンカン』、1本買って帰ります」と幸太さん。
お酒が好きな幸太さんですが、「次の日に舞台があるときは、控えめにしています。朝10時から舞台のときは、朝5時には起きておかないと声が出ない。目を覚ますだけでなく声を起こさないとダメなんですよ」
幸太さんの話を受け、幸乃さんも「できるときは舞台の前日に声を出しておくようにしています。落語の寄席で演じるときなど浪曲はリハーサルできないし、一席が30分ぐらいと長いですから、舞台中に声を温めていく感じです」
節と啖呵だけで物語を演じる浪曲の世界、喉と声は最も大切にしなければならないもの。国宝たる師匠のもとで修業する、若い2人の活躍にこれからも期待したいものです。
1994年生まれ。兵庫県加古川市出身。2013年に二代目京山幸枝若に入門し、2014年に国立文楽劇場で初舞台を踏む。2022年は文化庁芸術祭新人賞、2023年には咲くやこの花賞、大阪文化祭賞奨励賞を受賞するなど関西浪曲界のホープとして活躍中。SMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)に所属してコントも披露し、R-1グランプリ2023では準々決勝に進出。2025年より加古川観光大使に就任。
1987年生まれ。埼玉県川口市出身。2017年、大阪の一心寺門前浪曲寄席で聞いた二代京山幸枝若の浪曲に感銘を受け大阪に転居。2018年に入門する。現在大阪を中心に東京や京都でも活動中。アニメ化が決まった『オタクに優しいギャルはいない!?』作者の漫画家・魚住さかなの実姉。
※今回掲載の内容は2025年11月10日現在の情報を掲載しています。
写真/岡本佳樹 取材・文・編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 編集・プロデュース/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
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落合健太郎|ラジオDJ