Professional's Eyes
スタイルのある暮らし
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
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PROFESSIONAL'S EYES Vol.71
正木明|気象予報士・防災士
大阪にゆかりのあるゲストを迎えて大丸心斎橋店を巡ってもらう「PROFESSIONAL‘S EYES」。今回は、テレビ番組『おはよう朝日です』で長年気象キャスターを務め、関西の朝の顔として親しまれている正木明さんがゲスト。気象予報士であるがゆえ、最近の温暖化などの気候変動を気にかけ、地球の環境を守るためのさまざまな活動をされている正木さんに、館内を巡りながら、気候のこと、地球環境のことについて話をしてもらいました。
「ギネスに申請したけど、アメリカにはもっと上がいました(笑)」
関西の朝を代表する人気テレビ番組『おはよう朝日です』の天気予報のコーナーに出演し続けて36年目を迎える正木明さん。テレビの天気コーナー世界最長寿とはいかなかったようですが、長年朝の顔として活躍されています。そんな正木さんがまず訪れたのが大丸心斎橋店本館7階にある「TUFFE TERRACE EAT(トゥッフェ テラス イート)」。テラス席もあり、自然光が入る店内の窓際からも心斎橋の空を眺めることができる、とても気持ちのいいカフェ&レストランです。
窓際の席に座った正木さんは空を見上げて、「今日の空は穏やかですね。ここにきて大気の状態は落ち着いて、先週や先々週みたいな突然の雷雨はおさまりました」と、早速さすがベテラン気象予報士ならではのコメントが聞けました。
続けて、おすすめのドリンクをスタッフに聞く正木さん。「甘いのはお好きですか?」というスタッフの問いかけに「はい」と答え、勧められたチャーミーさん家のエルダーフラワーソーダを注文します。オーガーニックコンシェルジュのチャーミーさんのレシピによる自家製エルダーフラワーシロップのソーダ割り。エルダーフラワーは「万能の薬箱」とも呼ばれるハーブの一種です。
ドリンクが来るまでの間、正木さんがなぜ気象予報士になったのかをお聞きしました。
「生まれは尼崎なんですが、2歳で鎌倉に引っ越したんです。ずっと海の近くで育って、大学時代にサーフィンと出会いました。サーフィンって波がないとできないスポーツなので、波がいつ、どこで、どれぐらいの大きさで立つかというのを、自分なりに予測して楽しむという文化が湘南エリアにはあったんです。これはなかなかカッコいいなあと思って私も始めて。波をつくる風の勉強もしていく中で、気象の世界は面白そうだなと思って。(株)ウェザーニューズという会社が求人募集していて、運よく入社できて、気象の世界に入りました」
今も続けているサーフィンが、気象予報士・正木明の原点だったのですね。ここで、運ばれてきたチャーミーさん家のエルダーフラワーソーダを見て、正木さんは「色がきれいですね」とひと言。ドリンクを飲んで「めっちゃおいしいです。甘さはほんのりありますけど、さっぱりしています」
今年は、明治政府による気象観測が始まって150年という記念すべき年ですが、去年の6月には正木さんが呼びかけ人となって、日本の気象予報士44人が、「気候変動問題解決に向けた命と未来をつなぐ行動を加速させる」という共同声明を発表しました。
「日本の気象予報士がどんな考えを持っているかというのをちゃんと押さえようという機運が盛り上がってアンケートを取りました。9割ぐらいの方が、やはり気候変動を問題視していて、何かを発信したいという想いがあるというのがわかったので、有志が集まって宣言をしました。私も去年の秋から『おはよう朝日です』の天気予報の中で、温暖化の影響でこれだけ気温が上がっていることを示す温暖化指数を、番組の理解も得て伝えています」
気象予報士が危機感を感じるように、地球温暖化による気候変動の問題は本当に深刻な状況になっています。正木さんは、このまま温暖化が加速すると、未来はとんでもないことになると警鐘を鳴らします。
「今のまま何も対策をとらないと、2100年には地球の平均気温が今より、3、4℃上がるという予測があります。今の温暖化は18世紀末のイギリスの産業革命あたりから生産活動が活発になって、蒸気機関車や自動車などをつくり二酸化炭素を大量に出し始めたのがスタートと言われていて、それが今に至るまで続いている。産業革命の頃から今までの気温上昇って1.4℃なんですよ。1.4℃の上昇で今あるいろんな異常気象が起きているって考えたら、4℃上がるとどうなるか? まあ普通の生活はできなくなるでしょうね」
では地球温暖化に対処するために、どうすればいいか? 正木さんは話を続けます。
「仕事、学校や教育、いろんなところで今のこの気候に合わせていかないと、どこか破綻していくんだと思います。環境問題って“緩和と適応”って2つ対策がいるんですね。“緩和”というのは温暖化を止めましょう。二酸化炭素の排出を抑えましょうということ。“適応”というのは、温暖化がある程度進んでしまっても適応しましょうというもの。適応ばっかりやっていても、緩和しないと温暖化がどんどん進行するので、根本的にどこかで社会を変えていかなといけない段階だと僕は思っているんです」
未来へ向けて何かを変えていくために、正木さんは2022年から、子どもたちに向けて気候危機をテーマにした出張授業プロジェクト『地球ラボ』を開始し、関西を中心とする小学校へ出向いています。
「今授業をしているのは小学校高学年が多いのですが、ほとんどの子どもたちがたった十数年生きているだけで地球の天気がおかしくなったと実感しています。2100年に4℃上がる予測があると話しましたが、今10歳の子は2100年には85歳。その地球を経験する可能性は高い。それを聞いた子どもたちは『そうかー』って自分事ととらえます。だから温暖化を止めていかなければならないし、君たちはすぐに何かできるというわけじゃないけど、この話をお家へ持って帰って、お父さんやお母さんと話をしてごらん。できることがないか考えてごらんって話をします」
『地球ラボ』では、最後に具体的にできることは何かということを子どもたちに伝えますが、それは大人にも同様に考えてほしいことと正木さんは言います。
「ひとつ目は使う電気のことを考えましょうということ。今電気がつくられるのは基本火力発電が主力です。石油や石炭を燃やすと二酸化炭素が出るので、火力発電は温暖化を進める電気のつくり方なんです。太陽光発電は電気をつくるときに二酸化炭素を出さないので、温暖化を進めないんですよ。だから今使っている電気が何でつくられているか、ちゃんと考えてみてと話しています」
そのほか、地産地消で地元で採れた旬のものを食べることで、配送車が出す二酸化炭素を抑えられること、ゴミの分別をすることで、燃やさずに資源になるということを伝えるそうです。
「一番最後に、こういう話を家庭や、友達同士で話題にしてくださいという話をします。ひと家族の声だと小さいけれど、ある程度大きくなったらそれは世論になる。世論は国を動かす力がありますと」
環境への関心が高いヨーロッパに比べて、日本はまだまだ足りないという正木さん。未来へ向けて社会を変えていくために、小さな声を大きくしていくことが大切なことかもしれませんね。
「先ほど環境問題には“緩和と適応”が大事だという話をしましたが、両方がないと、これから先ちゃんとした生活はできません。日傘で熱中症対策をすることなどは“適応”の部分で、日傘が充実しているのはすごく重要なことです」
そう言って正木さんが訪れたのが、「+moonbat(プラスムーンバット)」。雨傘や日傘、帽子やストールなど、アクセントファッションに特化したショップです。
案内してくれたのは、スタッフの鈴木裕美子さん。鈴木さんから正木さんへの「日傘は使ってらっしゃいますか?」という質問に、正木さんは、「最近使っています。今は毎週金曜日に『おはよう朝日です』の天気予報を大阪・関西万博会場から中継してるのですが、スタンバイしているときは日傘を差して待っています。最初に日傘を差したときは、使っている人はずるいなって思いました(笑)。こんなに違うんだってことを知らなかったですから」
「うちでも、男性で日傘を購入する方が増えてきていて、ビジネスマンの方なども、仕事中に『暑くて耐えられへん。日傘、日傘!』って店に入って来られる方もいらっしゃいます。最近夕方などに突然雨が降ることも多いので、両方に対応できる傘もございます」と鈴木さん。
鈴木さんのコメントに、正木さんは気象予報士らしいコメントをしてくれました。
「基本的に夏は晴れる日が多いんですけど、気候変動が進んでいくと、雨が降る条件がそろうときに、短時間に大量に降る傾向がこれから強まっていくと思います。なので、晴雨兼用の傘は、夏場のマストアイテムになるかもしれないですね」
男性は、どちらかというと折り畳み傘を持ち歩く方が多いという鈴木さん。折り畳み傘のコーナーには、晴雨兼用の傘も豊富にそろっています。
「これ全部男性用の日傘ですか? 数年前だとこんなに種類はなかったけど、すごく増えましたね。最近の特徴みたいなのはあるんですか?」
正木さんの問いかけに、鈴木さんは「こちらが最近人気の『MACKINTOSH PHILOSOPHY(マッキントッシュ フィロソフィ)』のバーブレラという商品です。棒の“バー”と傘の“アンブレラ”を掛け合わせたネーミングなんですが、柄の部分が棒のように細くて軽い。カバンに入れてもかさばらず、すごく軽いので、リピーターの方も多いですね。旅行用にも便利だと思います」
バーブレラを手にした正木さんは、「とても軽いですね。これだったら男性でも使いやすそうです。ほかに男性用で、おしゃれで遊び心のあるものはありますか? 男性が日傘を差していると、なんとなく片身が狭い感じがまだあるかもしれないですけど、日傘で夏をもっと楽しんじゃえ!みたいな」
正木さんのおちゃめなリクエストに、鈴木さんが取り出したのは、ピンク色の日傘。
「僕は、なぜかピンクが似合うって言われてるんですよ」と笑う正木さんに、「とてもお似合いです。こちらジャンプ式になっていて、カバンで片手が塞がっていても、もう片方の手で開けるようになってます」と鈴木さん。
サーフィンをされるとあって、サーフィン柄の傘も気になる様子の正木さん。
「やっぱり最近のこの気候で、大手メーカーもいろんな種類の日傘をそろえるようになってきたんでしょうね。これから、どんどん楽しんで日傘を差す時代になっていけばいいですね」
続いて訪れたのは、世界中のカメラ好きが憧れるブランド「Leica(ライカ)」。全国で12店舗、関西では3店舗しかない希少な直営店です。
正木さんは、実は2002年に『ひるね日和』、2009年には『ツバルの夕暮れ-沈み行く島国子供たちからのメッセージ』というフォトエッセイを2冊上梓していて、写真にはとても興味があると言います。
「『ひるね日和』は、自分が日常で興味を持ったもの…たとえば阪神タイガースや最新デジタルの話、ギターのことなどをしたためた文章がメインで、それにまつわる写真を1枚掲載するというスタイル。『ツバルの夕暮れ-沈み行く島国子供たちからのメッセージ』は、南太平洋に浮かぶツバルという小さな島国があるのですが、地球温暖化による海面上昇で沈みつつあるんです。そこに取材に行く機会があって、仕事の合間に、温暖化で海水面が上がる状態とか、島で暮らす人の写真を撮っていて、それにエッセイを添えて本にしました」
最近は、簡単さゆえスマートフォンで撮ることも多いという正木さんですが、改めてカメラを持って撮影することをやっていきたいと言います。
「温暖化の影響がこんなところに出てるんだというのを、しっかりカメラで撮りたいですね」
そんな正木さんに、「ライカ」のスタッフが勧めたのは、ライカM11-P ブラック・ペイントです。1954年に発売されてから、根強い人気を誇り続けるライカ M システムの最新デジタルカメラ。6,000万画素の高解像度を実現した最高級モデルで、「ライカ」の顔のようなカメラです。黒く塗られたシックなボディが正木さんの手にすっぽりと収まり、ファインダーを覗く姿も絵になります。
「シャッター音がとてもいいですね」と正木さん。
さらに正木さんは、コンパクトでオートフォーカス、使いやすく高画質な機種としても人気のライカQシリーズ最新作、ライカQ3 43を手にします。人の自然な視野に近い43mmの焦点距離と卓越したクオリティで静止画・動画が撮影できるモデルです。
「本来は、ピントや絞りなど自分で工夫しながら撮るのが好きですけど、取材撮影などはこちらが便利かもしれないですね」
「ライカ」といえばカメラですが、その源流をたどると、スイスの時計職人の技術が光学カメラの礎となったそう。そのDNAを受け継いだライカWatchが2023年から発売され、今年の6月から大丸心斎橋店でも販売され始めました。
「時計があるとは思わなかったですね。これは大人気じゃないですか?すごくシンプルですけどカッコいいですね」
続いて訪れたのは、ニューヨークを代表する美術館、MoMA(ニューヨーク近代美術館)のキュレーターが承認した色とりどりのアイテムが並ぶ「MoMA Design Store モマ デザインストア」。このショップでは、デザインのよさはもちろんのこと、環境のことを考えた商品が多くそろいます。
案内してくれたのは、セールススタッフの上田望可さん。まずは、正木さんの職業に関する商品を紹介してくれました。
「正木さんは気象予報士さんということで、こちらは、19世紀の船旅で天候予測機として航海士が使用したストームグラスのテンポドロップです。オブジェですけど、クスノキのエキスが気温とか気圧によって変化する。窓際などに置いて、インテリアとして楽しんでいただけます」
「へえ〜こんなものがあったんだ。知らなかったですね」と言う正木さんに、上田さんは、「環境のことを考えているということでは、MoMAではリサイクル素材を使っている商品が多くて、海洋プラスチックのゴミで作られているコースターもあります」とBuoyのコースターを紹介してくれました。
「リサイクルって、最近アップサイクルって言うじゃないですか。ただ再利用するだけでなく付加価値をもっとつけることでおしゃれさも出る。このコースターなどもとても美しくて、ゴミでできているとは思えないし、プレゼントにもいい。やはりMoMAさんらしいですし、ゆっくり店内を見て回りたいですね」と正木さん。
「リサイクル素材は、ヨーロッパではそれが普通になり始めていますよね」と語る正木さんに、「そうですよね。うちの商品もリサイクル素材が本当に多くなっています」と上田さん。
「こうやって見て回ると、本当にそうですよね、日本ではまだまだ普通ではないですけど」と正木さんは感心します。
そんなリサイクル素材のひとつとして、上田さんが紹介してくれたのが、アメリカのアウトドアブランド「Cotopaxi(コトパクシ)」の小ぶりなバッグです。
「大量生産によって生まれる余剰生地や残材で100%つくられています。同じ形であっても、同じ色みというのはひとつとしてないです。国内外、老若男女問わず人気ですね」と上田さん。
ヒップパックを手にした正木さんは、「環境にやさしいと全然謳っていないところがいいですね。それが普通と考えていて、ただかわいいデザインだから買うってところが」
正木さんのコメントを受けて、上田さんは、「そう言われてみると、MoMAの商品はそういうものが多いかもしれません。調べてみると、実はリサイクルだったとか。MoMAの商品はつくられた背景を大切にしているので、何かしら環境に配慮したものというのは当たり前になりつつあるかもしれませんね」
さらに、夏にぴったりのアイテムとして上田さんがおすすめしてくれたのがコミック扇子です。
「太い黒線で全体を縁取り、ポップなカラーでアメリカンコミック調のデザインとなっています」と言う上田さんに、「これはカバンからサラッと出したら粋ですよね。ハンディファンもいいですけど、これなら電気を使わなくていいし。日傘もそうですけど、ビジネスマンがこういう楽しいサマーアイテムを持つのはいいと思いますね」と正木さん。
さらに上田さんは、「正木さんは、防災士の資格も持たれているということで、防災グッズとしてラジオを探される若い人に人気があるのがこちらです」とスケルトンのポケットラジオを紹介してくれました。
「いやあ、おしゃれですね。防災グッズでも、いかにもそれらしいものよりも、こういうデザイン性のあるものは楽しいですよね。機能性さえあればよくて、自分が好きなものをそろえたらいいと思います」と正木さん。
さまざまな商品を手にしながら店内を見て回った正木さんは、「ここに置いてあるものは、どれも本当にデザインがいいですね。ポップだし。ここには室温計ってないですか? 熱中症対策には、エアコンの設定温度だけでなく、室温をしっかり把握しておくのがとても大事なんです、でも、温度を見るのが楽しくなるようなおしゃれな室温計ってなかなかなくて…」
「今、室温計は置いてないですねえ」と申し訳なさそうに答える上田さんに、正木さんは、「じゃあ開発するか(笑)」と。正木明プロデュースの室温計が「モマ デザインストア」に並ぶ日も近いかもしれませんね。
「モマ デザイン ストア」で防災の話が出たところで、今回特別に、防災士でもある正木さんを、大丸心斎橋店のバックヤードにある防災関連の施設へとご案内しました。正木さんが防災士の資格を取られたのは2011年のこと。
「東日本大震災の年ですね。気象災害も増えている中、防災に関する情報をちゃんと天気予報にも取り入れていかないといけないなと思い、知識もある程度はありましたけど、改めてちゃんと勉強をして資格を取ろうと思いました」
案内役は、大丸心斎橋店の設備担当の藤原伶恩。まずは地下1階にある受水槽室(貯水タンク)を見ていきます。
貯水タンクをひと目見て、「どこか近未来的なデザイン。百貨店の売場からちょっと入っただけで、こんな大きなタンクがあるとは想像できないですね」と、正木さんは少し驚いたような表情です。
「縦3.7m、横7m、奥行き5mで130㎥の水が入るタンクが3台あります。ひとり暮らしで16カ月分使える水がひとつのタンクに入っています。大丸心斎橋店では、毎日3タンク分を使っているので、相当な水量です」と説明する藤原に、「これだけ水があれば、災害時にはとても役立ちますね」と正木さん。
さらに、非常時に利用できるかどうかという観点から、「飲料水として使える水なんですか?」と質問する正木さんに、「はい。トイレなどで使う水はまた別の場所にあり、こちらのタンクの水は飲んでいただけます」と藤原。
「これがあると、お客さんも安心ですね。災害時に水はめちゃくちゃ大事です。大丸心斎橋店さんは建物が頑丈だろうから、大きな地震がきても簡単にはつぶれないと思いますから、あとは安全な環境の中でどうやって生き延びていくかというと、まずは水がないといけないですからね」と正木さん。
続いて、電気室、機械室、非常用発電機などがあり、完全に設備だけのフロアとなっている11階へと向かいます。
「少し前ですと、そういう建物の基幹となる設備は地下に設置されることが多かったのですが、浸水や高潮の被害に遭うとまず最初にやられちゃうじゃないですか。だから最近は考え方が変わってきていて……、朝日放送も少し上の階にそういう設備がありますね」と言う正木さんの言葉に、「そうです、そうです」と頷く藤原。まずは電気室に案内してくれます。
「この電気室から館内のすべての場所に電気が送られるようになっています。電気のすべてが水力発電されたものを使用していて、実質的にCO2排出ゼロの電気を使用しています。」
「それはすばらしい。地球温暖化の抑制への配慮がされていますね。今って電気がないと何にもできないですから」という正木さんに、藤原は、「館内の照明はすべてLED照明を使用していまして、バックヤードに関しては人感センサーをつけて、3分ぐらい誰も人が通らなければ、自動的に照明が消えるようになっています」
できるだけ節電を心がけている大丸心斎橋店の電気にふれて、正木さんは「環境のために一番大事なのは電気の使い方ですから」
全館で約600km(だいたい大阪〜東京間)の電線ケーブルを使用しているという大丸心斎橋店。もしも停電になると大変なことになりそうですが、11階には非常用発電機と、それを動かすオイルタンク室も設置されています。
この非常用発電機のエンジンは、緊急時は34時間電気を供給でき、重油を補填し続ければ半永久的に電気を館内に送ることができるそうです。
最後に館内の空調(冷房や暖房)を行っている設備が集まる空調室を訪れました。館内のエアコンには、この部屋から配管を使用し、水を送って循環させています。
「大丸心斎橋店では、クールビズの取り組みを実施し、従業員はノーネクタイ、ノージャケットでの勤務を推奨し、館内の空調緩和による節電に取り組んでいます」と藤原。
100%LED照明を利用し電気消費量を蛍光灯の約5分の1に、テラス、屋上を緑化し少しでもCO2削減に貢献、屋上での養蜂で都市の緑化を目指し、社用車70台もすべてEV(電気自動車)にと、大丸心斎橋店のSDGsへの取り組みを説明する藤原に、「大丸さんはちゃんとされていますね」と正木さん。
「温暖化や気候変動は地球全体の話なので、各国が足並みをそろえないと結果は出てこないんですよ。日本国内でも大手企業が足並みをそろえて、国全体でスピードアップさせないと、なかなか効果が出てこないもの。企業を大きくするとか国を豊かにするとか経済発展するというのは、もちろんいいんですけど、やり方を変えていかないと将来が成り立たなくなりますよ。次の世代がどんな地球で生きるのか? 今を生きる人たちも考えなければという想いが強いですね」
取材したこの日も最高気温36.8℃の猛暑日となった大阪市。地球温暖化による夏の酷暑は誰もがなんとかしなければと感じている今、正木さんが発信するさまざまな活動を通して、ひとりひとりが少しでも地球環境の保護を意識できるようになることを願います。
1961年兵庫県生まれ。2歳のときに神奈川県鎌倉市に転居。早稲田大学理工学部機械工学科卒業。1990年から『おはよう朝日です』の天気予報を担当し現在も継続中。1994年気象予報士試験に合格し、2011年に防災士取得。ラジオ関西の『正木明の地球にいいこと』にレギュラー出演するほか、気候危機や災害等に関する情報を発信するサイト『正木明のSurvival Labo』、子どもたちに向けて気候危機をテーマにした出張授業プロジェクト『地球ラボ』など、気候危機や地球環境に関するさまざまな活動をしている。
※今回掲載の内容は2025年8月19日現在の情報を掲載しています。
写真/西島渚 取材・文・編集/蔵均 WEBデザイン/唯木友裕(Thaichi) 編集・プロデュース/河邊里奈(EDIT LIFE)、松尾仁(EDIT LIFE)
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正木明|気象予報士・防災士
大阪の第一線で活躍する方々と一緒に、生活を豊かにする視点、もの選びのコツに迫ります。館内の注目アイテム、心斎橋のお気に入りスポットをご紹介。心地よい暮らし、大阪のシビックプライドを求めて。
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小丸和弘|インテリアデザイナー・都市養蜂家
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岸上純子|建築家