2024.01.25

料理人だった20代の僕が、アンリ・シャルパンティエのフィナンシェに出会ってしまった日。

アンリ・シャルパンティエ

目次

料理人だった20代の僕が、アンリ・シャルパンティエのフィナンシェに出会ってしまった日。

お菓子っておもしろい!

「21歳でこのフィナンシェに出会って、人生が決まったんです」

高校時代に中華料理店でアルバイトをはじめ、漠然と「このまま料理の道に進むのかな」と思っていたという、アンリ・シャルパンティエの駒居崇宏さん(テクニカルアドバイザリー室スペシャルアドバイザー)。

アンリ・シャルパンティエの駒居崇宏さん(テクニカルアドバイザリー室スペシャルアドバイザー)
アンリ・シャルパンティエの駒居崇宏さん(テクニカルアドバイザリー室スペシャルアドバイザー)

「当時つきあっていた彼女に、友だちの彼氏がフリーマーケットにお菓子を出すから一緒に手伝いに行こうと誘われたのがきっかけでした。その彼氏というのが、アンリ・シャルパンティエを辞めた人で、フィナンシェづくりを手伝うことになるのですが、僕はそれまで、フィナンシェどころかお菓子というものを全然知らなかったんですよね」

料理づくりとお菓子づくり。同じ、キッチンに立つしごとですが、似ているようでまったく違います。

「料理の場合は、例えば回鍋肉(ホイコーロー)をつくろうとすると、豚肉とキャベツと味噌を合わせ炒めて、と、とにかく最初から素材のカタチが見えてるやないですか。でも、お菓子はそれが見えなかったんですよ」

バターと砂糖と卵とアーモンドプードル(アーモンド粉)、それに小麦粉。原材料を混ぜ合わせたものは液状で、トロッと型に注ぐだけ。つまり、この時点ではカタチが存在しない。駒居さんいわく、「見えない」。

「でも、焼いたらこうやってうまいこと膨らんで、割れてくる。表面がカリッとしていて中はジュワーっとしてるって感じに、ちゃんとお菓子になって出てくる。しかも、焼きたてを食べたらめちゃくちゃおいしい。あの時の僕には、それがすごく新鮮でおもしろい体験だったんです」

表面がカリッとしていて中はジュワーっとしてしっとり。アンリ・シャルパンティエのフィナンシェの虜に。
表面がカリッとしていて中はジュワーっとしてしっとり。アンリ・シャルパンティエのフィナンシェの虜に。

21歳の駒居青年は「よし、僕もこのお菓子の会社に入ろう」と心に決めて、すぐに会社に電話。面接を経て、めでたく入社に至りました。

今から28年前の1995年。阪神淡路大震災のあった、あの春のことでした。

アーモンドとバターに注ぐ情熱

駒居崇宏さんは、アンリ・シャルパンティエが長年培ってきた価値をさらに高め、世界に誇れるブランドに育てるために、日々商品開発に邁進しています。

駒居崇宏さんは、洋菓子世界大会では団長として日本チームを牽引して世界第1位に導いた、世界が認めるトップパティシエという顔も持つ。
駒居崇宏さんは、洋菓子世界大会では団長として日本チームを牽引して世界第1位に導いた、世界が認めるトップパティシエという顔も持つ。

「入社当時も今も、フィナンシェの原材料はバターと砂糖と卵とアーモンドプードル、小麦粉。レシピは変わりませんが、原材料の「質」はどんどん変わってきました」

定番の商品を、守りながら変えていく。その挑戦の連続です。とくに駒居さんが情熱を注いできたのは、アーモンドとバター。

「アーモンドは雨が少なく甘みと香りが凝縮されたカルフォルニア産。現地まで足を運んで、最適なものを選んでます。より良い状態で使うために、今は日本まで低温で運んでいるんです」

船便で輸入すると、どうしても赤道あたりでダメージを受ける。そこで、アーモンドの酸化と劣化を防ぐために、冷蔵庫で「8度」をキープしたまま大切に運んでいるのです。さらに、粒で運んだアーモンドを、ケーキづくりの直前に自社で挽いてプードル(粉状)にすることで、アーモンドの香りを最大限に、食べる私たちの鼻先まで届けてくれます。

アンリ・シャルパンティエ

もうひとつは、バター。

「2006~2007年にフランスへ研修に行って、その時にフランス人と一緒に今のバターをつくり上げました。クリームの状態に発酵菌を入れ、35時間発酵させる<前発酵>バターです。手間がかかるんですが、バターの香りが持続するんです」

今は「バターをもっと進化させるために」発酵菌の研究を重ねているという駒居さん。

「もちろん、フィナンシェにするのが目的なんですが、できたてのバターだけ食べてもめっちゃおいしいものができています。フレッシュ感と旨みに期待してください」

アンリ・シャルパンティエ

駒居さんがフィナンシェづくりにそこまで情熱を注ぐ理由は、どこにあるのでしょう。

「最初のあの感動が、今でも続いているということでしょうね」

そして、先代の社長(創業者)が求めた「看板商品のフィナンシェを大事にする」という意思を受け継いでいるという自負が、駒居さんの芯にしっかりと根付いているのです。

アンリ・シャルパンティエ

ギネス記録を持つ神戸スイーツ

アンリ・シャルパンティエのフィナンシェは、年間販売個数において世界一売れているフィナンシェとして、8年連続ギネス世界記録を持つお菓子としても知られています。その数、年間約3,000万個。

アンリ・シャルパンティエ

「残念ながら2年前に世界一の座を譲ることになってしまったんですけどね」

洋菓子世界大会では団長として日本チームを牽引するなど、パティシエとして海外へ赴くことも多い駒居さん。

「ヨーロッパにお土産として持っていくと、おいしいといってもらえますよ。日本好みの味なんですけどね。本場フランスのフィナンシェは、こんなにふっくらしっとりしてなくて、もっとギュッと生地が詰まってる感じです」

アンリ・シャルパンティエ アンリ・シャルパンティエ

世界を大きく俯瞰するなら、これからは、日本以外のアジアの国の洋菓子の動向に注目したいと駒居さんはいいます。SNSを通じて、世界中で “今日” 何が起こっているかが見える時代。

「情報をいち早くキャッチして、それを頭におきながら自分たちのアイデアを注ぎ込んで、自分たちの独自のやり方を出せるようにしていかないと勝ち残っていけないかなと思っています」

アンリ・シャルパンティエのフィナンシェがこの世に登場し48年。あと2年で発売50年を迎えようとしています。

【神戸スイーツ ノオト/アンリ・シャルパンティエ】 店名の「アンリ・シャルパンティエ」は、19世紀に実在したフランス人の料理人の名前から。彼がイギリス皇太子のために考案した青い炎のデザート「クレープ・シュゼット」に創業者・蟻田尚邦が出会い、強く心を奪われたことに由来します。ルーツは、蟻田尚邦が阪神電鉄の芦屋駅前に開いた「スイーツも食べられる喫茶店」。1975年、神戸そごうからの出店要請により、生菓子以外にギフト用焼き菓子を扱うようになりました。

アンリ・シャルパンティエ

〈アンリ・シャルパンティエ〉

フィナンシェ(8個入) 税込1,188円
フィナンシェ(16個入) 税込2,376円

大丸神戸店 地1階 洋菓子売場

〈アンリ・シャルパンティエ〉の一部の商品は
大丸松坂屋オンラインストアでもお買い求めいただけます。

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