洋菓子の感性を和菓子に。ユニークな発想で〈大阪ええYOKAN〉に参加。

人モノ語り

〈カグノミ堂〉
~シェフ
鳥井篤史とりい あつしさん~

シェフエ 鳥井篤史さん

大阪市西区の新町はビジネス街でありながら、歩けば個性的なショップに出合う人気のエリア。ブルーの外観がお洒落な〈カグノミ堂〉は、フィンガースイーツの専門店。
フィンガースイーツとはその名の通り、指でつまんで食べられる一口サイズのスイーツのこと。小さくても細かいところまで凝ったつくりの本格派です。イタリアンやフレンチ、スペイン料理店でシェフとして勤務したのち、フィンガースイーツ専門店を立ち上げた気鋭のシェフ、鳥井篤史さんをご紹介します。

吸い込まれそうな、きれいな水色の壁が目印

▲吸い込まれそうな、きれいな水色の壁が目印

節で変わるスイーツは常時16種類ほど

▲季節で変わるスイーツは常時16種類ほど

ショーケースには、ころんと丸いかわいい形や、色とりどりの趣向を凝らしたスイーツがバラエティー豊かに並びます。気に入ったスイーツのテイクアウトはもちろん、店内にはドリンクやお酒が一緒に楽しめるカフェスペースもあり、仕事帰りにちょっと立ち寄るのにもいい感じ。
「イタリアのバールが好きなんです。日本の喫茶店みたいなものかな。小さな子からおじいちゃんまで集まってくるんですよ。いろんな使い方ができる場所にしたいなと思って」

中に入ると、洗練されたくつろぎの空間が

▲中に入ると、洗練されたくつろぎの空間が

コーヒー、紅茶はもちろん、スパークリングワインなどのお酒も

▲コーヒー、紅茶はもちろん、スパークリングワインなどのお酒も

ある日、意外なオーダーが。ここから新しい挑戦が始まります。

その心意気とスイーツづくりの腕を買われ、特別なようかんづくりを依頼されます。声をかけたのは、新しい大阪みやげを作り出すプロジェクト〈大阪ええYOKAN〉。来る大阪・関西万博にむけて、新たな大阪みやげを生み出そうと集まったお菓子メーカーが、それぞれのアイデアで一口サイズのようかんを製作しています。依頼の内容は"チョコレートのようかん"。バレンタインに向けての商品です。「プロジェクトのリーダーがやってきて、小さいの作ってるから、いけるやろ?みたいな、軽いノリで頼まれました。でも和菓子となるとかなり大変で...。同じなのはサイズだけ(笑)」

パクッといくつも食べられそう。一口サイズの洋菓子いろいろ

▲各メーカーが技を競った一口サイズのようかんは、発売とともに話題に。

日持ちがするお菓子とは?洋菓子との違いに格闘。

まず、生のケーキと違って日持ちをさせないといけない点が、鳥井さんを悩ませました。「日持ちのするお菓子って、焼き菓子以外にあるんだろうか?」和菓子は学生時代に授業であんこを作ったくらいで、知識はほとんどなし。一人で黙々と調べながら、試行錯誤を繰り返す日々が続きます。これで絶対大丈夫と確信できるまで、試作品を作り続けました。

思い入れのあるケーキを和菓子に。

ようかんのテイストを決めるのにまず思い浮かんだのは、自身も好きで思い入れのある洋菓子「オペラ」。昔からよく知られている、コーヒーの風味を加えたチョコレートケーキです。このオペラにちなんだ「オペラようかん」を作ろうと考えました。

アイデアの元となったケーキ「オペラ」

▲アイデアの元となったケーキ「オペラ」

ダークチョコレートと白あんを、コーヒーの要素を抽出したカカオ水で炊き、チョコレートと少量のラム酒を加えます。仕上げにはケーキにも登場する金箔をのせ、ゴージャスに。封を開けると、優しいチョコレートの香りが漂います。口当たりはしっとり。ようかんの風味も味わえる、新しいチョコレート菓子の誕生です。さまざまなテイストの洋菓子を作ってきた鳥井さんにしかできない経験が生かされています。

新感覚の「オペラかん」は、しっとり、優しい味わい

▲新感覚の「オペラかん」は、しっとり、優しい味わい

洋菓子の視点でつくる和菓子は、新鮮そのもの。

同じ〈大阪ええYOKAN〉を製作している和菓子職人からみると、鳥井さんの製作方法は斬新だと言います。和菓子と洋菓子は、似ているようで全く違うもの。目をつけるポイントがおもしろいと。例えばようかんを固める際は流し缶を使い、最後に切り分けるのが通常ですが、鳥井さんはシリコンの型を使い、切る作業を省いています。和菓子の経験がないからこそ制約を受けず、自由に作る発想のおもしろさがあります。

〈カグノミ堂〉のほか、大阪にゆかりのある5社からバレンタインバージョンを出品。会場では、3個入り×3種類のセットのみ販売(写真はオペラかんが入った「オトナ セット」)

▲〈カグノミ堂〉のほか、大阪にゆかりのある5社からバレンタインバージョンを出品。
会場では、3個入り×3種類のセットのみ販売(写真はオペラかんが入った「オトナ セット」)

また〈大阪ええYOKAN〉の新作依頼があったらどうしますかと聞くと、「今度はまた違うアプローチをしてみたい。海藻由来のものを使ったり、中に液体を入れてみたり...」と、新しいアイデアがすでに浮かんでいるようです。

〈大阪ええYOKAN〉

▲手前右が鳥井さん制作の「オペラかん」

〈大阪ええYOKAN〉に今回初登場する〈カグノミ堂〉の「オペラかん」。和菓子と洋菓子の垣根を越えて誕生した自信作を、この機会にぜひ味わってみてください。

〈大阪ええYOKAN〉

  • ショコラプロムナード