大阪府堺市北花田にある「人と芸術と音楽と料理の融合」をテーマにアート作品を楽しみながらこだわりのフランス料理が味わえるレストラン〈TARU〉で、2021年より副料理長を務める。地元の食材を取り入れたいと食材にこだわり、目でも楽しいフレンチを提供する。

神戸にある有名ホテルのレストランでフレンチ＆グリル料理のシェフとして腕を磨いた白永さん。その始まりは実家の近くにあった小さなイタリアンレストランへの憧れから。高校を卒業後、料理学校へ入学。2年間みっちりと学ぶ間、世界的グルメガイドで一つ星獲得の名店でアルバイトもこなしていました。卒業後、鉄板焼きのお店を運営。その経験が評価され、知り合いの紹介で神戸の有名ホテルへ転職。白永さんは、「食べる前から見た目の良さを楽しんでもらえる」フランス料理に魅了されていきました。コロナ禍の中、一度リセットし地元へ戻ったところで紹介されたのが、ここ北花田で唯一ともいえるフレンチレストラン〈TARU〉でした。

御堂筋線北花田駅からほど近い〈堺フレンチ gourmet ＆ gallery TARU〉は、2018年にオープン。
大きな窓から景色が見渡せる広々とした空間で、気軽に、ちょっと贅沢な気分でフランス料理が味わえると定評のあるレストラン。ディナータイムに提供する「シェフのおまかせコース」のデザートを考える中で生まれたのが伝統菓子の「カヌレドール」。もっちりとした食感のカヌレドールをカットし、ソースをかけて提供していました。当時、お持ち帰り用としてお店で販売していたのはテリーヌ型のケーキのみ。お客様から「焼き菓子はないの？」と聞かれることもしばしばありました。そこで、カヌレドールの販売をはじめました。しかし、持ち帰って食べるには大き過ぎるのでは、と改良することに。

サイズを見直し、約1/4ほど小さくなったかわいいカヌレに決定。そして、試作。生地の量や、火入れの時間など、何度も何度も調整を繰り返します。冷凍し解凍後の食感も計算しながら、理想の味を求め試行錯誤。同時に、パッケージのデザインも考えます。1回焼くのに約1時間。それを20回、30回と作り続け、ようやくたどり着いた理想のカヌレは、北新地にあるバーの手みやげに選ばれました。上品なパッケージとともに評判も上々。さらに、2023年秋にオープンした京都伏見稲荷の新施設「OICY（オイシー）ビレッジ」内での販売も決まり、じわじわと人気を集めています。

白永さんが地元に帰った頃、幼馴染が農家をしているという話をお母さんから聞きました。実家の茶葉の販売をしながら、農家をしたり、農家仲間の野菜を販売したりしているとのこと。それが、幼馴染の林さん。大阪近郊で栽培されている野菜をはじめ、変わり種など珍しい野菜の情報にも非常に詳しく、今では週に3回、その日の朝採り野菜を〈TARU〉に卸してもらうようになったそう。新鮮でみずみずしい野菜は、調理時間が短縮できるうえ、おいしさも抜群。もちろん、お客さんからも好評です。季節感のあるカヌレを考えていた白永さん。林さんの作る野菜を取り入れてみようと、思い立ちました。

春から初夏のカヌレは抹茶。幼馴染を通じて京都の茶葉屋さんの宇治抹茶を使用しました。苦味が強くなく、まろやかな味わいの宇治抹茶はTARUのカヌレに、お茶の味わい、香り、清涼感を与えてくれました。これからも旬の食材を使った「料理店ならではのカヌレ作り」を目指します。今、白永さんは、林さんの野菜を使いながら、牛乳で割って温めるだけで完成する"スープの素"など、「おうちで手軽に食べられるフレンチメニュー」の開発も手がけています。素材のおいしさを味わえるメニューの完成も楽しみです。

京都の茶葉屋さんの宇治抹茶を使用。この機会にご賞味ください。