大阪市西区京町堀の、緑あふれる靭公園のすぐ近く。〈parlor_hana bySN〉は、大通りに面したマンションの1階にあるパーラー。天井が高く、明るい光が差し込む心地よいお店です。 西園誠一郎さんは、同じ京町堀にある人気パティスリー〈Seiichiro,NISHIZONO〉のオーナーシェフでもあり、〈parlor_hana bySN〉のプロデュースも手掛ける、才気あふれるシェフ。製菓の専門学校を卒業後、研修のためフランスへ。そこでお菓子づくりの楽しさに目覚め、洋菓子一筋で行こうと決心します。帰国後は関西の有名ホテルやパティスリーで勤務。有名店舗の商品開発を手がけるなどし、2014年に自身の店舗〈Seiichiro,NISHIZONO〉をオープン。昨年6月に〈parlor_hana bySN〉がスタートしました。 パーラーならではのフルーツ満載のメニューが楽しめるのはもちろん、独自のサステナブルな視点でスイーツを作り上げる西園シェフの魅力に迫ります。

西園さんがparlor_hanaのプロデュースを依頼された運営会社は和歌山にあり、フルーツ農家とも深いつながりがありました。お菓子づくりにかかせないフルーツや牛乳は、ほとんどを和歌山の生産者から仕入れています。大阪から約1時間と近いため、最盛期を迎えるフルーツが常に新鮮な状態で手に入るのが、一番のメリット。また、なかなか市場に出回らないハイクオリティなフルーツも特別に分けてもらってお菓子に仕上げ、みずみずしい状態で販売しています。

▲生産者から直送された、クオリティの高いフルーツをふんだんに使用
(シャインマスカット、いちご、あら川の桃、メロン、有田みかん、紀の川のキウイフルーツなど)

西園さんは生産者とやりとりをするうちに、農家ならではの苦労や悩みを知ることになります。せっかく丹精込めてフルーツを作っても、形が悪いとB品と言われ、安い値段で買いたたかれます。残ったものは廃棄するしかなく、収入が安定しないことから、後継者不足の問題も。農家の先行きが危ぶまれる状況を知り、「何とかならないだろうか？」と相談されます。 廃棄されそうになっている、形が悪いだけで味は変わらないフルーツを適正な価格で買い取り、お菓子に使おうと考えます。

例えばレモンの白いわたの部分は、苦くて使えないと思いがちです。しかし西園さんは、わたを一度ボイルしてやわらかくし、粉砕したものに圧力をかけ、ピューレ状にしてレモンスカッシュに取り入れています。そうすることにより、とろりとした濃度のある飲み物に。キウイフルーツの皮も捨てずに一緒に焼き込んで、ボリュームのあるベイクドタルトに変身させています。お菓子をつくる通常の工程よりも手間と工夫が必要になりますが、時間がかかった分、味に還元されおいしくなると考えています。B品と言われ、廃棄されてきたフルーツも、技術とアイデアを加えておいしいお菓子にすることによって、食料の無駄が減り、農家の利益が増え、買いやすい価格になっていくのです。こういった取り組みが増えて、サステナブルな社会となっていくことも西園さんのビジョンのひとつです。

▲かたちの悪いフルーツの皮もまるごと入って

常に新鮮なフルーツを扱う西園さんならではの大変さがあります。いちごの場合は、「出始めの頃」「最盛期」「終わり頃」で甘味から酸味へと変わるため、スイーツにする際に味の調整が必要になります。クリームや糖度を変えて調整し、納得のいく味に仕上げますが、それには熟練した技が必要。味のコントロールが難しく、時間のかかる作業になります。また、いちごの出荷が予想より早く終わってしまうことも。旬のフルーツだからこその先の読めない展開が季節を通して続きます。前に同じスイーツを召し上がったことのあるお客様は、前回との味の違いを感じられるかもしれません。しかし、いつも一番新鮮なものを使い、一番おいしい状態でご提供していますので、素材どうしの組み合わせを楽しんでほしいと考えています。

〈parlor_hana bySN〉では、米粉を使ったスイーツもご用意しています。フルーツロールは、生産者から直接届いた厳選されたフルーツと北海道産の純生クリームを、米粉を使った生地にたっぷり挟み込んだ人気の品。新感覚の食感が楽しいフルーツクッキーには、米粉とカルシウムやカリウムを多く含むきび糖を使用。B品として廃棄されそうになったフルーツの皮や果肉などを加工してフィリングに使っています。やわらかくふわっとした生地の中に、しっとりとしたフルーツソースがぎゅっと入って、1個でおなかも大満足のボリューム。おいしさとサステナビリティを両立させています。

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  ▲米粉を使ったフルーツロール。旬のフルーツがぎっしり

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  ▲台湾のパイナップルケーキをイメージして作られたソフトなフルーツクッキー

西園さんと和歌山の生産者とのつながりは、農家だけではなく海産物にもひろがっています。新しい商品を次々と開発してきた西園さん。考案中なのは、父の日に向けたプレゼント商品です。現地で漁師さんと話をしているうちに、特有の臭みが少ない「しらす」があると知り、塩味のサブレに入れた「しらすクッキー」はどうかとひらめきました。お酒のあてにもぴったりで、人気が出ること間違いなし。フルーツだけではなく自然の恵みをうまく取り入れ、創作意欲が止まりません。
4月24日(水)大丸梅田店 地1階 西 洋菓子でのオープン時には、大丸梅田店でしか味わえないオープン記念商品が登場！ぜひご期待ください。

※ほかにもクッキー缶(税込3,000円から)の販売や、オンライン販売での産地直送のフルーツギフト(税込5,000円から)も予定しています。

※季節ごとに使用するフルーツによって価格が変わる場合がございます。