山村 博男油彩展
■7月2日(水)→8日(火)〈最終日は16時閉場〉
野外劇場や街中で集う人々の群れ。ビーチに立ち並ぶ数々のパラソルや、斜面に密集する家並み、などなど。手間暇を考えると尻込みしてしまうような、いかにも手のかかりそうな情景に出会うと、絵描き心がより掻き立てられる—。
山村博男氏の仕事から、そんな推測をしてみるのです。
一般に言う、技癢、という言葉が相応しいものかどうか、入り組んだワンシーンを目にして気持ちが動かされた時、それが複雑であればあるほど、氏は自身の腕前を試したい思いに駆られるのではないでしょうか。
例えば同郷の先達である荻須高徳の風景にはほぼ人間が登場せず、遠景を捉えた作例も遠景を捉えた作例も少ないことを思うと、群像描写からは氏の大きな特質が窺い知れるといえましょう。
そのような、実在する風景の枠組みはきちんと守りながら、多様な構成要素を盛り込みつつ山は別の柱として、静物や室内風景もまた氏の画業に欠かせない側面です。
自らの手で自在に構成可能なモチーフが闊達に画中に遊び、色彩は迸るがごとく、時に己が領域を軽やかに逸脱し、しかし全体を眺め渡してみると、それぞれが緊密な美しい連携を保っている、というところに氏の真骨頂があります。
1993年の昭和会賞受賞から30年余、長年所属していた国画会を離れ、一画人・山村博男として刻みはじめた新たなる歩み。
確たる骨格の中で、稀有な色彩配置の感覚がますます冴えをみせる美の世界を、どうぞお楽しみくださいませ。

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